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脳汁ブワァァー!!!で、ボケの筋トレ!【イントゥ・ザ・自己救済ワンダーランド#02「大喜利カフェ体験記」】

2025/10/09
大喜利カフェ ボケルバ
 KADOKAWAのWeb小説サイト「カクヨム」と「メクリメクル」のコラボ連載「ざわつく空籠城 ~カクヨムBuzz作家達の制御不能コラム~」。「カクヨム」ではやや異端の存在であるBuzz作家の皆さんが、「メクリメクル」に出張、“雑文”コラムを展開していきます。

 今回は、 「面白そう!」と思ったら、すぐ突撃! 作家でライターの加藤よしきが、時に真剣、時に脱線(?)しながら綴る冒険コラム。読んだらちょっと誰かに話したくなる、そんな発見を体を張ってお届け!

#02 イントゥ・ザ・自己救済ワンダーランド
大喜利カフェ ボケルバ

ただ頭を使うだけじゃダメだ。お医者さんから言われた「楽しいことしよっ♪」で思いついたのは...大喜利!

 2025年、9月。わたくし加藤よしきは、歴史的な酷暑にやられていた。何もしなくても疲れる。食料品の買い出しだけでクタクタだ。さらに軽度の熱中症になったせいか、何となく頭が回らない。このままではいけない。どんなパーツも止まったままだと痛んでいく。何事も休憩は必要だが、放置は良くない。頭を使わねば。頭を使う、頭を使う……。

 それに、ただ頭を使うだけじゃダメだ。頭を使いつつ、楽しいこともしたい。この連載の第1回で書いたが、私の人生は緊張している。お医者さんから「楽しいことしよっ♪」と、エッチな漫画のギャルみたいなことを言われた。治療として、己を救うため、俺には楽しいことが必要なのだ。

 頭を使って、楽しいことで、ついでに連載のネタになるようなこと……そんなふうに考えていると、あるアイディアが浮かんだ。「そうだ、大喜利をやってみたい!」

 ここで少し思い出話をしたい。私の実家は思想統制が厳しく、まだ幼かった私は逆らう術もなく、両親の管理下で生きるしかなかった。その中でも「お笑い」は規制の対象になりやすくて、私は当時の最新のお笑い——90~2000年代くらいか——に触れずに育った。不謹慎ネタ、下ネタ、意地の悪いネタ、こうしたものは排除されたのだ。ちなみに『クレヨンしんちゃん』にも触れられなかった。両親にお願いして1回だけ見たのだが、見ている最中、普段は優しい母が、しんちゃんの無法を目にした際に暴力行為をチラつかせるコメントを漏らし、そんなことを言わせてしまったのが幼心に申し訳なく、以降は自主規制をした。閑話休題。とは言えまったく「お笑い」に触れなかったわけではない。ドリフを見て狂ったように笑っていた記憶はある。あとは両親が見逃してくれていたウッチャンナンチャンにも心酔し、たけし軍団(何故か許されていた)にも本気で憧れた。それは今も私の大切な礎として存在している。しかし一方で、ダウンタウンなどには触れられず、世代的にやや変なお笑い遍歴を歩むことにもなった。

 やがて独り暮らしを始めると……ようやく私はこれまで触れていなかったお笑いに触れられた。そこで出会ったのが大喜利である。ウンナンもドリフもコントだった。しかし、関西の笑いには漫才があり、大喜利が存在した。ちょうどダイナマイト関西という大喜利のイベントもあった。そこで漠然と大喜利に対する憧れを持ち、やってみたいと思った。

 しかし、大喜利は実際にやるのが難しいものである。まず「回答者」が何人か必要だ。お題を振ってくれる司会者も要るし、肝心のネタを判断してくれる「お客さん」もいる。絶対に1人では出来ない。ラジオの投稿などは大喜利的だが、やはり私がやってみたいのはお手元のフリップに答えを書きこんで、パっと提示するスタイルだ。そんなスタイルでやるのは、自分には不可能。夢のまた夢である。そう思っていた。ところが人生が緊張し、すっかり笑顔を忘れた大人になった2025年……凄い情報をゲットした。なんと東京都内に大喜利カフェがあるという。知った瞬間、即決した。これは行くしかない! そんなわけで、今回の自己救済のために向かったのは、秋葉原の大喜利カフェ「ボケルバ」さんである。取材も快諾していただき、実際に大喜利に参加できることになった。

 そんなわけで現地にやってきた。大喜利の時間が始まるまで、少し店長のせんだいさんとお話をする。

大喜利カフェ ボケルバ
下にはクイズバー。色んな意味でバラエティ色の強いビルである。

39歳・大喜利未経験者、秋葉原の大喜利カフェ「ボケルバ」へ潜入!

 ここボケルバさんでは、なんと大喜利の会が毎日行われている(昼の部と夜の部に分かれている)。もちろん、時にはお客さんたちの間での自主大会が開かれたりもするし、いわゆるセミプロや芸人志望の若者なども訪ねてくるそうだ。しかし基本的にはアマチュア/素人向けであり、大喜利未経験者のお客さんが非常に多いという。客層は10~20代が多いそうだが、普通に30~40代の人も来るそうで……39歳で大喜利未経験者の俺、ちょっと安心。

 そんな話をしていると、今日のお客さんがボケルバに集まって来た。参加者の内訳は、店長が司会を担当し、自分を含む7人が回答を担当する。参加者は車座になってスタンバイし、大きな画面に映るお題に応えていく。ちなみに回答者は観客の役割も果たす。勝負要素もなく、好き勝手に答えて良い。1問につき制限時間は10分で、何本ボケてもOK。そして4問が終わると10分の休憩が入る。ちなみに大喜利自体のルールは、「行き過ぎた下ネタ・不謹慎ネタの禁止」「他人を攻撃しないこと」などの常識の範囲内であり、自由度は非常に高い。説明を受けたあとは、所定の位置へスタンバイ。そして……。

大喜利カフェ ボケルバ

 これだよ! フリップ、ペン、クリーナー。憧れていた大喜利三種の神器である。どれも普通の文房具だが、いざ手もとに来ると想像以上にワクワクする。しかもこれから大喜利をするのだ。そう考えるとワクワクと同時に、「笑われるんじゃねぇ、笑わすんだよ」と見えない師匠に肩をガシっと掴まれるような、程よい緊張感が湧く。



この記事を書いたのはこの人

加藤よしき
加藤よしき

仕事を募集中の作家/ライター。
昨年末に初の短編集「たとえ軽トラが突っ込んでも僕たちは恋をやめない」が発売され、好評を博すも、父親からは「もっと一般向けの小説を書け」と39歳にして割かしマジで叱られる。
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取材協力:大喜利カフェ ボケルバ


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