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2025年完結『伝説の勇者の伝説』シリーズ著者・鏡貴也&イラストレーター・とよた瑣織、最後のぶっちゃけスペシャル座談会‼(3)

ファンタジア文庫
ファンタジア文庫
2025/10/31
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 「この原稿は面白いから絶対、龍皇になる」――。
 担当編集の予言通り、ドラゴンマガジンの誌上企画・龍皇杯で読者投票を勝ち上がり、ファンタジア文庫を代表する作品となった『伝説の勇者の伝説』。無気力なのに能力はチート級という、脱力系主人公の走りとなったライナ・リュートは、タイトルが示すように、24年もの間読者に愛され続けるという伝説を打ち立てた。
 その生みの親である著者・鏡貴也と、イラストレーター・とよた瑣織は、最終巻に至るまで、どんな想いで『伝勇伝』と向き合ってきたのか――。
 完結後だからこそ言える裏話満載で、スペシャル座談会をお届けします!

〇龍皇杯とは
月刊ドラゴンマガジン誌上で大人気だった読者参加型企画『龍皇杯』。
編集部コンペで選りすぐられた5~6本の短編の中から、読者投票で連載作を決定するというこの戦いには非情なルールがあった。連載作=龍皇になれなかった作品は、そのまま封印されてしまうというのだ。先を読みたい! と思った作品は読者が1票を投じ、龍皇にするしか救う方法がない――。そんなガチな闘いをくぐり抜け、圧倒的な読者の支持とともに第四代龍皇として『伝勇伝』は歩み始めたのである。

著者・鏡貴也&イラストレーター・とよた瑣織のスペシャル座談会③


3代目Kの「ありえない!」担当時代


K:私は『大伝説の勇者の伝説』が始まった時から、アニメ化が決まる頃くらいまで担当させて頂いたんですが、色々ありすぎました。(笑)さっき話に出ましたけど、連載と書き下ろし文庫と、とにかく分量が多い! しかも編集長からは「『伝勇伝』をやりながら、アニメ化できる新作を立ち上げろ」というオーダーもあって……。

:結果、『伝勇伝』と『いつか天魔の黒ウサギ』を交互に出す6か月連続刊行したりしたよね。ちょっと普通じゃないよね!(笑)。

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©️鏡貴也・榎宮祐

K:6か月連続刊行は、確かに普通じゃなかった。(笑)。鏡さんの原稿UPのスピードも尋常じゃないですが、とよたさんがあの物量をあのスピードとクオリティで上げて下さらなかったら絶対に無理でした。
でも、振り返ると『伝勇伝』の現場って今考えると「ありえない!」ことが多かったですよ。『悪魔王、降臨』しなかった問題とか。

:そういうこともあったね!

K:『大伝勇伝5』刊行の時に、原稿は全体の3分の1くらいしかない段階で、営業から「流通に必要だからサブタイトルを決めてもらわないと困る」と連絡があって。鏡さんに相談したら「悪魔王、降臨で!」というじゃないですか。「鏡さん、原稿ないけど大丈夫? 悪魔王、この巻で降臨するの?」「Kさん、俺が今まで嘘ついたことある?」という会話を経て、『悪魔王、降臨』で世に出したワケです。で、結果、この巻で悪魔王は降臨しなかった。

とよた:(笑)

:そういうKさんも、僕にありえないくらい書店さん特典用のショートショート書かせたよね⁉

K:そういうこともありましたね……! あの時くらいかな、鏡さんに怒られたの。

:だって月に10本とか書いたよ、書店さんごとに全部内容変えて。

とよた:10本⁉ それは多いかも。

K:普通は新作とか新刊が出る時に合わせて、月に1本頂いたりするものなんですよ。でもアニメ化が発表されたり6か月連続刊行のおかげで、書店さんがフェアを組んでくださて店頭での展開が多かったんです。だから特典を付ける機会もいっぱいあったんですね。あの頃はメディアミックスも走り始めて、鏡さんは判断することが多すぎたので、書店さんから依頼があったら、私の判断で受けるかどうか決めていいと一任してもらってたんです。受けた方がいいと思ったら、引き受けていいからって。で、結果『いつ天』も含めて10本とか書いて頂くことに……。

:編集者として断る判断はなかったの⁉(笑)

K:書店さんで厚めに展開して頂けるなら、やった方がいい一択でした。(笑)でも、今考えるととんでもないですね。若かったから突っ走れた判断でした。結果的に鏡さんもそのオーダーに応えて頂いてますし、とにかくあらゆる意味でありえないことが起こっていかたもしれません。(笑)

とよた:そんなにショートショートあるなら、纏めて読んでみたいな。原稿は残ってないの?

