第10回 角川文庫キャラクター小説大賞 受賞作特集

第10回 角川文庫キャラクター小説大賞の受賞作が、2025年9月より3か月連続刊行されます。
過去に澤村御影先生の「憧れの作家は人間じゃありませんでした」シリーズや小野はるか先生の「後宮の検屍女官」シリーズなどを世に送り出した本コンテスト。
注目の最新受賞作3作品を選評と受賞コメントとともにご紹介いたします。
また、2025年9月現在募集中の第12回 角川文庫キャラクター大賞の情報や、過去の書籍化された受賞作品も要チェックです。 注目の受賞作の発売をお見逃しなく!
第10回 角川文庫キャラクター小説大賞 受賞作
大賞
《澤村御影先生 選評》
「斜陽国の奇皇后」は、文章力・ストーリーテリング共に優れており、小説として純粋に楽しめました。各キャラクターも魅力的で、主人公の夢珠の仕事ぶりや、ライバルにあたる九歌との勝負は、とても面白かったです。毒殺未遂事件の真相も興味深く、その顛末もきちんと納得のいく形になっており、迷いなく大賞に推せる作品でした。ただ、百合的要素については、無理に入れ込む必要はないんじゃないかなという気も……コメディ要素としては楽しく読みましたが、婚儀の場で夢珠が五娘を見て恋に落ちるシーンや、ラストで九歌が夢珠に対してグイグイくるシーンには、やや唐突感を覚えました。要素的に角川文庫の読者層に馴染むかどうかというのも、ちょっと悩みどころかと。とはいえ、そこが作者としてのこだわりポイントであるならば、別にこのままでもいいと思います。創作には、そういうこだわりも大事といえば大事です(でも、担当さんとは一度話し合ってくださいね)。
《望月麻衣先生 選評》
イキイキとした主人公の言動と、ユーモラスな語り口調で軽快に展開していく物語がとても楽しく、最後までページをめくる手が止まりませんでした。「上手い作品」はこの世にたくさんありますが、「面白い」「もっと読みたい」と思わせる作品となると、そう多くはない。
「斜陽国の奇皇后」は審査を忘れて楽しませていただき、もっと読みたいと感じた作品で、結果は文句なしで満場一致の大賞でした。
《受賞の言葉》
この度は大賞という輝かしい賞をいただき、大変光栄に思っております。選考委員の澤村御影先生、望月麻衣先生、並びに角川文庫キャラクター文芸編集部の皆様には心より感謝申し上げます。創作活動を支えてくれている家族にも、ありがとうの気持ちでいっぱいです。
今回、選考に残っていると初めて知ったのは二次選考の時でした(勘違いで一次選考発表を見落としていた)。本当にびっくりしました。その後はまな板の鯉状態で最終選考会まで過ごしたのですが、毎日賞のことばかり考えてしまうし、想像しすぎて悪夢まで見るし……正直生きた心地がしませんでした。なので受賞を知った瞬間は驚きと感激のあまり「え? え? え? え?」しか言えず、さらに半泣き状態にもなり、見事あやしい人間ができあがりました。きっと傍から見た姿は異様だったと思います。
受賞作「斜陽国の奇皇后」は、ちょっと風変わりな主人公が、滅亡寸前の国を建て直すために皇后となり奮闘するお話です。中華ファンタジーが大好きなので、宮廷・後宮の独特な面白さ(女同士のあれこれとか、事件とか)が伝えられたらいいな、と思いながら書きました。少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
まだまだ未熟な書き手ですが、皆さんに手に取って貰える作品をたくさん創り出せるよう、全力で取り組んでまいりますので、よろしくお願いいたします。
最後となりましたが、あらためて感謝を申し上げます。
ありがとうございました。
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優秀賞&読者賞
《澤村御影先生 選評》
優秀賞&読者賞となった「平安後宮の鬼食い姫-光の君と黒弾正」は、王道を押さえた作品。平安時代の風俗描写には少々首をかしげる点もありましたが、テンポよく事件が起こり、読者を飽きさせない工夫がされていました。でも、全般的にあっさりしすぎていて、黒弾正と明乃の交流シーンにはもう少し深みが欲しいなという気がしましたし、明乃が黒弾正の正体に気づくくだりももっと描写が欲しいと思いました。もだもだ感や気づきの描写を入れて心情を盛り上げれば、キャラクターの魅力がさらにアップするはず!
