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TikTokで大反響!! シリーズ待望の書き下ろし最新刊『レゾンデートルの結び』を徹底的にご紹介!

2025/07/25
レゾンデートルの結び
 2021年に発表され、小説紹介クリエイター けんごさんがTikTokで何度か紹介したことをきっかけに、10代はじめ若い世代の読者から支持された、楪一志さんのデビュー作『レゾンデートルの祈り』。続編の『レゾンデートルの誓い』ともに大きな話題となりました。

 そんな話題作が、今年待望の文庫化。装いも新たにメディアワークス文庫から発売中です。さらに7月25日には完全書き下ろしとなる第3作『レゾンデートルの結び』もリリース! ファンを魅了し続けている「レゾンデートル」シリーズについて、その世界観と魅力を徹底的にご紹介します。

TikTokで話題の「命」の物語とは

安楽死が合法化された近未来の日本が舞台

レゾンデートルの祈り

 「レゾンデートル」シリーズは、近未来(2030年代~2040年代)を舞台にした物語です。「JARSⅡ型ウイルス=日本型人工的呼吸器合胞体ウイルス」という新種の感染症が世界的に大流行し、その原因になったと推測される日本が諸外国から非難され、時に襲撃を受けるなどして治安が悪化。生きる希望をなくす人が増えたことから、国民を救済する名目で「安楽死制度」が導入された――。つまり安楽死が合法化されているのです。ただし制度を利用するためには、次の条件のどちらかを満たす必要があります。

①RES(レス)
年齢が80歳以上であったり、難病を患った場合であったり、特定の条件のうち、どれかひとつでも当てはまる場合に限り安楽死を申請することができる。
②REN(レン)
精神的苦痛や肉体的苦痛など、14歳以上で生きづらさを抱える者が必要な条件を全て満たす場合に限り、生涯で1度のみ申請することができる。REN取得申請の場合、申請から1年間は安楽死が認められず、この期間でアシスター(人命幇助者)と呼ばれる者との10回以上の面談が必要になる。

 「レゾンデートル」シリーズの主人公は、安楽死希望者と面談を行うアシスターという職業に就いています。「安楽死希望者にはどんなバックボーンがあり、どんな辛さを抱えているのか?」「なぜ安楽死を希望しているのか?」など、面談を通じて彼らの言葉に耳を傾け、心の奥底に隠された「生きたい」という気持ちを感じ取り、安楽死する人を減らすこと。それがアシスターの役目です。けれど時に「死にたい」と願う人の想いを真摯に受け止め、彼らを見送ることも必要となる。非常に責任重大な仕事なのです。



絶望で終わらない温かい人間ドラマ

 第1作『レゾンデートルの祈り』は、主人公の眞白がアシスター養成専門学校で学び、さらにアシスターとなって仕事を始めていく様子が、連作短編としてつづられます。担当する安楽死希望者は、長年帰らない恋人を待ち続け、生きる希望を見失っている元パティシエの女性をはじめ、若年性アルツハイマーになった妻の記憶がなくなってしまうことを悲しむ夫や、最後まで心のうちを明かさずに安楽死を選ぶ若者など。

 第2作『レゾンデートルの誓い』では前作から5年が過ぎ、かつて高校生の頃に眞白と面談をして生きることを選んだ渚がアシスターになっています。先輩アシスターの眞白や同期の朱音(あかね)らと励まし合いながら、声が出なくなってしまった元歌手の男性や、末期癌の男性、渚が人生で最も許せない人物などと向き合うことになります。


レゾンデートルの誓い

 彼らがなぜ死を望むのか、その背景や理由は多種多様です。彼らが抱える生きづらさは、ストレスの多い現代を生きる私たちにとって、他人事ではありません。それゆえ、ひとつひとつのエピソードに感情移入し、登場人物たちの苦悩に寄り添ううちに、ぐいぐい物語の世界に引き込まれていくのです。

 これらの作品が素晴らしいのは絶望で終わらない点。「安楽死」という重いテーマを扱いながらも描かれるのは温かな人間ドラマです。アシスターたちの献身的なサポートによって、心を閉ざしていた安楽死希望者たちが変化していく姿には胸が熱くなります。

 他者との繋がりや、わずかなきっかけさえあれば、人は「生きる意味」や「存在価値(レゾンデートル)」を見つけられる―。そんな力強いメッセージが込められた作品だからこそ、多くの読者に支持されているのでしょう。また、アシスターたちが苦悩しながらも職務を全うし、人間的にも成長していく「お仕事小説」の側面があるのも大きな魅力です。



