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「書く」ことが日常になった今、顎木あくみが語る“チャレンジ”の現在地【あなたの #チャレ活】

2025/08/01
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 大ヒット作『わたしの幸せな結婚』をはじめ、心揺さぶる物語で多くの読者を魅了してきた作家・顎木あくみ。今回のインタビューでは、新たなチャレンジについてはもちろん、創作への想いや執筆を支える趣味、日常のリフレッシュ法まで、たっぷりと語っていただきました。
 デビューから7年、全力で走り続けたその先で見つけた“いつかしたい挑戦”にも注目です。

「流行っているもの」のインプットは欠かせない!

――今、どの作品を手掛けていらっしゃるんですか?

顎木あくみ(以下:顎木):プロット立てたり、原稿書いたり、いろいろなシリーズを同時進行でやってる感じです。できたら次、できたら次みたいに、とにかくスケジュールが危ないものから手をつける感じで。とはいえ原稿を書くのは複数同時には難しいので、ひとつのシリーズを集中して書きますが。

――舞台が現代だったり中華だったり、シリーズによっていろいろです。どう頭を切り替えていますか?

顎木:原稿を書くときは没入しないと書けないので、次の世界にスイッチのようにバチッと切り替えることはあまりできないんです。入り込む前にはちょっと猶予が必要で、その間にインプット期間挟んだり、全然違う趣味の創作をしたり…そんなことをしているうちに徐々に切り替わる感じですね。

――例えば大正ロマンをするときはそれっぽいアイテムを並べるとか、中華だと風水の盤を出してくるとか、そういう環境づくりはしない?

顎木:あんまりないですね。何だったらテンションあげるために中華を書きながら大正ロマンみたいな音楽を聴いてたりします。和風の音楽が好きなので、普通にYouTubeのBGM集みたいなのを流したり、あとは和風の作品のサウンドトラックみたいなのを流したり。去年はゲームとかの和風の曲を歌われるSuaraさんもよく聞いてました。とにかく自分のテンションを上げていくのが大事なので、世界観は別にあってなくても好きなものを聞く、みたいな。あとはなんだろう…リポビタンDを飲む(笑)。

――さきほどの「インプット期間」とは、どんなことをするんですか?

顎木:漫画を読んだり小説を読んだりする感じですね。アニメやゲームも好きだし、映画も見るし…基本ミーハーなので「流行っているもの」にいろいろ触れる感じです。やっぱり常にインプットしていかないとどんどん手癖に寄っていっちゃうというか、自分の中にあるものだけだとワンパターンになるし、すり減って枯渇して書けなくなるとも思うので。面白そうと思ったら今まで触れたことのないジャンルでも一応触れてみたりします。ハマらないものもありますけど、感触が良ければ同じジャンルの他のものとかにも手を出していったりしますね。

――新しいものや人気のあるものに触れるのはいい刺激にもなりそうですね。ただ新しいものといってもいろいろあるわけで、どんなふうに選んでいますか?

顎木:「あらすじ」を読んで面白そうだと思ったらバッと飛び込むみたいなところがありますね。あとはSNSのオススメコメントを参考にするとか。

――ちなみに最近のおすすめ、何かありますか?

顎木:ホラー好きなので、映画はあまり見ませんが小説とか漫画は結構、読みます。最近ハマったのはホラー作家の三津田信三先生で、なんというか「本当にあったこと」のように感じるリアリティが面白くて。最近思うんですけど、ホラーって人にとって一番身近なファンタジーだなって。ホラーって「あるかもしれないし、ないかもしれない」みたいなところが面白いわけで、それってかなりファンタジーですよね。

「歌」と「香道」にチャレンジしたい!

――今回のインタンビューでは「新しいチャレンジ」についてお聞きしているんですが、顎木さんがやってみたいチャレンジって何かありますか?

顎木:うーん、いろいろ興味はありますけど、日々執筆に追われているので趣味がインプットみたいなことばっかりになっちゃうんですよね。時間もないからどうしても外に出ていくのはためらいがちになるし…でもいつか開拓したいって思ってるものはあります。

――それはなんでしょう?

