『乙女ゲー戦記』著者・うっかり一兵衛スペシャル突撃インタビュー! 受賞作が生まれるまでを赤裸々に語る!!(下)

『乙女ゲー戦記』著者・うっかり一兵衛スペシャル突撃インタビュー(下)
幻想の世界をまるごと創り出すっていう、
とてつもない行為に対してすごく尊敬の念がありました
うっかり一兵衛:ライトノベルとかWEB小説の感想で、そういう違和感に触れているレビューを見かけたことがきっかけで、自分も気になるようになったんですけど、違和感なく読めるって結構大事なことだと思っています。
―――いや本当に、何気ない世界の描写一つ取っても実際に見てきたように描かれるなと思いますからね。相当勉強されたのか知識が豊富なんだろうな、と思いましたが、どうですか?
うっかり一兵衛:実は昔から歴史が好きで、大学でも世界史の教授に目をかけてもらったりしたので、特にいわゆる中世ヨーロッパ時代の知識というのは勉強していく中で自然と身についたんだと思います。そのときはまさか、こんな自作の小説の世界観設定に役立つとは思ってなかったので、世の中って何が起こるかわからないものだなぁと感じますね。
―――人生が創作に活きるって素晴らしいことだと思います。ファンタジー作品を書こうと思ったのは、やっぱりそういう中世ヨーロッパが好きという気持ちからですか?
うっかり一兵衛:もちろんそれもあるんですけど、トールキン作品と中学時代に出会ったことが大きい気がしますね。中学に上がるまで僕はそんなにファンタジー作品を読んでいなかったんですが、図書館で『ドラゴンランス』というシリーズ作品に出会いまして、それがめちゃくちゃ面白かったので、そこから色々と名作を辿っていった結果『指輪物語』に行き着くんです。それで、作中に出てくるエルフの言葉をトールキン先生が自分で全て0からというか1から作り出したということを知って、「この人ヤバいな」っていう……(笑)。
―――確かに、ヤバいですよね(笑)。
うっかり一兵衛:百年読まれるような名作って、そういう設定みたいな下地から作り込まれてるんだっていう衝撃を受けたんですよ。
―――なるほど。
うっかり一兵衛:幻想の世界をまるごと創り出すっていう、とてつもない行為に対してすごく尊敬の念がありましたし、いつか自分もやってみたいと思ったのが、そもそも歴史が好きになったきっかけでもあります。世界を創るにはまず世界の知識がないといけないな、と思って。
―――全部が今に繋がってるんですね。
うっかり一兵衛:当時、中学生のときは演劇部に入っていたんですけど、そこで台本とかを書くこともあったので「お話を書く」ということに対してのハードルも低かったんですよね。今みたいに小説投稿サイトに書くとかはなかったんですが、自作の小説をネットの掲示板に上げてたりもしましたし。
―――あ、じゃあ中学生の頃から小説は書かれてたんですか?
うっかり一兵衛:いえ、中学のときに少し書いていた作品を途中で更新停止してしまってからはもうずっと読み専になっていたので、高校生の時点では既に執筆からは離れてしまってました。
―――それでもこうして小説を生み出す側として作品を世に送り出してくださったのはありがたいですね。話を本作に戻しまして、うっかり一兵衛さんが『乙女ゲー戦記』の中で特に印象深いキャラクターは誰ですか?
うっかり一兵衛:やっぱり主人公のエレウノーラは自分の中でも思い入れが強いな、と思います。肉体は女性、精神は男性というギャップのあるキャラクターなので書いていて楽しいですし、僕自身が自由奔放なキャラクターが好きということもあって、1巻のエレウノーラはすごくイキイキと描けたんじゃないかなと思います。

―――ビジュアルからしてインパクトの強いキャラクターですもんね。
うっかり一兵衛:そうなんです。初めてキャラクターデザインを拝見したときに、思い描いていた通りの美男美女がわーっと並ぶ中で、主人公であるエレウノーラが女性でありながら一目で「戦うための身体をしている」とわかるように描いてくださって、天野 英さんには本当に感謝しております。頭の中をそのまま描き写してくれたのかな、と思ったくらいで。
―――主人公のビジュアルについ目が行ってしまいますが、全体通してもとても美しくて力強いイラストの数々で、文章だけじゃなくイラスト込みで楽しむことが出来ました。
うっかり一兵衛:実はカクヨムで元々読んでいた『サムライ転移~お侍さんは異世界でもあんまり変わらない~』が書籍化するときに、この作品で天野さんがイラストを担当されていて、主人公がすっごく格好良く描かれていて印象に残ってたんです。だから自分の作品のイラストを天野さんが担当してくださると聞いたときには、勝手に薄らとご縁を感じて嬉しかったです。
―――最高の形で書籍化が出来ましたね。書籍化するにあたって、改稿は結構されたんですか?
うっかり一兵衛:めちゃくちゃ直しました。三~四回くらい改稿したんじゃないですかね。最初は担当編集からとんでもない量の赤字が入ってきて、心が折れかけたんですけど、やっぱりプロの目線が入るとこんなにも違うのかという感じで。

―――だいぶ直しましたね。それでは、結構WEB版から変わっているところも多いんでしょうか。
うっかり一兵衛:そうですね。削って削ってわかりやすくしたりテンポを良くする一方で、減った分を埋めるために新しいエピソードを書き下ろしたり、WEB版だと数行で片付けられていたような部分をしっかりと掘り下げて一つのエピソードに書き換えたりしています。特にクライマックスは「より格好良く」という感じでシーンを追加したので、書籍版はより一層盛り上がるようになったんじゃないかなと思います。
―――さきほど、最初の赤字で心が折れかけたというお話がありましたが、そこからモチベーションを回復させた原動力みたいなものは何でしたか?
うっかり一兵衛:それが、僕は以前に少しだけ自衛官として働いておりまして――。
―――自衛官!? そうだったんですか?
うっかり一兵衛:はい。最初の仕事がそうだったんですけど、基本的に上から「これをやりなさい」と言われたことに関しては必ずやり遂げる、ということを刷り込まれていたんですよ。だから、命じられたらそれを絶対に遂行する、という慣習を今回も発揮してやりきりました。もう今は既に退職していて、一般の職業に就いてるんですけど、癖が抜けないんでしょうね。
―――それはもう編集者からしたらめちゃくちゃありがたい癖ですよ。
うっかり一兵衛:そういえば、この間SSを書かないといけないお仕事があったんですけど、僕が〆切を勘違いしてしまっていたからというのもありつつ、編集さんから「〆切まであと二日ですよ」って言われたときも「絶対に遂行する」精神で徹夜しながら仕上げたりしてました。
―――いやもう本当に、人生全部繋がってるなという印象を受けるエピソードがまた出てきましたね。まだまだお話お伺いしたいところではあるのですが、そろそろインタビューも終わりということで、是非とも読者の皆さんへメッセージをいただけますでしょうか。
うっかり一兵衛:はい。本作『乙女ゲー戦記 乙女ゲームを1ミリも知らない男がTS転生した結果』は、先ほどもお話出ましたがエレウノーラという身体は女性、心は男性というキャラクターが様々なしがらみの中で、どこまでも爽快感たっぷりに暴れ回る作品です。スカッと楽しめる作品になっていると思うので、ぜひお手に取っていただければ幸いです。また、カクヨムで現在公開しているWEB版と書籍版とでは少しずつ物語の展開を変えていきたいと思っております。どちらもあわせてお楽しみいただけるよう、更新も頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
―――ありがとうございました。
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