【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから10月24日に刊行する『ダンジョン報道の最前線』です。みなさんの感想も聞かせてください!
今でこそ、企業や団体からダイレクトに情報が伝えられるようになり、新聞や雑誌の重要性は落ちてきた。十数年前であればテレビやラジオくらいしか速報性のあるメディアはなかったし、地方は情報の伝達速度が遅かったので、都会で行われたイベントの内容を知るには翌日の新聞や数週間遅れて刊行される雑誌が必要不可欠だった。しかし、今はSNSをはじめとしたWebメディアの発展によって、その優位性は落ちている。
だが、Webメディアのように自ら得に行かなければならない媒体と異なり、新聞や雑誌は目当ての記事以外のものも自然と目に入る。これは良いと捉える人とよくないと捉える人、双方いるとは思うが、自分は前者だった。偶然目に入ったことで、運命的な出会いを果たすこともある。その偶然性がとても楽しく、魅力だと思い惹かれていった。

そんな偶然性を生み出すメディアの一つ、新聞。そこに掛けるネルコの熱量の高さといったら……! 正直自分がネルコの立場であれば、社長の言葉に乗っかって言われたままの記事を書いてしまうかも(そうして本作のキャラクター・不倫ハゲのようになっていく……)。でも、初期衝動のままに突っ走れるからこそ、良い記事が生まれ、読者に良い運命的な出会いをもたらすことができるのだ。
ネルコがアイリスを冤罪から救うべく、「ペンは剣よりも強し」とばかりにどんどんと取材を重ねていく様がとても熱かったのは取材を生業としている人間だからだっただろうか。いや、それ以外の人も熱さに魅了されるに違いない! 自分もこの業界に入ったときにはこれほど熱かっただろうかと、少し自分を見つめ直す機会にもなる一冊だった。
文・太田祥暉
ざっくり言うとこんな作品
1)ダンジョンがあるファンタジー世界観で、リアルタイム配信をするわけではなく、新聞記者が真実を追求するという新基軸の物語!
2)冤罪によって殺されようとしている「聖女」を救うべく、記者としてのプライドを燃やしていく熱い展開!
3)最初は主人公のことを不審に感じていた「聖女」も、徐々に絆されていって……!? 二人の関係性がたまらない冒険譚!
主要キャラ紹介

▼ネルコ
三流新聞社の若手社員。社長であるベリークが冒険者に随行する記者をしていた姿に憧れて入社をしたが、今はゴシップ取材ばかりで飽き飽きしている。そんな中、アイリスに出会い……。

▼アイリス
「災厄の聖女」として恐れられている罪人。もともと冒険者をしていたが、十年前にある事件によって投獄。オドオドとした性格で、とても大悪人には見えないが……?

▼ベリーク
ネルコが勤める新聞社の社長。かつてアイリスたちが所属するチームに随行し、記者をしていた。しかし十年前にはアイリスを断罪する記事を執筆。その後、現在の会社を立ち上げた。
- 読書感想文レビュー
- ファンタジー
- 異世界
- 太田祥暉
関連書籍
-
ダンジョン報道の最前線ダンジョン都市・ミルベルの特殊な仕事――随行記者。彼らは冒険者に同行し攻略情報を記事にする。弱小新聞社に勤める少女・ネルコは随行記者に憧れていたが……与えられる仕事は熱愛や不倫といったゴシップネタばかり。だがある日、ネルコはかつて惨劇を引き起こした“災厄の聖女”アイリスが処刑されるというネタを掴む。死刑直前のインタビューは爆売れ間違いなしと牢獄に突撃取材をするが、衝撃の事実が判明。なんとアイリスは濡れ衣だったのだ! 明らかな冤罪――記者として見過ごすわけにはいかない。ネルコはアイリスを脱獄させ、冤罪の証拠が眠るダンジョンを駆ける。記者魂を賭け、隠された真実をすっぱ抜け!発売日: 2025/10/24MF文庫J