SHARE

来栖夏芽の描く人間嫌い教師と人外女子による学園ヒューマンドラマの魅力を徹底解剖|TVアニメ『人外教室の人間嫌い教師』放送記念特集【01】

MF文庫J
MF文庫J
2026/01/04

“人間に憧れる人外”と、“人間が嫌いな教師”の対比構造が魅力を生み出す

 また、教師もの、という要素もライトノベルでは度々描かれてきた要素である。

 教師という職業に(面倒くさがりながら教師をしている作品もあるけれど)励みながら、生徒と一緒に成長していく姿を描く物語には、多くの読者が感動してきた。また、学校が舞台の青春ものであれば、生徒に近しい立場の教師というのも、往々として描かれてきたものだ。
 しかし、本作はそんな構成ではなく、タイトルにある通り、「人間嫌いの教師」が主人公となる。しかも、アラサーの引きこもりという形で……!

 主人公の姿を言い表すならば、理想の先生であった男である。生徒たちに寄り添い、どんな問題も解決してくれる。優しくて、親身になってくれる先生。しかし、そんな先生は、ある出来事に巻き込まれたことで一転して人間不信に。引きこもってはゲームばかりやるアラサー無職に成り下がっていた。
 そんな、他者と向き合うことから逃げ続けて、社会から距離を置いてきた主人公の姿には、激務に立ち向かいながら日々を過ごしている現代人ならどこか共感できるかもしれない。

 ただ、そこだけで終わらないのが本作。母に促されて再就職活動を行ったことで、彼は小さな学校へ赴任することとなる。森の中の学校でリハビリ教師生活、となるだけでも面白い物語にはなりそうなものだが、本作の妙はそこで相対する生徒が人外であるという点だ。

 人外であるから人間不信の青年であっても交流はしやすいはず。人魚や人狼、ウサギや百舌鳥は人間とは異なる文化や生態系を持っているのだから……というのが、前段で触れた内容を読んでいただければ、「そんなはずがないだろ!」と思われるに違いない。何故なら、人外ヒロインたちは人間になりたいと憧れているのだから!

 つまり……

生徒たち:人間に憧れていて、ある目標のために人間になることを望んでいる
教師:人間不信で、あまり他者と関わる気がない


 という対比構図である。そんな誰よりも人間に憧れ、ある意味人間よりも人間臭いヒロインたちを通して、主人公は再び前を向き始めていく。そして、彼女たちの夢を後押しするために歩いていくところが、本作随一のカタルシスとなっていくのだ。

 そう考えると、教師ものとして見ても、やはり本作は極めてユニーク。
 多くの作品では、教師は「未熟な生徒を導く存在」として描かれるが、本作の主人公はむしろ「生徒に導かれる側」に近い。人間不信で他者を拒絶していた彼が、人間を目指す少女たちの純粋さや努力に触れることで、ゆっくりと心を開き、自分自身の傷と向き合っていく。

 つまり、本作における成長物語は一方向ではなく、教師と生徒が互いに影響を与え合う双方向的なものになっている。教育とは何か、他者と関わるとはどういうことか――その根本的な問いが物語に静かに流れ続けるのだ。

『人外教室の人間嫌い教師』1巻挿絵より
『人外教室の人間嫌い教師』1巻挿絵より©来栖夏芽 ©ANYCOLOR, Inc.


  • 作品紹介
  • 学園
  • 現代
  • 来栖夏芽
  • アニメ化
  • 人外教室
  • 太田祥暉

関連書籍

  • 人外教室の人間嫌い教師 ヒトマ先生、私たちに人間を教えてくれますか・・・・・・?
    人外教室の人間嫌い教師 ヒトマ先生、私たちに人間を教えてくれますか・・・・・・?
    人間関係にトラウマを持つアラサーニート・人間零。そんな俺が、山中にある自然豊かな学校に転職をして、のんびりとリハビリ教師生活を送ろうと思ったら――なんとそこは人外が人間になるための女子校だった!?
    人魚族の水月鏡花、人狼の尾々守一咲、ウサギの右左美彗、鳥の羽根田トバリ……そんな不思議な生徒たちと過ごす日々。何故人間になりたいのか、人間になって何をしたいのか――俺は彼女たちを通じて「人間」を学んでいく。
    これは、異世界ファンタジーでも、人生やり直し転生でもない。少し変わった学校で、人間を目指す人外女子たちと送る、ただの教師の物語だ。

