【金賞】Space Girls!/不破貞仁(ふわ さだひと)
■あらすじ
謎の生命体BIOSによって人類は滅亡した。偶然生き残った双見ツヅミはある日、BIOSと戦うために特殊能力を獲得した少女、スペースガールズと出会い旅をすることに。
しかしその途中、ラトテップと呼ばれるBIOSに殺されてしまうが、同じく瀕死だった少女の力によって記憶を保持したまま人生をやり直すことに。転生の影響か、未来視の能力も手に入れ、今度こそは人類滅亡の未来を変えてみせると決意する10歳の彼の前に現れたのは、まさにあのスペースガールズに瓜二つの少女だった。
蒼穹ステラと名乗る少女と互いに世界を救うために頑張ろうと約束を交わす。6年後、スペースガールズを育成する学園で再開することになるが──?
■受賞コメント
この度は栄えある賞をいただき誠にありがとうございます。選考委員と編集部の皆様に感謝申し上げます。中学生の頃、初めて購入したライトノベルがファンタジア文庫の作品であり、それからファンタジア文庫のことを親だと思って生きてきました。
怒られるかもしれませんがライトノベルは可愛いヒロインと熱いバトルを書いて印税が貰える最高の職業だと思っています。秋葉原にタワマンを買えるヒット作を生み出せるように今後頑張っていきます!
■選考評
● 細音啓
地球滅亡という近未来SF的な要素がありつつも、タイムリープや異能力など王道の要素がしっかり詰められているおかげで読みやすかったです。冒頭、人類が滅亡した世界で主人公とヒロインが旅をするくだりはとても良かった。
ポストアポカリプスな世界を旅するのは、廃墟を散策するような奇妙な安らぎと寂しさがなんとも魅力だと思います。
主人公の魅力についてはもう少し、読者が「これぞ主人公だ」と言えるように改稿されるとグッと良くなるのではないかと感じました。
● 橘公司
細かい部分で「惜しい」と感じる部分はあれど、全体としては読後感も良く、とても面白い作品だった。タイムリープで絶望的な未来をやり直す話は、今やベタなテーマではあるがやはり好き。
作中で撒いた種をきちんと回収して、印象的な展開に繋げている部分は好感を抱いた。
コメディ要素もほど良いバランスで、トータルは素晴らしいのだが、タイムリープものは大仕掛けを発動させるまでの話をどう面白く読ませるかが非常に重要だと思っているので、そこにもう一工夫あったらなお良かった。
● 羊太郎
まずはSFという難しいジャンルに挑んだ、作者のチャレンジング精神に敬意を表します。
冒頭での圧倒的な絶望から、主人公が時間回帰して歴史の流れに介入し、未来を変えるために奮戦するという流れはまさに王道であり、とても好印象です。
全体としても起承転結が上手くまとまっています。応募時原稿にはやや辛口な評価になった部分もありましたが、この作品の世界観や設定は非常に面白く、久々に良質なSFの予感がします! 必ず素晴らしい作品に仕上がるでしょう。
【審査員特別賞】ブラックジョークに支配された世界/切身 智(きりみ とも)
■あらすじ
創遺物と呼ばれる、ブラックジョークのような現象がこの世界には存在する。それはクリエイターの死後、創作への執念が歪んだ形で誕生するため、ときとして人類の脅威になりうるのだった。
たとえば「必ず当たる防災予報を作りたい」という願いが「自ら災害を引き起こす」〈絶対天気〉という創遺物に歪んだ結果、今や関東地方は誰も踏み入れない気象災害の地となってしまったように……。
少女・シャムは脱走兵であることを隠し、友人の少年・ポチの通う高校に身を潜めていたが、ある日、その正体がバレてしまう。
しかも見逃す条件として“とある創遺物”を軍より先に討伐するように求められ──!?
尖った世界観が鮮烈な異能バトルファンタジー!
■受賞コメント
このたびは審査員特別賞という輝かしい賞を頂戴し、誠にありがとうございます。選考に携わった関係者の皆様に、厚くお礼申し上げます。
本作ですが、入賞時にかなりの粗削りという評価をいただきました。それでも世に出せる運びとなったのは、可能性を見出してくださった先生や編集部の方々がいらっしゃったおかげです。
せっかくのご期待を裏切らないよう、そして誰より読者の方々に「おもしろかった」と喜んでいただけるよう、精一杯頑張ってまいります。
■選考評
● 細音啓
強すぎる願い、祈りが、かえって他人を傷つける呪いになる。お話のテーマは多くの人が共感できるところがあると思いますし、それがモンスター化するという「ブラックジョーク」が闊歩する世界。とてもユニークかつ拡張性のある世界観だと思いました。
一方で文章の読みにくさというか情報量の多さが少し気になる部分もあり、オリジナル世界で描写不足を気にされているのは伝わりつつ、一つ一つの情景説明などの情報量を落とすことでキャラを立たせることもぜひ検討してもらえたらと思いました。
● 橘公司
独自性のある設定と世界観が本作の最大の魅力。とにかく『創遺物』の設定が秀逸で、得体の知れなさがありつつも、きちんと練られていて物語を彩るスパイスとして効果的に機能していた。
キャラクターも良い。主人公であるシャムはもちろん、敵キャラたちも狂人揃いで面白い。難点としては『創遺物』の設定といい、物語の展開といい、全体的にややテクニカル過ぎるところか。
面白いは面白いのだが、総じて読解ハードルが高めな印象。総評としては、設定、物語、キャラクター、全てに独自の魅力があり高評価だが、その一方ちょっと読み解くのが難しいところがある、といったところ。個人的にはかなり好き。
● 羊太郎
非常に特殊な世界観を、恐ろしく高いレベルで物語に落とし込んだ現代ファンタジー。創作物が、作った人の思いがねじ曲げられる形で発現し、災害を振りまいているという尖りに尖りまくった世界の設定が素晴らしいです。
しかも、全体を通して非常に計算された緻密な伏線とストーリー、クライマックスの盛り上がりからオチまで完璧。
技術的に非常に高いレベルの作品であり、作品の構成の完成度という観点からは僕の目線からは隙がない作品でした。ゆえに、全体的にもっと描写を丁寧に、分かりやすくすることが、この作品の最大の課題でしょう。
- 新人賞/コンテスト
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