いつもファンタジア文庫の関連書籍をご愛読いただき、誠にありがとうございます。
ファンタジア大賞の公式サイトでも発表させていただきましたが、改めてメクリメクルでも受賞作の紹介をさせていただきます。
応募総数979本のご応募をいただいた第38回ファンタジア大賞が終幕いたしました!
最優秀作として《大賞》を受賞したのは、 圧巻の構成力とキャラクター表現力に加え、幕末の新撰組×魔術×エルフという斬新なコンセプトで独特の世界観と手に汗握る物語を作り上げた、『幕末マギカ 魔剣の侍とメスガキ魔術師エルフは異世界を修正しない』です。
ほかにも、ギャンブルとコメディを上手く融合させ、ハイテンションな高校生たちの学生生活を見事に描いた《金賞》の『女子高生にギャンブルはまだ早い!』にくわえて、SFとタイムリープを上手く掛け合わせ、絶望的な未来を救うために戦い続ける主人公を描いた、『SpaceGirls!』も見逃せません!
【大賞】幕末マギカ 魔剣の侍とメスガキ魔術師エルフは異世界を修正しない/鞘童子(さやどうじ)
■あらすじ
時は幕末、開国より西欧の魔術が伝来した日本。京都は尊王や倒幕など様々な思想を持つ侍たちが血で血を洗う混乱の渦の中にあった。
そんな時代に魔術を使う異端の浪人・時代⼰道はいた。彼はある日、重傷を負ったエルフの少女・メスティーと出会う。
異人にして魔術師であるメスティーは、日本の魔術師たちに襲われていたのだ。
過去の記憶からメスティーを助ける⼰道だが、そこに現れた新撰組の天才剣士・沖田総司と剣を交えることになり──その天才的な剣技を前に致命傷を負う。
そんな彼をメスティーは決死の魔術で治療するが、その結果として彼女は魔術の力を喪ってしまう。
彼女に恩義を感じた⼰道はメスティーの旅に同行する決断を下し──
■受賞コメント
担当編集者様との最初の打ち合わせは「ペンネームは何にします?」でした。
このたび大賞を頂戴しました鞘童子と申します。
お察しの通りペンネームが変わっています。
ファンタジア文庫編集部様が良識ある方々だという証ですね。
そんな編集部の皆様、そして選考委員の先生方のおかげで、拙作は世に出る機会に恵まれました。
ペンネームは別として、作品そのものは全霊を注いで執筆しましたので、この結果は感に堪えません。
選考に携わられた方々の期待に応えるべく、今後は生まれ変わった気持ちで頑張る所存です。
ありがとうござぁい❤ます。
■選考評
● 細音啓
冒頭からすごく素敵でした。攘夷という江戸時代特有の排外思想……たしかに日本の外という意味で、外国人もエルフも一緒くたに攘夷の対象というのは説得力があり、
差別されているエルフが主人公に助けられるまでの流れに歴史的説得力が用意されているなど、ボーイミーツガールのお膳立てが素晴らしい。その上でのメスガキ魔術師エルフも可愛らしさ抜群でした。
● 橘公司
非常に面白い。キャラクター、設定、文章力、あらゆる要素の平均点が高い。幕末+魔術という組み合わせを活かして剣客ものとしてよくできているし、幕末もののお約束もきちんと仕込まれている。
期待を煽る導入、メインテーマの提示、主人公のバックボーンが流れるように展開されており、読者を飽きさせないお手本のように綺麗な構成が印象的。丁寧な構成や展開、そして文章力は風格さえ感じた。
● 羊太郎
ラノベを構成する様々な要素において非の打ち所がない、素晴らしい傑作です!
歴史の流れが変わり、幕末にファンタジーが混ざった世界で、武士道を見失った主人公が己の武士道を取り戻していくストーリー。THE王道。そうだよ、こういうのを待ってたんですよ……!
