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「2ちゃん」「ニコ動」「ラノベ」。オタクカルチャーを浴びたことで生まれた野田クリスタルの“チャレンジ”【あなたの #チャレ活】

2025/07/28
メクリメクル
 『M-1グランプリ2020』、『R-1ぐらんぷり2020』優勝。日本を代表するお笑いのショーレースで二冠を達成するマヂカルラブリー・野田クリスタル。お笑いにとどまらず、自身がプロデュースした「クリスタルジム」の運営、ゲームシリーズ「野田ゲー」の開発など、さまざまなフィールドで活躍している。この記事では、そんな野田クリスタルが今挑戦していること、そして日々取り組んでいる“コンテンツづくり”について語ってもらった。

野田クリスタルの仕事は“コンテンツづくり”


――野田さんといえば、マヂカルラブリーとしての活動だけでなく、野田ゲーの制作やクリスタルジムの設立など多方面で活躍されています。もし野田さんのことを知らない方がいたとして、現在どのようにご自身のお仕事をご説明されますか?

野田クリスタル(以下:野田):堅い言い方をすればコンテンツづくりですかね。ネタもそうですし、野田ゲーもそう。クリスタルジムももちろんそうですし、最近制作した大喜利サイト「無限大喜利」も……。そう考えるとコンテンツばかり作っている状態ですね。

――そんなコンテンツづくりのモチベーションはどこから湧いているんですか?

野田:漫才やコント、大喜利だって、誰か先人が築いたものです。なので、芸人というのはそもそも何かを作ることすら一つの仕事だと思うんですよね。ただ、自分は0から1を生み出すことはできなくて、「○○はもっとこうしてみたらいいんじゃない?」みたいな思いを形にする。1から2を作ることをしているだけです。漫才をたくさん観てきた観客がいる特殊な状況下でのバトルだったM-1グランプリ用のネタづくりもその一つです。既にこういう漫才があるよね、という前提でいかにその考えを壊せるか考えた結果が「つり革」でした。そういう意味で、活動の結果としてコンテンツが生まれているので、特別にモチベーションを維持している、という感覚はあまりないですね。

――では、ネタの作り方もM-1グランプリと吉本の劇場、はたまた営業で訪れたショッピングモールだとそれぞれ変わってくる?

野田:はい。ただ、テレビ番組に出演するときはその考えはしないようにしています。自分のクリエイティブの自我は出さず、きちんとディレクターさんや構成作家さんに従うようにしていて。

――以前『勇者ああああ〜ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組〜』(テレビ東京)で『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?』のプレゼンをされていたことがありましたけど、そのときは?

野田:あれはどういうプレゼンをするかこちらに丸投げだったので、自由にやらせていただきました。

――凄まじい熱量でのプレゼンでしたが、あそこまで愛を注げるほどゲームをやり込む時間はどのように捻出されていたんですか?

野田:最近はあまり現在進行形のコンテンツには触れられていないんですけど……。まだ仕事がなかった時期は、ほとんどずっとゲームをするかインターネットに触れるか、アニメを観て過ごしていたんです。なので、あのプレゼンはその残滓ですよ(笑)。

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オンラインゲーム、電子掲示板、ラノベ。オタクカルチャーを浴びまくった若い頃


――そんな野田さんが触れてきたコンテンツについて深掘りしたいのですが……。最初にハマったものは?

野田:最初はオンラインゲームです。10代の頃、まだ月額制がメインの時期にずっとプレイしていたんですけど、必然的にパソコンのことが詳しくなっていって、「あめぞう」という掲示板サイトにハマったんですよ。そこの小説板にも書き込みしていました。その後は「2ちゃんねる」をROM専で見ていて。さらにその後は「ニコニコ動画」かな。

――どういったジャンルの動画をよく観ていたんですか?

野田:まだ細分化される前の「ニコニコ動画」でしたから、MADも『東方Project』もMMDも……なんでも観ていました。「2ちゃんねる」でもFlash板を眺めていたので、Flash動画をよく観ていましたね。でもそういう趣味を当時は公にできなかったので、どんどん孤立していったんです。

――それが今や一つの武器に。

野田:口に出してはいなかったんですけどね。どこか滲み出ちゃったのかなぁ。でも、当時の「ニコニコ動画」に触れていたおかげで、米津玄師さんが人気になったときに他の人と話ができるようになったのは嬉しかったですね。なんでこんなに女子中学生すら『東方Project』を知っている時空になったんだろうとは思いますけど(笑)。

――確かに(笑)。話を戻すと、そんな「ニコニコ動画」や「2ちゃんねる」にいたことが、野田ゲーへ繋がっていくんですね。どこか個人サイトにアップロードされているzipファイルのゲームの匂いがあったのは、その影響だったと。

