食欲の秋のおいしい小説特集【４】　異世界でも後宮でも、料理の腕で大活躍！ 物語だけの特別さを味わう８選

　おいしそうな調理や食卓の描写が食欲をそそる“おいしい小説”たち！
　食欲の秋にぴったりな作品をチェックしてみませんか？

　ファンタジー世界の魔法のような砂糖菓子、異世界で食べるプリン、中華風の世界の香ばしい料理……。

　本特集の作品を読めば、秀逸な食事風景とそれにより変化していく登場人物たちのエピソードで、胸がほっと心地よい温かさでいっぱいになるはず。
　……けれど、おなかは空いてしまうかも!？

2023年にTVアニメ化もされた、砂糖菓子が届けるいくつもの幸せの物語――。

人間が妖精を使役する、ハイランド王国。母を亡くしたばかりの少女アンは、母のあとを継ぎ、銀砂糖師になることを決意。用心棒として口の悪い戦士妖精のシャルを雇い、銀砂糖師の称号を得るため王都へと旅立つが!?

　妖精が作り出したと言われる「銀砂糖菓子」を扱う、特別な菓子職人――銀砂糖師。
　本作の主人公・アンは、そのなかでも腕のある銀砂糖師だった亡き母親のような存在を目指して奮闘していきます。
　しかし、そもそも銀砂糖師になるのは並大抵の努力では叶いません。
　ハイランド王国の首都・ルイストンで、王家が主催する１年に１度の品評会に参加して、最高位の王位勲章を授かるのが条件です。現在はたった２３人。極めて限られた狭き門……。
　それも、この国ならではです。冠婚葬祭、戴冠や成人のお祝いにおいても、砂糖菓子をもちいる文化だと言うのですから！
　「砂糖菓子がなければ、全ての儀式は始まらない」とされるうえに、銀砂糖菓子は食べることで幸福を招き、妖精が口にすると寿命が延びるとか。
　だからこそ、候補者たちは熾烈な戦いを繰り広げます。
　首都を目指すアンにもさまざまな試練が降りかかり、用心棒として雇った妖精・シャルの力を借りつつも、困難な道のりが繰り広げられますが……ぜひ、この先は本編で楽しんでくださいね！

小説「シュガーアップル・フェアリーテイル」シリーズ公式サイト

料理で胃袋わし掴み！？　男子高校生、異世界で主夫生活始めます！

　突然、異世界へ転移してしまった男子高校生の釘宮悠利。
　転移した際に鑑定系の最強技能（スキル）【神の瞳】を得ていたが、そんなことにはお構いなし！

　元々の料理の腕や細かい作業が好きということが高じてアジトの料理担当に収まり、
　周囲の人々の胃袋を掴んだり、異世界にないものを生産したりとチート能力の無駄使いオンパレード！
　色々やらかしては怒られつつも、まったり異世界ライフをエンジョイ中!!

　コロッケにサンドイッチ、手作りマヨネーズetc. 美味しいスローライフ開幕!!

　家事スキルの高い男子高校生・悠利が、チート能力を授かって異世界に転移してからの展開は、面白さが目白押し！
　ダンジョンの隠された罠を見抜いたり、異世界における伝説級の能力を人に知られてしまったり、ファンタジー世界ならではのわくわくドキドキする活躍もしっかり見所として盛り込まれた本作。けれど、一押しは彼の作る、いかにも美味しそうな料理です。
　冒険者たちを育成する機関≪真紅の山猫（スカーレット・リンクス）≫のキッチン――補給日直前のそこにあるのは、骨にこびりついて残った肉とささやかな余り野菜、そしてジャガイモと卵、牛乳。調味料は塩こしょうと醤油のみで――持ち前の料理の才能とチート能力のおかげで底上げされた悠利の腕がうなる！
　パン粉をすりおろすところから始まり、こそいだ肉や野菜を細かく刻み、骨はスープの出汁に活用！
　スムーズな手つきで悠利が作り上げた、揚げたてほくほくのコロッケと野菜かき揚げ、具だくさんのクリームスープは、≪真紅の山猫（スカーレット・リンクス）≫のメンバーでなくてもお腹がすいて次々口に放り込みたくなる描写です。
　同時に、こんな風に料理できるなら楽しいだろうなというワクワク感も伝わってくるシリーズ。ぜひ食事や料理する前に読んでみては？