最初は、えらく尖った世界観だなと思っていたのですが、それを上手くオリジナリティとして昇華している上、ただの奇抜な舞台装置設定だけに留まらせず、物語の根幹に絡めているところに思わず脱帽しました。
●ファンタジア文庫編集長
歴史ファンタジーとしての完成度が非常に高く、全体評価でも頭一つ抜けている。作者のこだわりが遺憾なく発揮された世界観や設定は見せ方が巧みで、ワクワクできる作品に仕上がっていた。
キャラクターについてもとても魅力的に描けていたが、一方で新選組という歴史上のキャラクターらはイメージの再現度は高いものの既存のキャラクター性から抜け出せていない印象。
とはいえ、それらのキャラの作り込みの面さえ改善すれば、大賞作品としてより相応しいタイトルになるポテンシャルを感じた。
【金賞】女子高生にギャンブルはまだ早い!/とおさー
■あらすじ
ギャンブラー一家に生まれたギャンブル嫌いの高校生、狭山ヒロトは競馬場で予想を外し発狂する少女を見かける。少女はまさかのクラスの人気者、駒須七果だった!
見てみぬふりをしようとしたヒロトだったが、ヒロトを競馬好きの同志と勘違いした七果はヒロトに絡んでくるように。
ギャンブラーと関わると面倒――。そう思いつつも、七果が競馬でいくら負けたのか気になったヒロトは、つい距離を置きたいはずの七果やその友人たちとの交流を持って“しまう”。
そう。ギャンブラーの友人はギャンブラー。一見真面目そうな七果だったが、やはりそこはギャンブラーJKの巣窟で――?
ヒロトは七果たちギャンブラーにギャンブルをやめさせることはできるのか!?
女子高生×ギャンブル、異色の青春ラブコメ開幕!
■受賞コメント
この度は《金賞》をいただき、誠にありがとうございます。本作はギャンブルが好きな女子高生たちがメインのお話となります。
一般的にギャンブルというと、グレーなイメージがありますが、見方を変えれば非常に健全です。農林水産省管轄のもと、馬事文化の発展や馬産地の振興に寄与する活動こそが競馬ですし、
国土交通省管轄のもと、海洋・船舶に関する問題解決や上下水道の整備等の支援活動に取り組んでいるのがボートレースです。
そんな社会奉仕の精神が詰まった本作を評価して下さった選考委員、編集部の皆様には改めて感謝申し上げます。
■選考評
● 細音啓
ギャンブル中毒の女子たちを男子高生が眺める構図の楽しさ、いいですね! 競馬に詳しくない側の読者視点でも、なぜ競馬に魅せられるのかという当事者の感情がありありと描かれていてわかりやすかったです。
「強い馬はかっこいい」は他のギャンブルと差別化できる競馬ならではの魅力だし、ヒロインの「馬より可愛い生き物など存在しない」は名言かなと思います。
クライマックスに、この作品ならではの感情の盛り上がりや“胸に残る瞬間”を作れれば、更に面白くなるのではないでしょうか。
● 橘公司
面白い。題材はピーキーだが、文章が上手いのでするすると読み進めることが出来た。とにかくキャラクターが良い。ラブコメのような顔をしておきながら駒須、八代、峰先輩と、登場するヒロインたちが全員ギャンブル狂いでまったくヒロインしていないのが面白い。
とにかくコメディパートが軽妙で、読んでいてキャラクター同士のやりとりがきちんと笑える点は高評価。惜しむらくは、全体通して物語の流れが微妙に掴みづらかったことと、クライマックスの展開がやや尻すぼみだったこと。
しかし総じて文章に安定感があり、特にギャグパートにおける台詞回しや間の取り方が巧みで、コメディとしての完成度は高い。
● 羊太郎
ギャンブルというやや不健全なネタを主題としているのに、なぜか爽やかな青春物語展開が印象的で、作者のギャンブルへの愛が伝わりました。この作品はキャラクターが全員個性豊かで魅力的。
ギャンブル狂いの三人の少女達のそれぞれの方向性のイカれっぷりも楽しいし、脇役の男連中もキャラが濃くて面白い。
そういったアクの強い連中との日々のやり取りや、会話の面白さがこの作品の最大の特徴でありウリだと思いました。ラノベとして、構成、文章力、物語構造が巧みで、技量面では特に文句のつけようがありません。
- 新人賞/コンテスト
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