野田:そうなんです! あの時代に流行った『青鬼』とかFlash製のニッチな作品の影響を強く受けているので、ああいったスタイルのゲームになっているんですよね。粗い切り抜き素材を使っているのも、その影響です。ゲームの内容自体も0から1ではなく、先ほど触れたように「○○はもっとこうしてみたらいいんじゃない?」みたいなアイデアのもと生み出したもの。なので、僕にとってはどこか思い出を呼び覚ますような作業で野田ゲーを作っています。

――「ニコニコ動画」に触れていたということは、アニメやライトノベルといったオタク文化も近しい場所にありましたよね。

野田:まさしく「ニコニコ動画」から『涼宮ハルヒの憂鬱』という作品に触れました。アニメを観てすぐ『涼宮ハルヒの消失』(著:谷川 流 イラスト:いとう のいぢ/角川スニーカー文庫)を読んだことは記憶しています。内容が衝撃的すぎて、すぐに第1巻を買いに走りましたね。それから当たり前のように続きが気になって、全巻購入して読みました。『涼宮ハルヒ』シリーズは巻数を増しても予想以上に面白いんですよ。絶対に期待の上を行くっていう……。本当に凄まじい作品ですよ。読後感も妙におしゃれで、クセになりますよね。

――その後も何か読まれたり?

野田:アニメはその後もずっと観ていましたよ。『Re:ゼロから始める異世界生活』とか……。ライトノベルとしてハマったのは『この素晴らしい世界に祝福を!』(著:暁なつめ イラスト:三嶋くろね/角川スニーカー文庫)ですね。

――『このすば』は「小説家になろう」で読まれたんですか?

野田:いや、気付いたときには「小説家になろう」からは削除されていたので書籍版からでしたね。アニメ第3期でも描かれたダクネスの結婚の話がとても大好きなんですよ。僕は『このすば』を『ONE PIECE』の東の海編のような仁義の話だと考えているんですけど、筋の通ったやり取りをしているカズマとダクネスたちの姿がカッコよくて……。三嶋(くろね)先生の可愛いイラストの陰に隠れていますけど、『このすば』は任侠ものなんですよ! アニメ版の続きも早く観てみたいですね

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3000人キャパの会場で無観客コンサート。エッジの効いた“コンテンツづくり”


――最近あまり現在進行形のコンテンツには触れられていない、ということでしたが、それだけお忙しくされているということで……。そんなお仕事の中で最近行った挑戦をお教えください。

野田:この前、スタッフから「TOKYO DOME CITY HALLの予定がたまたま空いてしまったので何か野田さんやりませんか」と相談があって。最初は野田ゲーをファンと一緒にプレイしようか考えたんですが、それでは生ぬるいなと。そこでせっかくだからソロコンサート(「野田クリスタル 初コンサート in TOKYO DOME CITY HALL」)を開いたんです。無観客で(笑)。

――TOKYO DOME CITY HALLって3000人キャパですよね!? その前で無観客配信。

野田:しかも音だけ作ってもらって、歌詞はその場の気持ちで歌う本当の意味でのFIRST TAKEでした。やっているときは「何してんだろ」って思わず感じましたけど、形として成立していない面白いものを作ることができて満足しています。またこういうことをやってみたいですね。

――またどこかのタイミングで、エッジの効いた面白いものを作っていくと。

野田:イベントという形なのか映像媒体なのか分かりませんけどね。直近ではモルックや型抜きをやってもOKな、自由すぎるジム(クリスタルジム)を作りましたし、大喜利サイトの『無限大喜利』も開設しました。特に後者は自分が仕事のない時代にお世話になったインターネット上の大喜利サイトを、AI技術が発達してきた現代の技術で発展させたものです。つまりAIがいつでも大喜利のお題を生成してくれるので、24時間大喜利プレイヤーになることができると。『着信御礼!ケータイ大喜利』や『IPPONグランプリ』がない今、大喜利というコンテンツの熱を保ち続けたいという思いもあるので、どんどん人気サイトへ押し上げていきたいと思っています。それが今一番やりたい挑戦かもしれませんね。

――野田さんの更なる挑戦、楽しみにしています!

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取材・文●太田祥暉
撮影●金澤正平

野田クリスタル

野田クリスタル(のだくりすたる)/マヂカルラブリー
1986年11月28日生まれ。神奈川県出身。吉本興業所属。20007年、村上と「マヂカルラブリー」を結成。コンビではボケを担当するほかネタ作りも担う。「M-1グランプリ2020」、「R-1ぐらんぷり2020」で二冠を達成。近年は、自身がジム長を務める「クリスタルジム」の設立、「野田ゲー」シリーズの開発など多方面で活躍する。

公式YouTube
公式Xアカウント
スーパー野田ゲー公式HP
クリスタルジム公式HP


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