小説「最強の鑑定士って誰のこと？」シリーズ公式サイト

ありがた～い神様の力を料理に全振り！？　空腹もお悩みもお任せください！

　中華風の異世界に迷い込み、後宮で暮らすことになった日本人の冬花(とうか)。瑞獣・白澤(はくたく)の巫女として、神様の力を借りられる【白澤図】を授かった彼女だったが、本人は大好きな料理に夢中で……。神様にハーブを育ててもらったり、炭酸水を出してもらったり、ありがたい力を料理に全振り！？

　美形の長官が持ち込むトラブルや後宮の権力闘争なんて何のその、梅クレープやフレンチマントウで神々や後宮の人々をメロメロにする、自由気ままなグルメ生活がスタート！

　世界三大料理に数えられる中華料理。だからこそ、冬花が迷い込んだ中華風の世界ならおいしい食事にもありつけそうですが、とはいえ食べ慣れた食事は恋しくなります。たとえば梅をつかったおいしい品々――梅干しや梅シロップ、甘酸っぱい梅ジャム――そんな、いかにも口の中に唾液があふれてきそうな食べ物の知識を使うだけで、冬花は百年以上も国中にかかっていた呪いを解くきっかけを作ってしまいます。
　さらに注目なのは、ある過去のため神が去った国としてあらゆる恩寵が失われた土地のはずなのに、冬花だけは強大な神の力を借り受けられるということ！　彼女に与えられた白澤図という書物も特別なアイテムですが、それは冬花だから使いこなせる品。
　料理好きで、食べ物に関する知識をもち、さらに無自覚に圧倒的な神の寵愛を受けている冬花が、さまざまな活躍を見せるシーンは必見です！

小説「白瑞宮のお料理番 ～異世界の神様と飯テロスローライフを満喫する～」シリーズ公式サイト

『週1で晩酌』の契約からはじまる、冷徹公爵とのおいしいスローライフ！

　教会の命令で冷徹公爵と契約結婚することになった転生者の聖女・ジゼル。彼女が結婚の条件に提示したのは、週に１回一緒に晩酌すること!?

　冷たい態度を取る公爵様と一緒に飲むうちに、彼の意外な一面を知り……。さらに串カツやおでん、唐揚げなどを振舞っていたら、公爵様だけでなく明るい侍女やクールな従者にも懐かれ、領地問題の解決まで!?

　前世グルメを楽しみつつ、公爵様や領民たちと楽しく過ごす、おいしく幸せな日々がスタート！

　「まず伝えておくが、これは契約結婚だ。君と交流を深めるつもりは毛頭ない」 　そんなセリフで始まる契約結婚と言ったらーー愛や恋のなかった二人が出会い、夫婦という形式からお互いを知り合って、惹かれあっていく……。そんな予感をさせるキーワードですが、本作の二人が始めるのは、まさかの晩酌！
　とてもユニークな関わり方で始まった二人の日常。さらにページをめくっていくと、冷徹公爵などと呼ばれているアベラルドの様々な面が見えてきます。
　それほどお酒には強くない様子。
　意外と使用人との距離が近いこと。
　領地に生きる民のために必死で、自ら瘴気の対策と調査に動くような人物。
　聖女を娶るために大金を払ったが、それは民のためだと血を吐くような思いで決めたこと。
　どれも可愛げがあって、おいしい晩酌をともにする相手として不足なし！　そして、そんな晩酌をささやかな息抜きとして、教会組織の助けもない中で、二人がどのように領地を立て直し、この世界の中で奮闘していくかも見どころです。

小説「聖女と公爵様の晩酌」シリーズ公式サイト

天ぷら、天津飯、オムライス！　ほっこりご飯で異世界トラブルを大解決！

　妹と愛犬と共に、家ごと異世界召喚されてしまった平凡ＯＬ・茜。そこで彼女は、次々やって来る珍客を料理でおもてなしするはめに！　王子に山の主、妖精まで。家庭料理で異世界住民たちを満足させられるのか――！？

