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百合好きにもお勧めしたい、サスペンス×群像劇。一人の少女に人生を狂わされた6人の視点から、彼女の本当の姿を象ってゆくサスペンス小説

MF文庫J
MF文庫J
2025/11/25

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから11月25日に刊行する『殺されて当然と少女は言った。』です。みなさんの感想も聞かせてください!


 およそ女子高生離れしたカリスマ的な素養を持つ少女を、その周辺人物の視点から多角的に描いた作品です。時系列も入り乱れ、サスペンス的な面白さも十分なのですが、時折どうも新鮮な読み味がするぞ。これは一体?

『殺されて当然と少女は言った。』口絵より

 なんとなく思い描いていたのは、超人的なキャラクターによって周囲が破滅していくようなお話ですよね。確かにそういう側面もあります。物語はタイトルの彼女=理央によって誘導されたように思える結末に向かっていきますが、自分にはその意図が掴みきれなくて、絶妙な違和感を残すこととなりました。ストーリーはこれ以上ないぐらい綺麗に締めくくられているのに!
 道中は論理的な行動が中心で、人間味を見せてくれるシーンも多く、ちょっと理解できたかも! と思っていたのに、最後で容赦なく振り落とされる感じ。このスッキリしない感じが彼女を神格化するのに一役買って、自分には最高の余韻に感じられました!
 いくつになっても常人には理解の及ばない美少女に憧れているので……。非常に良かったです。

 ちなみに、理央とその恋人・リオのいちゃいちゃ描写も至福でした。本作のあらすじからこんな栄養を得られるとは思わないじゃん!! というかよくこの要素が収まっているな!?
 一連のくだりは全体からするとちょっと浮いている印象すらあるのですが、その違和感が作品を面白くしているのは見事と思います。というわけで、百合好きにもお勧めの一作です。

文・中谷公彦


ざっくり言うとこんな作品

肉親の殺害を肯定する発言が周囲・読者にまで倫理観を問うてくると共に、その発言をした少女の真意を探っていく異色のサスペンス。

ほかは、物語のネタバレを含むため明かせない――気になる方は、ぜひその目で真実を確かめてください。


主要キャラ紹介

『殺されて当然と少女は言った。』真中理央

▼真中理央(まなか りお)
惨殺された県会議員・真中理人の一人娘。

  • 読書感想文レビュー
  • 群像劇
  • 現代
  • サスペンス
  • 中谷公彦
  • 新人賞受賞作

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    肉親の死すら肯定し、母親や周囲の人間から『特別』『異常』と称される美少女・真中理央。彼女の真の目的とは? そして、証拠と目撃者の揃った殺人犯がなぜ捕まらないのか? 真中理央に人生を狂わされた6人の視点から、彼女の本当の姿を象るサスペンスノベル。
    空洞 ユキ (著者) / 博 (イラスト)
    発売日: 2025/11/25
    MF文庫J
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