【編集部特別賞】ふたりの恋路を邪魔する奴は愛に阻まれ散るがいい/緋色友架(ひいろ ともか)
■あらすじ
セックスがしたい。詩織とセックスがしたい。義理の兄妹だとか、禁断の関係だとか、そんなことはどうでもいい。俺は詩織のことが大好きだ。
そして、詩織も俺のことを心から愛してくれている。今すぐにでもつながりたい、ひとつになりたい……俺も詩織もそう想っている。なのに……それなのに!
元ヤクザの両親(再婚同士)によるネチッっこい妨害工作(まぁ当たり前っちゃ当たり前)!! 俺たちと同じ高校に通っているクセの強すぎる友人たち(詩織の友達もヤバい女の子ばっかり……)が巻き起こす想定外のトラブルの嵐(詩織がすごく嫌がってる)!!!
俺と詩織は『ハッピーエンド』を迎えることができるのか……。とにもかくにも、俺たちの恋路には邪魔なものが多すぎる。
■受賞コメント
この度は私の作品に、『編集部特別賞』という身に余る光栄を授けていただき、本当にありがとうございます。 選考委員の先生方、編集部の皆様、そして選考に携わってくれた全ての方々に、厚く御礼申し上げます。ガラケーでポチポチ書き始めた小説家としての夢、そのスタートラインに立てた喜びで、胸がいっぱいです。
いただいた栄誉に恥じぬよう、小説家として全力で精進、邁進していく所存です。どうかこの緋色友架なる小説家を何卒、よろしくお願い致します。
……あんなあらすじ書かせる作者のコメントが、こんな真面目でいいんですかね?
■選考評
● 細音啓
キャラが凄く良かったと思います。義妹系ヒロインである詩織の肉食ぶりはもちろん、生徒会メンバーもキャラが立っており、それぞれビジュアルをぜひ見てみたい気持ちになりました。
えっち系ラブコメはこれまでの選考でも人気を博していましたが、ここまで来ると下ネタ系ラブコメというべき感じで……これをファンタジア大賞としてどう評価すべきかすごく悩ましかったです。(笑)
理想を言えば、下ネタ系で尖らせるのは勿論良いのですが、各キャラ、下ネタ以外にも強い特徴があるとさらに面白くなるのではという気がしました。
● 橘公司
ありがちな導入──と思いきや、いきなりアクセルべた踏みで笑ってしまった。
インパクトあり。元ヤクザで何でも屋の父、京都弁の母、曲者揃いの生徒会――と、キャラクター周りがなんだかものすごくクラシカルな立て付けで、懐かしい気持ちになった。
とはいえ、もはや一周回って新しいのかもしれない。キャラや掛け合いが個性的なのは高評価。クライマックスに向けての展開に、説得力をもっと盛り込めると更に良かったと思う。
● 羊太郎
登場キャラクター達が個性豊かで非常に魅力的。全体的にノリと勢いが凄まじく、最後まで一気に読めました。
物語の構成・構造も素晴らしく、高い技量を感じさせます。起承転結もはっきりしており作品としてのレベルは非常に高いと思います。
一方で、主人公に対する読者の感情移入の導線がいまいち足りていない印象を受けました。等身大のキャラクターでありつつも、どこか読者が特別に感じられるような魅力を補うことができれば必ず化ける作品になると思います。 改稿を楽しみにしております。
選考員総評
●細音啓
【プロフィール】
第18回《佳作》受賞作「黄昏色の詠遣い」でデビュー。現在刊行中の「キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦」はTVアニメSeasonⅡまで放送されるなど人気を博している。
【総評】
今回の選考会では、独自の世界観や雰囲気の構築で目を引く作品が多かったという印象です。特に現代を舞台にしたラブコメ作品においては、どのヒロインも非常に個性的で、キャラクター単体として大変魅力的だったと思います。
ただ、その一方で、これだけ魅力的なヒロインが惚れるのであれば、主人公にもそれに釣り合うだけの輝きがあってほしい、と感じる場面も少なくありませんでした。
物語の中で、主人公とヒロインが双方とも活躍できる見せ場があれば、二人の関係性はより輝きを増したはずです。
キャラクターという核の部分はどの作品も素晴らしいものを持っていたので、いずれも改稿を経た上で、より高みを目指せるポテンシャルに満ちていると感じました。
●橘公司
【プロフィール】
第20回《準入選》受賞作「蒼穹のカルマ」でデビュー。第2作「デート・ア・ライブ」は様々なメディアミックス展開がされる大ヒットとなり、現在は「王様のプロポーズ」を刊行中。
【総評】
今回〈大賞〉を受賞した『幕末マギカ』は、構成力、キャラクター、文章力、その全ての平均点が高く、完成度という意味で頭一つ抜けていました。その安定感があったからこそ、私も自信を持って強く推させていただきました。
しかし、他の作品も全く異なるベクトルで、それぞれが強力な「武器」を持っていたのが今回の特徴です。
『SpaceGirls!』のしっかりと構成された王道タイムリープものとしての面白さ、『女子高生にギャンブルはまだ早い!』のぐいぐい読ませるコメディセンス、『ふたりの恋路を邪魔する奴は愛に阻まれ散るがいい』の読者の心を掴む出だしのインパクト、
そして『ブラックジョークに支配された世界』が持つ世界観一点突破の鋭さ。
同じ点数で並んだ作品でも、評価するポイントが全く異なりました。キャラクターが面白ければ、どんな題材でも物語は面白くなるのだと改めて痛感させられた、非常にバリエーション豊かで楽しい選考会でした。
●羊太郎
【プロフィール】
第26回《大賞》受賞作「ロクでなし魔術講師と 禁忌教典(アカシックレコード)」でデビュー。同作が大ヒット作となり、現在は「これが魔法使いの切り札」を刊行中。
【総評】
今回の最終選考に残った作品は、どれも必ず「尖った」部分を持っていました。既存の流行を追うのではなく、作者それぞれが「自分だけの固有の世界観を作るんだ」という強い意志を感じさせる作品ばかりで、読んでいて非常に楽しかったです。 ただ、その素晴らしい世界観を最大限に活かすためには、主人公とヒロインにもう少しだけ「一本筋の通ったもの」が必要なわけで——例えば、絶対に譲れない信念のようなものがあれば、物語はさらに深みを増したのではないかなと思う部分もありました。
これだけレベルの高い作品が集まる中で、頭一つ抜け出すためには、やはりキャラクター性にどこまでこだわり、力を注げるかが今後の差になってくるのかもしれないな、と感じた選考会でしたね。素敵な作品たちを今回もありがとうございました!
●ファンタジア文庫編集長
今回も、様々な切り口の、非常に面白い作品をご応募いただけたことを嬉しく思います。SFからラブコメまで、非常にジャンルの幅が広く、多彩な才能に出会える素晴らしい選考会でした。
Web小説が全盛の今、新人賞という場で「一冊の本として、最後まで読み切った上で面白いかどうか」を問うことの意味は、より大きくなっていると感じています。その中で評価の軸となるのは、やはり「キャラクター」です。
主人公をどれだけ格好良く、ヒロインをどれだけ可愛く描けるか。みなさまのこだわりを期待しています。
また、今回の受賞作品は歴史物・SF・ギャンブルなど、多様なテーマの作品が光りましたが、直球王道なファンタジー作品・ラブコメももちろん期待しています。みなさまが得意な、渾身のテーマでの挑戦を期待しています。
これからもファンタジア文庫は、ご応募頂きました原稿を素敵な1冊の本として届けられるよう努めて参ります。 引き続き応援よろしくお願いします。
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