　聖女ではなくて、聖女のついでに異世界に召喚されてしまったお姉ちゃんが本作の主人公です。
　けれど、その役割は重大！
　ホームシックになりそうな妹のためだけではなく、彼女たちの家を訪れる大物たちも、茜の手料理に大満足して変化していくのですから。
　舌触りのいいプリン、サクッとおいしい天ぷら、中華に和食と、茜のレパートリーは豊富でいかにも美味しそうなものばかり。料理していく手際もよく、読んでいて気持ちが良いほどです。
　そしてもう一つ、シリーズの見どころは茜とジェイドとのくっつきそうでくっつかない、絶妙に焦ったい距離感。食卓を一緒に囲む中で、彼らの関係は近づいていくようですが――？　どうなっていくか、ぜひ本編を読んで楽しんでみてくださいね。

小説「異世界おもてなしご飯」シリーズ

のんびり極楽キャンプのため前世知識をフル活用したら……やりすぎた！？

　王妃候補として馬車馬のように働いてきた元日本人、現公爵令嬢のアイシャは、突然婚約破棄を宣言されてしまう。しかし、彼女は逆に馬鹿王子を返品して自由を掴み、前世からの夢を叶えるべく、美味しい炙り肉とジョッキ片手にアウトドアを楽しむことにする。新しい魔道具（キャンプギア）を開発しては周囲を驚かせ、トラブルも前世知識で解決してキャンプ飯の食材確保！

　でもやりすぎて、各方面から目をつけられてしまい……のんびり極楽アウトドアライフの危機!?

　結婚前、婚約中でしかないというのに、さんざん王子のやるべき仕事を押しつけられて働かされて、そのあげくに「貴様のようなガサツで男を立てられないような人間は、僕に相応しくない」だって！？
　思わず読みながら声を上げて抗議したくなりますが、そんな婚約破棄こそが、本作の主人公・アイシャにとっては全力で趣味に生きるきっかけとなります。
　しかも、彼女のこだわりのキャンプの道具のすごいことといったら！
　公爵令嬢という立場と資産、異世界の魔法、前世の知識、そして惜しみない愛を注ぎ込んで作り上げられたアウトドア空間は、現代で言うところの「グランピング」！　いえ、グランピングなど超えた空間といえます。
　たとえば、熟練のドワーフが仕上げた１点もののアウトドアチェアは長時間座っても負担がなく、コカトリスの妖獣の羽毛をたっぷり使用した寝袋に、ランタンには炎の魔法石。……アウトドア好きではなくても使ってみたい品々です。
　そんな空間で楽しむ分厚いステーキや、こだわりのティータイムなんて、もう楽しくない訳がないですよね。
　とはいえ、王子の仕事を一人で処理しきれてしまうほど有能なアイシャ。趣味に精を出していても、誰もが放っておかなくて……。引っ張りだこの彼女の意図せぬ活躍も、ぜひ堪能してください！

小説「社畜令嬢だって異世界でキャンプがしたい！　馬鹿王子を婚約破棄した私の飯テロスローライフ」シリーズ公式サイト

聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました

「俺が喚んだのは【聖女】であって【ブタ】ではない!!」
　聖女召喚された莉奈が聴いたのはまさかの罵倒だった。おまけに王宮で出されるご飯も全然美味しくない！
　異世界への怒りが爆発した莉奈は、王宮の厨房を貸してもらい、せめて自分のご飯くらいは自分で作ると決意する。
　しかし莉奈の料理が美味しいとすぐさま王宮中で大評判！　美形な王族たちまで虜にしてしまう。莉奈の料理を皆が待ち望む王宮で、自由気ままな異世界ライフが幕を開ける！

