好きな人に「殺してほしい」と言われたら、あなたはどうしますか？――愛が重くて死にたがりな、不死の少女の物語

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから11月25日に刊行する『魔女と毒殺文芸部 Curse.01　『不死』の魔女は僕に殺されたいようです。』です。みなさんの感想も聞かせてください！

　タイトルの印象から、最初は「オッ、学園ファンタジーか」と思っていたんですよ。でも、読み進めてみたら（いや、かなり冒頭から）、完全に違う方向性で驚きました。いや、まさか「毒殺文芸部」というヘンテコ部活のお話じゃないなんて！

　そんな冗談はさておき、加恋ちゃんの能力が強すぎて、強すぎて。（呪いではあるけれど）不死身だったり、催眠ができたり。使い方次第では世界最強のはずなのだけど、加恋ちゃんはそんな方向に行かない……という点がとても面白かったです。
　自分にそんな能力があったら、権力を持ったり、働かずともお金がもらえたりするな……って思っていたんですが、完全に心が汚れてしまっていますね。加恋ちゃんはピュアなので、そういうことしないです。たぶん。

　ピュアといえば、アサギくんと加恋ちゃんの恋模様（？）の鮮やかさに心が溶かされておりましたが、でも、実際「殺してほしい」と好きな相手から言われて、自分はどんなアクションを取るのでしょうか。
　こんな青春模様には絶対にならないと断言できるのですが、どれだけ自傷してもすぐに再生する不死身の女の子がそんな言葉を発していたら……。いや、想像ができないからこそ、この物語が面白いのですが。もう最初からフルスロットルで驚きの連続でしたよ！

　閑話休題。個人的には狐紺糖財ちゃんが推しです。ここんとうざいちゃん。フルネームで言いたくなりますね。終盤のアサギくんとの掛け合い（そこで狐紺糖財ちゃん、来ちゃうのね……！　という展開もGood）も素晴らしくて、加恋ちゃんの湿度高め具合、花梨ちゃんのえっちさも心に刺さっておりましたが、一気に持っていかれました。
　――からのそんなおわり方で許されるんですか第2巻も出してくださいね、というエンド。いつか90分尺の映画とかで一気に観たい最高の青春群像劇プロローグになっていました。
　いや、第1巻も最高なんですけど、絶対に第2巻はこれ以上に面白くなる作品なので、今のうちに手に取っておくことをオススメしますよ！

文・太田祥暉

ざっくり言うとこんな作品

１）自分を殺して欲しいと願う女の子との湿度の高い恋模様！　好きな気持ちが強くなっていっても、彼女は死んでしまう……？

２）三人の個性的なヒロインとの掛け合いが面白い！　そしてその言葉の中に、「魔女」にまつわる伏線も……？

３）アサギと加恋を中心に紡がれていく青春模様が楽しくてたまらない！　文芸部の交換ノートや、二人のデートなど、甘酸っぱい展開も。

主要キャラ紹介

▼浅葱虎徹（あさぎ・こてつ）
加恋に想いを寄せている高校生。彼女とは仲が良く、学年の中では付き合っているという噂もされている。ひょんなことから悪魔と契約したり、文芸部に所属したりすることに。

▼胡桃沢加恋（くるみざわ・かれん）
容姿端麗で成績優秀な、学年の中でも一目置かれる孤高の少女。魔女の呪いによって、不死身になってしまっており、死にたいと願っている。アサギのことを溺愛しているが……？

▼狐紺糖財（ここん・とうざい）
誰も部員がいなかった文芸部に入り、青春を謳歌している女の子。誰にでも人当たりがよく、最初こそ冷ややかに接していたアサギや加恋ともすぐに仲良くなっていく。

▼胡桃沢花梨（くるみざわ・かりん）
加恋の姉を名乗る悪魔。アサギと契約し、使い魔となった。【不遇】の呪いをアサギに与える代わりに、加恋を生き延びさせるためのアドバイスを彼へ授けていく。