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新しいものに取り組む上で恥ずかしさがあることって、すごく楽しいこと。ハライチ・岩井勇気の「新たなチャレンジ」とは?【あなたの #チャレ活】

2025/08/04
新しいものに取り組む上で恥ずかしさがあることって、すごく楽しいこと【ハライチ・岩井勇気】
 漫才師、TVタレント、そしてエッセイストとして大活躍中のハライチ・岩井勇気さん。漫画・アニメに対する造詣も深く、そうしたエンタメ・カルチャーにまつわる仕事も数多く担っていらっしゃいます。岩井さんの現在のカルチャーへの向き合い方から、そこに紐づいた新しいチャレンジまで幅広く語っていただきました。

凝った作りをしているアニメに惹かれる

──岩井さんといえば、無類のアニメ好きで知られています。新作アニメはすべてチェックしているとか。

岩井勇気(以下、岩井):すべて観ていますね。全アニメを3話まではチェックして、それから視聴を継続するかどうかを決めます。春クールで好きだったのは『ざつ旅-That's Journey-』と『前橋ウィッチーズ』。冬クールだと『メダリスト』『リゼロ(Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season 反撃編)』も面白かったですね。

──アニメから入った作品で原作の漫画や小説に遡ることもありますか?

岩井:あります。1期で気になる終わり方をしていて、“これは2期もあるな”と思う作品は、先の展開が我慢できなくて読んじゃいますね(笑)。

──岩井さんはアニメのどの部分に惹かれますか?

岩井:映像表現を重視しているかもしれないですね。絵がキレイとかではなくて、アニメーションとして凝った作りをしているものに惹かれるというか。別に、作画の枚数が少ないアニメでも良いんです。この前、映画館で『無名の人生』という、監督が原案や作画までひとりで手掛けたアニメを観に行ったのですが、ものすごく絵が動くわけではないけれど、“絵を何枚も描いて連続で見せる”というアニメーションの原点みたいなものが感じられて、すごく良かったですね。

ボケにファンタジーを入れるのが好き

──そもそも、漫画・アニメ好きを仕事にしようとしたのは、いつからですか?

岩井:25歳くらいの頃に、新宿のアニメバーに同期の構成作家と飲みに行ったことがあって。そこはいろんなアニメのオープニングが連続で流れるような環境だったのですが、どんなアニメか、曲がかかるたびに大体説明できたんですよ(笑)。その作家もアニメの仕事をしていたから、そこで誘われてニコ生で番組『ハライチ岩井勇気のアニ番』を始めた流れでした。それから毎クール、全アニメをチェックする生活がスタートして。

──それが全然苦じゃなかったと。

岩井:観ていてしんどい、つまらないというものはあまりないですね。むしろ、実写のドラマだとそれがある(笑)。

──ちなみに、近年で一番ハマったアニメは?

岩井:すごくワクワクしたのは『Sonny Boy‐サニーボーイ‐』ですね。親が寝静まったあと、ひとりで夜ふかしして、こそこそアニメを観ていたときのような深夜アニメの気配がある。内容はわからないところもあるけれど、確固たる世界が感じられて、作品に没入できたんです。

──自分だけの世界に入り込めたと。

岩井:“あれ、このアニメって世界で僕にだけ発信されてる?”と思えるくらいに。そういう懐かしくも不思議な雰囲気を思い出させてくれた作品でしたね。

──それだけ長い間、アニメや漫画に触れてきたことが、今の芸人としての仕事に活かされているな、と思う部分はありますか?

岩井:ひとつはボケ方、かもしれませんね。ボケにファンタジーを入れるのが好きなんですよ。この前も漫才で、異世界を舞台にしたネタをやりました。

──それはどれくらいマニアックにやるのでしょうか?

岩井:僕は二次元もファンタジーも好きですけど、好きじゃない人やそこまで詳しくない一般人の感覚も持ち合わせているつもりなんです。“どこまでわかってくれるかな?”というギリギリを突くのが楽しい。やりすぎたら醒めるし、ベタすぎても面白くはならない。例えばジブリを題材にするとしても、『コクリコ坂から』や『猫の恩返し』であれば、パッと内容まで思い出せる人は減る。そのあたりをネタにすると面白いなと。

岩井勇気

漫才がうまくなることより、今までなかったものを提案したい

――ここからは岩井さんの新しいチャレンジを聞いていきたいのですが、最近、始めた趣味などはありますか?

岩井:バーに通うのにハマっています。完全に、去年放送されたアニメ『バーテンダー 神のグラス』の影響ですけど(笑)。今、通っている店のバーテンダーがすごく良い感じの人なのと、バーもいろんなところにあって、旅行先でも行けるのが良い。

――バーのどういった部分に惹かれましたか?

岩井:めちゃくちゃ酒が好きというわけではないのですが、自分の好みのお酒が飲めるのがひとつ。あと、よく通っているバーは、BGMがなくて無音という。

――珍しいですね。

岩井:そのお店ではバーテンダーや他のお客さんと話すこともありますし、他のお客の会話がなんとなく聞こえてくる。それがラジオみたいでまた良い(笑)。この前も、ベロベロに酔っ払っているサラリーマンが大きな声で人事の話をし始めて。詳しい内容まではわからないけれど「帰りたくない!」って言いながら、ラストオーダーのあとにももう一杯、頼んでいましたから、明日よっぽど出社したくないのかなって(笑)。

――一方で、挫折した趣味やチャレンジはありますか?