　ちょっと！　ちょっと！！？　そう声を上げたくなるのも仕方ない始まりではありませんか？
　自分の意思を無視して異世界に召喚されたあげく、元の世界には還れない。さらに主人公の莉奈は罵倒されて、さらには食事もマズい。
　世界でも有数の食事にこだわる国民性をもつ日本人としては、最後のポイントもツラいポイントです。
　しかし、そこで莉奈が素晴らしいのは、あきらめて泣き寝入りするわけではなく、自分で料理するという意思を見せ、実現したところ！　現代を生きる我々からしても、作中で描写される、数時間かけて出汁をとったコンソメスープや、りんごから作った酵母で焼いたやわらかいパンはふんわりと口どけ良さそうで、ごくっとのどが鳴ります。
　そして、彼女が作る料理はこの異世界の王族を巻き込んで革命的な食事の変化をもたらすのですが……。
　ぜひその世界を変化させる活躍は、シリーズを追いかけてみてくださいね！

小説「聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました」シリーズ公式サイト

あやかしが経営する宿に「嫁入り」することになった女子大生の細腕奮闘記！

　祖父の借金のかたに、かくりよにある妖怪たちの宿「天神屋」へと連れてこられた女子大生・葵（あおい）。宿の大旦那である鬼への嫁入りを回避するため、彼女は得意の料理の腕前を武器に、働いて借金を返そうとするが……？

　現代日本からあやかし達の世界に連れ去られてしまった主人公・葵。
　彼女があやかし達のために作る料理シーンは、まるで目の前で調理してもらっているかのように、五感を刺激するような描写！　匂いやじゅうじゅうと音を立てて焼けていくお肉や魚の描写は、ついゴクンと唾液を飲み込んでしまうほど魅力的です。
　そして大旦那との関係性も見逃せません。
　葵を借金のカタとして「花嫁にする」と公言したかと思えば、それを拒否する葵を試すような素振りも。
　その実、陰ながら葵を見守っている様子には、ときめきを感じるとともに、なぜそこまで彼女でなければならないのか――というシリーズを通じた気になるポイントもあって……。
　おいしそうな料理に、二人の関係、あやかしたちの事情、そして葵が料理の腕だけを頼りに借金を返せるのかと、見所もりだくさんの作品です。

　アニメ『かくりよの宿飯 弐』の放送がいよいよスタートしました！
　小説1巻刊行から10周年の節目に、7年越しに待望の第2期が実現。
いかに多くの方に、長く愛されているシリーズなのかということが伝わると思います。

　アニメ第2期の1話では美しい秋の風景が堪能できます。いつもの面々が葵の料理を楽しんでいる様子だけでもう胸がいっぱいに……まるで旧友に再会できたようなうれしさがあります。
　各話の見どころは、なんといってもお料理と食事のシーン。ビーフシチューハンバーグの上で半熟目玉焼きの黄身がとろーっと流れ出したりなど、おいしそうなお料理描写はもちろん、食べているキャラクターたちの幸せそうな表情がたまりません。日頃の疲れが癒やされ、心が満たされること間違いなし！

　今こそ触れたい、あやかしファンタジーの金字塔的な作品です。小説・コミック・アニメ、ぜひお好きな形でお楽しみください。

小説「かくりよの宿飯」シリーズ公式サイト

■原作：友麻 碧
株式会社KADOKAWA／富士見L文庫「かくりよの宿飯」シリーズ

■キャラクター原案：Laruha

■監督：吉崎 譲

■シリーズ構成：金春智子

■キャラクターデザイナー：桂 英未

■オープニング主題歌　「とおりゃんせ」　東山奈央

■エンディング主題歌　「涙のレシピ」　東山奈央

■アニメーション制作：GONZO×マカリア

■製作：かくりよの宿飯 弐 製作委員会

■キャスト
津場木葵：東山奈央　／　大旦那：小西克幸　／　銀次：土岐隼一　／　暁：内田雄馬　／　お涼：加隈亜衣　／　白夜：田丸篤志　／　春日：中恵光城　／　サスケ：井上雄貴　／　静奈：上田麗奈　／　乱丸：石川界人　／　葉鳥：寺島拓篤　／　チビ：石見舞菜香　／　津場木史郎：井上和彦


アニメ「かくりよの宿飯」２期公式サイト

■テレビアニメ１期「かくりよの宿飯」は各配信サイトで好評配信中！

アニメ「かくりよの宿飯」１期公式サイト

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