2025年完結『伝説の勇者の伝説』シリーズ著者・鏡貴也&イラストレーター・とよた瑣織、最後のぶっちゃけスペシャル座談会‼(2)
担当編集の予言通り、ドラゴンマガジンの誌上企画・龍皇杯で読者投票を勝ち上がり、ファンタジア文庫を代表する作品となった『伝説の勇者の伝説』。無気力なのに能力はチート級という、脱力系主人公の走りとなったライナ・リュートは、タイトルが示すように、24年もの間読者に愛され続けるという伝説を打ち立てた。
その生みの親である著者・鏡貴也と、イラストレーター・とよた瑣織は、最終巻に至るまで、どんな想いで『伝勇伝』と向き合ってきたのか――。
完結後だからこそ言える裏話満載で、スペシャル座談会をお届けします!
〇龍皇杯とは
月刊ドラゴンマガジン誌上で大人気だった読者参加型企画『龍皇杯』。
編集部コンペで選りすぐられた5~6本の短編の中から、読者投票で連載作を決定するというこの戦いには非情なルールがあった。連載作=龍皇になれなかった作品は、そのまま封印されてしまうというのだ。先を読みたい! と思った作品は読者が1票を投じ、龍皇にするしか救う方法がない――。そんなガチな闘いをくぐり抜け、圧倒的な読者の支持とともに第四代龍皇として『伝勇伝』は歩み始めたのである。
著者・鏡貴也&イラストレーター・とよた瑣織のスペシャル座談会②
プロの仕事をするということ
K:キャラクターデザインは竜皇杯の原稿からおこされたんですよね。
とよた:はい。短編だとライナは後方から魔法でサポートする研究職的な子だったんですよ。それで戦えなさそうな服のデザインにして、研究職っぽい緑をチョイスして。だから長編を読んで驚きました。ライナ、バリバリ戦ってるじゃん。(笑)
鏡:だって、ライナは俺の中で戦える子だと思ってないし。(笑)
K:鏡さんはキャラデザのチェックはなさったんですか?
鏡:Mさんに見せてもらう時に「意見言ってもいいけど、反対の耳から聞き流すから」って。(笑)。でも、何も言わなくてもとよたさんのキャラは、誰にも似ていなくて、斬新で、すごくよかったです。
とよた:ええ~、ほんとかな!(笑)。でも実際、リテイクはほどんどなかったですね。だからというか、デザインを出す時に自分でちゃんと考えておかないと後々大変なことになるな、と。著者さんも、編集さんも、誰も突っ込んでくれないから。(笑)
鏡:ああ、でもMさんの考え方として、「小説は小説で、イラストはイラストでそれぞれ責任をもってプロの仕事しろ」的なことが基本にあった気がします。
極端な例えですけど、めちゃめちゃいい挿絵が上がってきたとします。もうほんとにキャラの魅力が伝わりまくりで、これを見たら作品好きになっちゃうよ絶対!みたいな1枚があるとします。でも小説では剣を持っているのに、イラストでは弓を持っているんです。つまり描写と違っちゃっている。でもイラストがめちゃめちゃカッコよければ、小説がめちゃめちゃ面白ければ、剣でも弓でも読者は楽しんで読むでしょ、と。だから小説家はイラストのチェックする時間があったら、小説を面白くするのに時間をかけないさい、と。そういう意味で最初に「イラストには口を出すな」と教わったかもしれません。お互いにプロの仕事をしましょう、っていう職域分離の意味でね。
とよた:でも複写眼とか、魔法陣とかの設定はもっと考えておいてくれてもよかったと思う! 発動するとどういうビジュアルになってるのかとか!
鏡:『伝勇伝』のビジュアルはとよたさんが世界で一番詳しいぜ。僕よりも詳しいぜ! それは間違いない。(笑)
K:と~っても自由度が高い中で、とよたさんもご苦労があったのではないでしょうか?(笑)
とよた:(笑)でも、真面目な話をすると『伝勇伝』に関しては、お話もキャラも、とにかく作品が好きだったので、お仕事というより好きなことをさせて頂いている感覚が大きくて。毎回、原稿を頂いたら読んで「あ~、面白かった! イラストにおこすのはどのシーンかな」ってワクワクしながら描かせて頂いてました。
月刊誌! 季刊誌! 文庫! 怒涛の締め切りラッシュ‼
K:鏡さん、一番忙しい時期は締め切りどのくらいありましたっけ? 月刊時代のドラゴンマガジンで連載があって、季刊誌のファンタジアバトルロイヤル(※ドラゴンマガジン増刊号)にも『武官弁護士エル・ウィン』の連載をして、書下ろし文庫を2~3か月に1冊出す……いっぱいですね。(笑)
鏡:そうですね。いっつも「やっべえ!」っていいながら原稿書いてました。どれくらいやっべえかというと、胃腸炎で病院に運び込まれて点滴打たれながらベッドで原稿書いて、お医者さんに「もうやめた方がいいですよ」と言われても、「原稿が…原稿が…!」っていいながらキーボード叩いていたっていう。……昔の話ですけどね。(笑)
もう、連載やって書下ろしやってたら1年が過ぎていく感じでした。とよたさんもそうだよね?