顎木:「歌」ですね。中学時代に合唱部だったので歌うのは好きなんですよ。私、元々はすごい音痴だったんです。 合唱やり始めてからだんだん矯正されて歌えるようになったんですが、もう時間が経っているから全然歌えなくなってきてると思うので、またちょっとやりたいと思っています。あとは匂いにすごく興味があるから「香道」もやってみたい。

――意外なものがでてきてびっくりしました。

顎木:やりたい気持ちはあるんですけど、実際はなかなか時間がとれなくて。まずは「休みを持つ勇気」を持つところからはじめないと。

――作家生活7年目、ずっと走ってこられた感じもありますもんね。

顎木:あまり執筆の経験がないまま作家になってしまったので、執筆だけでも結構必死でしたね。なので本当にバタバタしながらこの数年やってきてしまった感じで、本当に他のことに目が向き始めたのは最近になってようやくなんです。

――走り続けてきて、ある程度自信もついた?

顎木:いや、最近は自分を客観的に見過ぎていて、「自分ダメじゃん」みたいなところばっかり目につくようになってしまって。冷静になって自分の書いているものにいちいちケチを付けだしたら小説なんて書けなくなっちゃいますから、たぶんみんな正気を失いながら原稿を書いているんだと思うんですね。私も冷静になると「何をやっているんだ、私は!?」ってなっちゃうから、「もう少し狂気に満ち溢れていないと」って思ってます。

――そんな気持ちを抱えているとは、ファンには驚きかもしれません。作家として、これから挑戦してみたいジャンルはありますか?

顎木:次かどうかは思わないですけど、ずっとSFが書きたいと思っています。近未来を描きたいですね。

――なぜ近未来なのでしょう?

顎木:おそらく古い世界に憧れるのと一緒だと思います。見たことないものがいっぱいあるし、たぶんそこで生きる人たちの考えもまた違ったりとかして、でも変わらないものもあってみたいなところ。近未来には昔とはまた違うところがあるのも面白そうだな、と。

――いつか実現することを楽しみにしています。SFはジャンルとして厳しいと言われていますが、キャラクター文芸だからできることはあるのかも。キャラクター文芸の魅力ってどう感じていらっしゃいますか?

顎木:キャラクター文芸の場合、世界観とキャラの設定は割と非日常なんですけど、主人公の感情の移り変わりとかは割と地に足がついているというかリアルな感じがするところですね。
 ライトノベルとかだと主人公も突拍子もなかったりしてファンタジー感が強くなりますが、キャラクター文芸の場合は割と主人公は現実に居そうなキャラクターなんですよ。むしろリアルな主人公を置くことですごく共感したりとか、没入感を得られたりするけれども、周りは結構わちゃわちゃしたファンタジーだったりして面白い。そんなところがキャラクター文芸の魅力というか、書いていても読んでいても面白いところ。一般文芸ほどリアルに即していなくて、ライトノベルほどぶっ飛んでいないというか、その絶妙なラインが良さだと個人的には思っています。

2025年これだけはやっておきたい!

――最後に。あっという間に今年も半分終わってしまいましたが、2025年の残りにこれだけはやっておきたいものはありますか?

顎木:うーん、スケジュールをうまくこなすことですかね。ちょっと時間的な余裕を持って、なんか趣味の世界を広げたりとか、もっとガッツリ目にインプットしたりとか、趣味の創作したりとか…そういう時間の余裕がもてるように、まずはスケジュールを頑張りたいです!



取材・文●荒井理恵


顎木あくみ

顎木あくみ(あぎとぎ・あくみ)
作家。長野県在住。小説投稿サイトで発表していたデビュー作『わたしの幸せな結婚』(KADOKAWA)がアニメ化、実写化もされる大人気シリーズとなり、一躍ベストセラー作家に。現在、『宮廷のまじない師』シリーズ(ポプラ社)、『人魚のあわ恋』シリーズ(文藝春秋)、『宵を待つ月の物語』シリーズ(KADOKAWA)と複数のシリーズを精力的に展開中。

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宵を待つ月の物語
最新作『宵を待つ月の物語 一』好評発売中
価 格:792円(税込)
著 者:顎木 あくみ/イラスト:左
レーベル:富士見L文庫

宵を待つ月の物語 公式HP


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