    MF文庫Jの新文芸から、人ならざる女子たちによる学園ヒューマンドラマが今、幕を開ける!
    来栖夏芽 (著者) / 泉彩 (イラスト)
    発売日: 2022/02/25
    • 現代
    • 日常
    • 青春
    • 学園
    その他単行本
    試し読みする
  • 人外教室の人間嫌い教師 2 ヒトマ先生、私たちの希望を見つけてくれますか・・・・・・?
    人外教室の人間嫌い教師 2 ヒトマ先生、私たちの希望を見つけてくれますか・・・・・・?
    人外が人間になるための女子校――不知火高校。人間関係にトラウマを持つ俺は、そこで接した人外女子たちを通じて人間を学びながら、無事に1人の卒業生を送り出したのであった。そして今年は新たにドラゴン族の龍崎カリン、ネズミの根津万智、黒ネコの黒澤寧々子を上級クラスに迎える。だがその3人は、昨年までの人外生徒たちよりも問題児ばかりで……?
    2年目の人外教室。人ならざる女子たちが人間になりたい理由、願い、想い――今年は、いったいどんな1年になるのだろうか。彼女たちの「人間になりたい」という希望を、人間嫌いの俺が導いてゆく――
    これは、異世界ファンタジーでも、人生やり直し転生でもない。少し変わった学校で、人間を目指す人外女子たちと送る、ただの教師の物語――第2弾!
    来栖夏芽 (著者) / 泉彩 (イラスト)
    発売日: 2022/08/25
    • 現代
    • 日常
    • 青春
    • 学園
    その他単行本
    試し読みする
  • 人外教室の人間嫌い教師 3 ヒトマ先生、私たちと未来に進んでくれますか・・・・・・?
    人外教室の人間嫌い教師 3 ヒトマ先生、私たちと未来に進んでくれますか・・・・・・?
    人間に嫌気が差していた俺も、不知火高校で人外の少女たちとともに2年間教師生活を送ることで、徐々に人間という存在、他者との関わりというものへの忌避感が和らいでいた。
    そんな、俺の気持ちが変化を見せていた新年度の春。上級クラスにはナルシスト気味のエルフ・若葉葵、鬼の末裔であるぽやぽやギャル・小此鬼マキが進級。そして――俺のトラウマの原因、かつての教え子である春名未来が新任教師としてやってきた。
    予期せぬ再会に、なかなか心の整理が付かない俺。いったい春名は何故教師になって、どうしてこの学校に……?
    これは、異世界ファンタジーでも、人生やり直し転生でもない――人間を目指す人外女子たちと送る、ただの教師が“人生を歩み直す日々”の物語。
    来栖夏芽 (著者) / 泉彩 (イラスト)
    発売日: 2024/03/25
    • 現代
    • 日常
    • 青春
    • 学園
    その他単行本
    試し読みする
  • 人外教室の人間嫌い教師 4 ヒトマ先生、私たちの理想を届けてくれますか……?
    人外教室の人間嫌い教師 4 ヒトマ先生、私たちの理想を届けてくれますか……?
    去年は春名とのわだかまりもほぐれ、人間との向き合い方にも折り合いがついたように思える1年だった。今回も無事に1人の卒業を見届けられたし、俺も教師としての新たな目標ができた。
    今年はどうやら進級する生徒はいないらしい……が、そこへ謎の美女3人が現れる。彼女たちは校長のお姉さんらしく、「理事長から弟を返してもらいにきた」と言う。しかも上級クラスの生徒として一緒に学校生活を送るだって!?
    なんだかいつもとはちょっと違う賑やかさに、心配が芽生える4年目――生徒は彼女たちから、どのような影響を受けるのだろうか。
    これは、異世界ファンタジーでも、人生やり直し転生でもない。人間を目指す人外女子たちと送る、ただの教師の物語……その新たな一幕だ。
    来栖夏芽 (著者) / 泉彩 (イラスト)
    発売日: 2025/02/25
    • 現代
    • 日常
    • 青春
    • 学園
    その他単行本
    試し読みする

みんなにシェアしよう