とよた:本当にそう! 姉がドラゴンマガジン編集部でアルバイトしてた時期があって、手描きの時代は姉が出勤する時に原稿を持っていってもらったりしてたなぁ。
しかも連載だけじゃなくて、ドラゴンマガジンで特集があったら、カラーイラストの描き下ろしがあったし。
K:当時は特集のコンセプトにあわせて、イラストの描き下ろしを毎月発注するという贅沢な時代でした。とよたさん、中でも印象に残っている特集とかありますか?
とよた:特集とはちょっと違うかもしれませんが、私のチョイスで『伝勇伝』の好きなシーンをカラーイラストで描き下ろしするという連載コラムみたいなのがあって。自分のイラストがドラゴンマガジンに載ることにも憧れがあったので、定期的に載せて頂けたことも含めて嬉しかったし、楽しかったです。
K:ありましたね! 文字コメントも頂いて……ああ、ページタイトルが思い出せない……。言い訳ですが『伝勇伝』はすごくたくさん描きおろしを頂いたので、正直記憶が飽和状態だったりはします。でも、その中でも自分が担当した連載50回記念特集が、個人的には忘れられないです。50回にちなんで、今まで連載に出てきたキャラを50体描いて頂いたので。
鏡:コスパとかいう概念はない世界だよね、それ!
K:だって見たいじゃないですか! あと、とよたさんだから、盛りだくさんで発注してました。文庫も連載も、とよたさんの速さとクオリティに支えられてので!
とよた:Kさんの発注は、キャラ人数多いことが多かった気がする。(笑)
K:すみません……。とよたさんとは4コマ単行本『なんとなく伝説の勇者の伝説』の担当もさせて頂いて、私からはいろいろ無茶ぶりした記憶しかないです。(笑)
4コマといえば、イラストレーターさんが4コマを描くというのも珍しかったと思うのですが、最初はどうやって始まったんですか?
とよた:たぶんドラゴンマガジンの特集の時に、ページのはじっこに載せる用にカラーで1本描いたりしてたのが最初ですね。それからバトルロイヤルの編集長さんに「ページあげるから4コマ描く?」って声をかけて頂いて。単行本にまとまるくらい、連載させて頂きました。
K:当時私は作品担当ではなく、4コマだけの担当だったんですけど、ネームってMさんチェックでしたよね。鏡さん、チェックしてました?
鏡:雑誌に載ったり、単行本になった時に読んでました。で、あー、面白い!って。(笑)
K:個人的には理想の関係だと思うんですよ。イラストレーターさんが作品に愛と理解があって、編集担当チェックのみで、著者さんも満足いく仕上がりになる。めちゃくちゃ信用と信頼の座組。あやかりたい! とよたさんは4コマのネタ出し、大変だったと思いますが。(笑)
深夜のイベントと、今明かされるサイン会の秘密
K:コミカライズ、アニメ化などメディアミックスも多かったと思います。
鏡:たくさんコミカライズして頂いて、みんな面白かったです! ほんとにそれしか言うことないです。
とよた:ほんとにそうだと思います。個人的には特に『学園伝勇伝』の続きが読みたいです!
K:アニメ関連だと、池袋駅に掲出された完結広告に声優さんたちがコメントを寄せられていたのが、胸熱でした。
鏡:ねー! 編集部がコメントとってくれたのもすごいけど、ライナ役・福山潤さん、シオン役・小野大輔さん、フェリス役・高垣彩陽さんが、熱い内容を書いてくれたのも嬉しかったです。
とよた:ほんとにすごいよねぇ、有難いよね。
鏡:アニメといえば、リアルで集まって放送初回を見ようってイベントあったよね。
とよた:あった、あった!
K:私もお手伝いに行きました。深夜だったから、成年限定イベントで。確か、とよたさんはお子さんがお生まれになったばかりで、ご自宅でご覧になってましたよね。
とよた:ほんとは現地に行きたかった!
鏡:アニメ化までが長かったから、読者さんの盛り上がりもすごくて。深夜1時とかだったけど、イベントに来られなかった人もリアルタイムで見て、当時始まったばっかりのTwitterとかで感想つぶやいてくれていて、めちゃ熱かった。
K:『伝勇伝』は、ほんとに読者さんの作品愛が強かったと思います。サイン会も、毎回すごく熱心に読者さんが集まってくださって、編集部としても有難かったです。鏡さんだけでなく、とよたさんとお2人そろってのサイン会もありましたよね。
鏡:何回かやらせて頂きました。
とよた:実は鏡さんの一番最初のサイン会、私は読者として参加してるんです。
鏡:えー⁉ あの新宿紀伊国屋さんのやつ?
とよた:整理券もらって普通の読者としてこっそり並んだので、その時のサイン本持ってます。
K:読者さん側に並ばないでください!(笑)
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