《望月麻衣先生 選評》
候補作の中で、真っ先に手に取ったのはこちらの作品です。平安後宮を舞台にしていること、そこで鬼食いと呼ばれる姫がいて活躍するらしい。そんな内容がタイトルから伝わってきて、「読みたい」と思わされました。これは素晴らしいことです。
設定・世界観共に申し分なく、キャラクターも魅力的。ただ、事件の結末の予想がついてしまうという点が少しもったいなかったなと感じました。この辺りは編集者のアドバイスでさらに磨かれるのではないでしょうか。書籍となるのが楽しみです。
《受賞の言葉》
十回目という節目の年に名誉ある賞を賜り、大変光栄です。
応募したのは平安時代の後宮が舞台のお話です。
プロットを立てるときにいくつか資料を読んだところ『更級日記』の作者である菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)のこんな言葉が目に留まりました。
「はしるはしるわづかに見つつ、心も得ず、心もとなく思ふ源氏を、一の巻よりして、人もまじらず几帳の内にうち伏して、引き出でつつ見る心地、后の位も何にかはせむ」
菅原孝標女は、紫式部が残した世界的名作『源氏物語』の熱狂的なファンだったそうで。
引用の箇所を私流に訳すなら「待ち望んでいた本を手に入れて嬉しい! 帝から后にしてあげると言われても、今はスルーしちゃう。誰にも邪魔されずに源氏物語の世界に浸る方が尊いわ~」という感じでしょうか。
すばらしいお話と出会ってワクワクする気持ちは、千年も昔から変わらないのだなぁとしみじみ思います。
私の作品を選んでくださった選考委員の先生方、読者賞の審査員のみなさまに厚く御礼申し上げます。
『源氏物語』を手にした菅原孝標女が感じたようなときめきを多くの方々に届けられるよう、今後とも精いっぱい頑張ります。
このたびは本当にありがとうございました。
メクリメクルでの読書感想文レビューもお楽しみに
カクヨムテーマ賞(溺愛×異能)

『皇帝陛下の禍祓士 堕ちた後宮』カバーイラスト
著:柊
イラスト:syo5
角川文庫キャラクター文芸
《澤村御影先生 選評》
「妖血の禍祓士は皇帝陛下の毒婦となりて」は、黒い霞とそれを喰う蟲、そしてそれを指で巻き取るヒロイン流麗のビジュアルイメージは大変良かったと思います。しかし、言葉の誤用や文章上の難が目立ちました。設定やキャラクターを使いこなせていない部分も多く、こちらもまた色々と勿体ない作品でした。
《望月麻衣先生 選評》
作品の舞台やキャラクターの心情をとても丁寧につづっており、皇帝の苦悩や、禍祓士の女性の想い、さらに作品に対する強い想いも伝わってきました。しかしその一方で、テンポが悪く感じられたのもたしかです。書き込まれた部分をもう少しブラッシュアップすることで、読みやすさと、文体の美しさがさらに際立ってくるのではないかと思いました。
《受賞の言葉》
この度は、カクヨムテーマ賞を賜りまして、心より感謝申し上げます。
今回受賞しました、「妖血の禍祓士は皇帝陛下の毒婦となりて」は、中華ファンタジーが書きたいという思いを込めた一作となっております。私が中華ファンタジーに魅了されたきっかけは、中学一年生頃に、『封神演義』に出会ったことでしょうか。漫画も好きだったのですが、学校の図書室にあった原作にずぶずぶとはまっていました。中華ファンタジーという世界、神話の登場人物達に魅了され、いつか、自分もこんな話が書きたいと思いました。ですが、実を言うと本格的に書き始めたのは、三年ほど前です。若かりし頃は、書きたい思いだけで全く書けず、まともな話一本どころか、千文字にも至らなかったと思います。結局、二十歳の頃には創作を辞めてしまいました。しかし、WEB小説界隈が活発になったこともあり、もう一度筆をとり物語を綴ってみようと思い至った次第です。