:忙しすぎてデスクトップで書いては送って、次の原稿! って感じだったからなぁ。もう、ちゃんとは残ってないかも。

K:公開される機会があれば、プレミアものです。ショートショートも鏡さん全力投球で、いろんなネタで楽しく仕上げて頂いてましたから。


24年間の、あたたかい応援に向けて


K:『伝勇伝』は完結まで24年というラノベの中でも類を見ない大河小説になりました。とよたさん、改めて最終巻を読まれていかがでしたか。

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©️鏡貴也・とよた瑣織

とよた:17巻から18巻まですごく時間がかかって、正直どう完結するのかなって思ったこともあったんですけど。(笑)
でも、最終巻の原稿を頂いて読んだら、すごい。すごいよかったんです。やっぱり鏡さんの中で、落ち着くところに落ち着いたというか。細かいことをいうと、あのキャラはどうなったとか、あの設定ってどうなったのとかあるかもしれないけど、そういうことを全部ぶっ飛ばしてあのエンディングがすごくよかった。

:やった!

とよた:うん、すごい。鏡さんが書きたかったのがわかったよ。

:僕もね、18巻のイラスト驚いた。だってシーンのチョイスが完璧だったんだよね。

とよた:あれね、私がイラスト指定させてもらいました。

:あ、そうなんだ! あー、納得した。だって、ネタバレもせず欲しいところが描いてあるんだもん。

とよた:もうね、私がね、読者の気持ちで「ここ! ここに欲しいの!」っていうシーンを描きました。やりきった!(笑)

K:ちゃんと完結して、嬉しかった読者さんは多かったと思います。『伝勇伝』が青春の一部だった私も、そのひとりです。鏡さん、とよたさん、ありがとうございました!
最後になりますが、お2人とって『伝勇伝』はどんな作品だったのかと、読者のみなさんへのメッセージをお願いできればと思います。

とよた:私にとっては、初めて長期連載を前提にしたキャラデザをさせて頂いたのがライナでした。初めて担当したシリーズで、大好きで、そのキャラクターを24年も描かせてもらえたのは、とても幸せなことだと思います。
刊行の間が空いていた時期とかも、折に触れて思い出して、もうライナたちが親戚の子みたいな感じで。みんな元気でやってるかしら、って思ったり。なんていうんだろう、仕事というだけじゃない、人生の一部になっていました。
繰り返しになってしまうんですが、私、『伝勇伝』が大好きで、読者代表みたいな気持ちで描かせて頂いていた部分もありました。それも含めて丸ごと読者の方が受け入れてくださっていたのも、すごく感謝しています。
読んでくださったみなさん、本当にありがとうございました!

:『伝勇伝』は20代前半に書き始めた僕の出世作で、代表作で、日記でもあったなと思います。なんでかというとライナは僕の分身で、だから僕が生きる意味を見つけるまでのお話を、みなさんに「大丈夫? 大丈夫!」ってはげましてもらいながら一緒に走って頂いた感じがします。本当にありがたいです。
長編1巻目のラストでライナが2年間閉じ込められるんですけど、あれは僕の境遇と重なるところがあります。閉じ込められてたせいもあって、みんな親や世界が幸せになれるものだと期待して人生を始めると思うのですが、それが裏切られ、さらに自分も人を傷つけてしまう。この世界に生きている意味なんてないんじゃないか?自分は邪魔なんじゃないか?大切な人を守ることなんて自分には出来ないんじゃないか?みたいな挫折気味の臆病な精神性の主人公が、ネガティブなところから成長していく。それがライナと僕の話でした。だから、ライナって奴がどんなことをどう感じて、どんなことを思っているのかが伝わる文章にしようと、そこを大事に書いていました。
『大伝勇伝』の17巻から18巻まで7年もかかったのは、振り返ってみれば、僕の心に準備が必要だったからかもしれません。
現実でもそうだけど、例えばバットエンドと思えることが起こったとする。でもそれをバットエンドととらえるかは考え方次第というところもある。ライナの、僕の世界のとらえ方はこういう風で、思い通りにならないことだらけだけど、それでも大事な人がいるから頑張るぞ! 逃げないでやるぞ! という決意表明を嘘じゃなくできるようになるまで、時間がかかったんだと思います。
でも、最後にライナが頑張るぞ!と宣言したからには、僕のこれからの人生もそうやって生きていきたいよね、って思っています。 ずっと応援して頂いて、本当にありがとうございました!




『伝勇伝』シリーズ完結記念特集はこちら





作品詳細はこちらから!

鏡貴也 (著者) / とよた瑣織 (イラストレーター)
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鏡貴也 (著者) / とよた瑣織 (イラスト)
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