岩井:羊毛フェルトは向いていませんでしたね。設計図があって、そこに向けて作業するのが苦痛でした。相方の澤部(佑)はブロック玩具が好きで、お酒を飲みながら、パッケージに描いてある設計図通りに組むのが楽しいみたいですけど、考えられない(笑)。僕はバケツの中にいろんなブロックが入っていて、自由に組むほうが好きですね。

――作業になるのが好きじゃないのかもしれませんね。

岩井:それは仕事でも一緒で、誰でもできるけれど、やりたくないことをしてバラエティを盛り上げることは好きではないですね。心を殺せば誰でもできることをして、人気者だと囃し立てられてもな、って。

――なるべくご自身が自由に感じられること、驚きがあるものをやりたいと。

岩井:たぶんそうだと思います。漫才を作っていても、漫才がうまくなっていくことにはあまり興味がなくて、今までになかったものを提案したいと思っていますね。

――これから挑戦したいことはありますか?

岩井:イラストを描きたいという欲求はずっとあります。レギュラーの帯番組で、絵を描いてフリップを出すくだりがあるのですが、“こういう構図で描けたらな”と思いながらも、技術的に描けなくて違うものになってしまう。

――いろんなアニメを観ているから、構図はすぐに思い浮かびそうですね。

岩井:だけどそれが再現できないので、いろんな構図で描けるようになりたい。最終的には20枚くらいの絵を描いて、それを動かせるようになりたいですね。

恥ずかしさがあることって、むしろ楽しいこと

――新しいチャレンジに踏み出すためのアドバイスはありますか?

岩井:何かを始めたり、新しい提案をしたりするときって、一定の恥ずかしさがあるじゃないですか。でも、それが普通というか、“その気持ち、合っていますよ”と言いたい。

――何かを始めるときにある恥は普通だと。

岩井:というのも先日、とあるアパレル系の展覧会に行ったら、服飾関係の学生たちが団体で見学に来ていたんです。彼らはみんな個性的で、挑戦的なファッションをしていて。おそらくひとりひとりが“世界で一番オシャレ”と思っているだろうけど、一方で、世間の目に対して不安になっている気持ちも少しはあるはずじゃないですか。でも、その気持ちがあるからこそ挑戦できる。恥ずかしさがあることって、むしろ楽しいことだなと思うんです。

――年齢を重ねていけば、恥をかくのがどうしても嫌になりがちですね。

岩井:“いい年こいて”みたいにね。でも、誰でも最初は初心者だから失敗もあるし、そういう気持ちを楽しむのもアリじゃないかなと。僕もラノベを初めて買ったとき、恥ずかしい気持ちがあったはず。買ったことがないものだし、時代的に偏見もまだあったから、オタクっぽいイラストが表紙になっているものをレジに出す行為が。すっかり忘れましたけど(笑)。

――そういう恥ずかしさを乗り越えたときに、一生ものの趣味になったり、仕事になったりするかもしれないですね。

岩井:漫才で新しいネタができたときも、発表したい気持ちと、大丈夫かな、恥をかかないかな、という気持ちは両方あって、ずっとそのせめぎ合いをしている感じですね。でも、そこで“やる”と決めるのが大事かなと思います。僕らも今年から新ネタライブを復活させたのですが、そうやってチャレンジをしているので。

――なるほど。ありがとうございます。最後に、今後もアニメや漫画の仕事は続けていこうと思っていらっしゃいますか?

岩井:そうですね。たとえ仕事じゃなくとも、アニメは観続けたい。この前ふと気づいたのは、おそらく死ぬまでに現存するアニメをすべては鑑賞できないということ。現時点で仕事を辞めたとして、そこから毎日観てもストックが切れない。自分の好きなものがそういう状態にあるのはマジ最高だな、って思います。

岩井勇気
取材・文●森樹
撮影●高木亜麗
ヘアメイク●遠田ひとみ
スタイリスト●嘉山裕子

岩井勇気

岩井勇気(いわい・ゆうき)/ハライチ
1986年7月31日生まれ。埼玉県出身。漫才コンビ「ハライチ」のボケ、ネタ作り担当。ワタナベエンターテインメント所属。2006年、澤部佑と漫才コンビ「ハライチ」を結成し、『M-1グランプリ』の決勝には計5回進出。現在はお昼の帯番組『ぽかぽか』のメインMCを務める。一方で幼少期から漫画・アニメを嗜んでおり、ライトノベル『ブギーポップは笑わない』シリーズは中学時代のバイブルと語る。そうした素養を活かした文章も人気を博し、現在まで3冊のエッセイを出版している。猫好き。

公式Xアカウント
ニコニコチャンネル「ハライチ岩井勇気のアニ番」  

ハライチ新ネタライブ
ハライチライブ『60』-第3回-

公演日 2025年9月6日(土)
開場/開演 13:30/14:00
場所 東京・成城ホール
価格 3,500円(税込)※完売
https://www.watanabepro.co.jp/liveinfo/19913/

ハライチ新ネタライブ「ハライチライブ『60』」は今後も約3ヶ月に1度のペースで開催予定。

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