そんな、夢を追いかけた本作が受賞とあって、感無量でございます。
本作の主人公、姚流麗は、剣を持ち悪鬼に立ち向かう強い女性です。剣を持ちながらも、恋をしたり、好きな男性の前では淑やかさを見せたりと、様々な姿を見せる女性。そんな強く逞しくも美しい女性の姿と中華ファンタジーを併せた世界を、多くの人に楽しんで貰えたらと思います。
メクリメクルでの読書感想文レビューもお楽しみに
第12回 角川文庫キャラクター小説大賞のご案内
角川文庫キャラクター小説大賞とは角川文庫キャラクター文芸編集部による新人賞です。
角川文庫キャラクター文芸は、一般文芸レーベル「角川文庫」の中で、魅力的なキャラクターが活躍するエンタメ小説を世に送り出してきました。
ミステリ、ファンタジー、ホラー、SF、あやかし、青春、恋愛、お仕事小説、感動の人間ドラマなど、あらゆるジャンルを横断する、優れたエンタテインメント作品の数々。そこに共通するのは、魅力的なキャラクターと舞台設定です。この物語の先で、このキャラクターに再会したい。そんな風に思えるような作品に出会いたいと思っています。
そして、次代のエンタメを担うあなたに出会えることを期待しています!
■対象
魅力的なキャラクターが活躍する、エンタテインメント小説。
ジャンル不問。ただし、日本語で書かれた商業的に未発表のオリジナル作品に限ります。
■賞/賞金
大賞:100万円
優秀賞:30万円
奨励賞:20万円
WEB読者賞:10万円
カクヨムテーマ賞:10万円(*『カクヨム』からの応募作品のみ)
※該当作品が選出されない場合もあります。
※大賞受賞作品は、株式会社KADOKAWA(以下「弊社」といいます)より出版される予定です。
※大賞以外の受賞作品も、弊社より書籍として出版されることがあります。
※カクヨムテーマ賞については、他の賞との同時受賞の可能性があります。
※賞金は、消費税込の金額であり、また、別途源泉所得税が徴収される場合があります。
■選考委員
篠原悠希(作家)/白川紺子(作家)【五十音順】/角川文庫キャラクター文芸編集部
■新選考委員紹介

作家。代表作に「金椛国春秋」シリーズ、「金椛国駿風」シリーズ(ともに角川文庫)など、著作多数。
SNSアカウント https://x.com/persian_pardeis
どのようなエンタメジャンルでも歓迎です。魅力的なキャラクターが彼らの生きる独自の世界に読み手を引き込んで、ともに悩んだり、泣いたり、ドキドキしたり、憤慨したり、喜んだり、あるいは大活躍もしたりして。時間を忘れて楽しめ、作者の大好きが伝わってくる、そんな素敵な物語をお待ちしています。

作家。代表作に「後宮の烏」シリーズ(集英社オレンジ文庫)、「烏衣の華」シリーズ(角川文庫)など、著作多数。
SNSアカウント https://x.com/koukoshirakawa
「このキャラクターたちの物語をもっと読みたい!」「読んでいたらとまらなくなって夜ふかししていた」「この作品の世界観にずっと浸っていたい」子供の頃からそんなふうに小説の世界に没頭してきました。夢中になれる物語の持つ力はすごいものです。新たな傑作が世に出る一助になれたら幸いです。
■詳細はこちらをチェック!
https://kadobun.jp/awards/character-novels/#entry
過去の受賞作品
第9回 角川文庫キャラクター小説大賞 優秀賞&読者賞
第8回 角川文庫キャラクター小説大賞 大賞&読者賞
第6回 角川文庫キャラクター小説大賞 大賞&読者賞
第6回 角川文庫キャラクター小説大賞 奨励賞
第5回 角川文庫キャラクター小説大賞 優秀賞
第4回 角川文庫キャラクター小説大賞 優秀賞
第2回 角川文庫キャラクター小説大賞 大賞
- 角川文庫キャラクター文芸