第1作の側面が描かれる最新作『レゾンデートルの結び』

レゾンデートルの結び

 7月25日に発売となる待望の最新刊『レゾンデートルの結び』は、眞白の同期であるアシスターの陽菜が主人公。第1作『レゾンデートルの祈り』と同じ時代が、陽菜の目線から描かれています。誇れるものがないと劣等感を抱いて生きてきた陽菜が、アシスターという職業を通して成長していく過程が、第1・2作同様、連作短編としてつづられます。

 『レゾンデートルの祈り』の伏線を回収するような、アザーサイドストーリーが収録されていたり、人気キャラクターの高坂教官が抱える苦い過去が明かされたりと、シリーズを読み続けてきた人には、いっそう響く内容です。

 未読の方もぜひこの機会に手にしてください。何のために生まれ、なぜ生きるのか――。自分と向き合う読書体験ができることをお約束します。



文●高倉優子


登場人物紹介

遠野眞白(とおの・ましろ)
神奈川県・江ノ島にあるアシスターと安楽死希望者が面談をする施設で働く新米アシスター(人命幇助者)。『レゾンデートルの祈り』の主人公であり、主要人物として全シリーズに登場する。
高坂未怜(こうさか・みれい)
アシスター養成専門学校で生徒を指導・研修する担当教官。アシスターになった眞白や陽菜のことを気にかけ、さまざまな気づきやアドバイスをくれる存在。
東峰渚(とうみね・なぎさ)
高校生の安楽死希望者。「なぎちゃん」と呼んでくれた眞白との出会いを通じて「アシスターになりたい」という夢を持つようになる。第2作『レゾンデートルの誓い』の主人公。
柳川 陽菜(やながわ・ひな)
眞白の専門学校の同期で親友。劣等感を抱えながらも、アシスターとして安楽死希望者と向き合い成長していく。最新刊『レゾンデートルの結び』では主人公となる。


小説紹介クリエイター
けんごさんの推薦コメントも一緒に
作品詳細をご覧ください!

どうか、祈りが込められたこの物語が、“救い”を求めるあなたに届きますように。

楪 一志 (著者)
メディアワークス文庫
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安楽死が合法化された未来。人生に希望の光を照らす物語、待望の文庫化!
安楽死が合法化された未来の日本。
安楽死を希望する者は人名幇助者〈アシスター〉との最低十回の面談が義務付けられていた。
新人アシスターの遠野眞白は、神奈川県・江ノ島の〈ラストリゾート〉で、死に救いを求める安楽死希望者と出会い、向き合っていく。
暗闇の奥底に「生きたい」があると信じ、希望の光を照らしたい。もうあの日の後悔を繰り返さないために。
話題沸騰の命の物語。書き下ろし短編「約束の花」を加え、待望の文庫化。

夢や目標を見失って、心が折れてしまいそうなときに読んでほしい一冊です。この作品は、あと一歩頑張れる原動力になります。

楪 一志 (著者)
メディアワークス文庫
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安楽死が合法化された未来。かつて死を願った少女が誰かの孤独を救う第2巻
安楽死が合法化された未来の日本。安楽死を希望する者は人名幇助者〈アシスター〉との最低十回の面談が義務付けられていた。
神奈川県・江ノ島の〈ラストリゾート〉でアシスターとして働く東峰渚。かつて安楽死希望者だった彼女は、その経験があるからこそ寄り添える痛みがあると信じ、安楽死希望者たちと向き合っていく。
たとえそれが、人生で最も許せない人だとしても――。
人気シリーズ文庫化第2弾。文庫限定書き下ろし短編「そして始まりの場所へ」を収録。

寄り添うことだけが優しさじゃない。生きる理由は、千差万別。自分と向き合うための、静かな時間をくれる物語です。

楪 一志 (著者)
メディアワークス文庫
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安楽死が合法化された未来。大人気シリーズ待望の書き下ろし最新刊!
誰よりも近い場所で、あなたの孤独に寄り添っていく。
安楽死が合法化された未来の日本。安楽死を希望する者は人命幇助者〈アシスター〉との最低十回の面談が義務付けられていた。
神奈川県・江ノ島の〈ラストリゾート〉でアシスターとして働く柳川陽菜は、誇れることの無い自分に劣等感を抱いて生きてきた。
しかし、“特別ではない”自分だからこそ見つけ出せる答えがあると信じて、安楽死希望者たちと向き合っていく。
偶然にも一人の人生を大きく変えてしまった、あの日の出来事を胸に抱えながら――。
けんご
TikTokを中心にSNSで活躍する小説紹介クリエイター。著書『けんごの小説紹介 読書の沼に引きずり込む88冊』(KADOKAWA)が刊行中。
▷TikTok @kengo_book

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