何故にじさんじ・家長むぎは学ぶことをやめないのか?【あなたの #チャレ活】

現在は大学生となり、数多くの資格も所持し常に学び続けることをやめない彼女に、今と未来の「チャレンジ」を伺った。
成功することは、チャレンジの絶対条件ではない
――家長さんが今、チャレンジしていることを教えてください。
家長:大学に通いながらVTuberをしていること。それ自体が私のチャレンジだと思います。今、私は21歳ですが、ライバー活動はもう8年目。人生の半分近く、VTuberをやっている人なんて、きっとあまりいないはずだし、人生を懸けた一大プロジェクト的なチャレンジになっています。
――にじさんじのオーディションを受けた時から、「これは大きなチャレンジだ」という意識はあったのですか?
家長:全然ありませんでした(笑)。すごく軽い気持ちで始めたら、(先輩で元1期生の)月ノ美兎さんがバズりまくって。にじさんじがどんどん巨大になっていき、環境や私の意識なども変わっていきました。委員長(月ノ美兎の愛称)さんがいなかったら、ちょっとだけやったアルバイトみたいな感じで、もうライバーはやめていたと思います。委員長さんには、一生、頭が上がりません。
――大学生とライバー活動を両立させるチャレンジの中で、特に大事にしていることを教えてください。
家長:1日は24時間という限られた時間の中、ライバー活動と学生生活の両方で最大効率を発揮して、自分の人生を総合的に実りある形にすることが大事だと考えていて。そのためには、大学で学んだことをライバー活動に還元し、活動の中で感じたことは問題意識として大学に持ち込み勉強しながら考える。そして、また、それを活動の中で言語化する。そういった無限のサイクルを確立させることもチャレンジだと思っています!
これって、例えば『大学生の時には、こんな勉強をしていたんだよ』と過去のこととして話すVTuberさんとは、また違うことのはず。このサイクルを生で、中学、高校を含めて8年もやってきた人は、たぶん他にはいない。だから、自分が第一人者としてこれを続けていき、この先も長くVTuber業界が続いていった時、VTuberをやりたいと思った若い子が勉強を諦めなくても平気だという道を作ることもチャレンジです。
――ちなみに、家長さんは、新しいことにチャレンジすることが好きなタイプですか? それとも尻込みするタイプですか?
家長:尻込みは絶対にしないです! 人生に尻込みなんてしている時間はないので、チャレンジしたいと思って、その機会があったら絶対にチャレンジします。
――では、何かにチャレンジする時、周りに「こんなチャレンジをするよ」と先に宣言するタイプですか? それとも、後から報告するタイプですか?
家長:デビューするまでは、失敗を見られるのが恥ずかしかったし、小学生の頃だと先生に怒られたりもするじゃないですか。それが嫌でコソコソ隠れてやっていました(笑)。でも、ライバーを始めてからは、(リスナーに)宣言してからやるタイプになったと思います。今までにみんなと一緒に勉強して、資格をいっぱい取ったんですけど、いつも『この資格の勉強をやります』と宣言してから勉強を始めてきました。自分が頑張っている姿を見せて、誰かをエンパワーメント(能力を引き出すこと)したい……って言うと上から目線みたいになってしまうんですけど。『むぎちゃんが頑張っている姿を見て、自分もやってみようと思った』という人もいてくれることが分かってからは、チャレンジする時は、みんなに伝えています。あと、試験に落ちたりした時も正直に報告しています(笑)。
――結果が出なかったときも隠さず、しっかりとリスナーに伝えるのですね。
家長:チャレンジって、成功することで初めて意味が生まれると、無意識のうちに思い込んでいる人もいるかもしれないんですけど。成功することは、チャレンジの絶対条件ではなくて。一歩踏み出して何かを選び、同時に何かを捨てる……その選択を重ねて、彫刻のように少しずつ自分を削り形作っていくこと自体に意味があるはずなんです。何かにチャレンジすることで、人生の選択肢が広がるので。だから、チャレンジが「合格」などの良い形の結果に繋がらなくても、チャレンジしたということが大事。みんなにもあまり後先考えず気軽にチャレンジして、自分らしい人生を歩んでほしいなと思います。
――ライバー活動を通じて、誰かに勇気やモチベーションを与えられることは、家長さんにとっても嬉しいことですか?
家長:すごく嬉しいことで、そういう報告を聞けると大喜びします!(笑) 最近は、SNSの発達によって、『自分の人生って……』みたいに無気力になっちゃう人が増えているという研究結果もあるんです。でも、みんなには、そうならないでほしくて。私の存在がみんなの頑張るきっかけになれたらなって。いろいろな形で応援してもらっているので、それが自分にできる、せめてもの恩返しだと思っています。
――家長さんとリスナーが一緒に勉強や作業をする「Study with me」の配信を見ていると、学生リスナーが「今日は英語の勉強を3ページやる」などと、その日の目標を宣言していたりして。すごく前向きな雰囲気に満ちた、素敵な場所だと感じました。
家長:分かります! それぞれ違うところで生きているみんなが集まって、『今日はこれを頑張る!』とか言い合っている世界って、本当に素晴らしいですよね。私もいつもすごく感銘を受けています。

私の挑戦で「世の中は運ゲー」ではないことを伝えたい
――少し話は変わりますが、家長さんは、来年1月18日(日)に開催される「にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow! 東京公演」に出演されることが決定しています。現地会場のあるにじさんじの音楽ライブへの出演は、2019年10月2日(水)に開催された「にじさんじ Music Festival~Powered by DMM music~」以来になると思いますが、ライブに向けた意気込みなどをお聞かせください。
家長:最後に箱の大きいライブに出させていただいたのは、まだ10代の時ですし、大人になった自分の成長を見せたいという気持ちでいっぱいです! (バーチャルライブの)技術的にもやれることが増えて、見せ方の選択肢も増えているので、一緒に東京公演へ出演してくださる他のライバーさんとのコンビネーションにも期待してほしいし、家長むぎとしての個性やオリジナリティにも注目してほしいです。
――同期の元2期生のメンバーと一緒に出られるのも嬉しいのでは?
家長:はい。同期の3人(剣持刀也、夕陽リリ、伏見ガク)と「ハッピートリガー」というユニットを組んでいるんですけど、大好きな3人と一緒に出られるのがすごく嬉しいです。それに、(元1期生の)大先輩で私の人生を変えてくれた委員長さんもいらっしゃるし、私にとって初めてできた後輩に近い存在の笹木咲さんと椎名唯華さんも一緒。私がお二人よりも先輩というのは、我ながら違うだろうと思うんですけどね(笑)。そんな風に長く活動されている方たちと、ワールドツアーのトリを飾れることは、すごくレアで本当にありがたい機会で、夢みたいです。
先日、委員長さんの2ndワンマンライブ『Paper Rabbit』があったんですけど、本当に素晴らしくて、あんなにすごいライブをできる人と一緒に出られるのかと思うと本当に光栄です! 1月までに、どれだけ自分を成長させられるか、必死に考えています。

――では、東京公演に向けて、何かチャレンジしていることはありますか?
家長:2か月くらい前から毎週、歌の練習をしています。あと、ダンスには、強い体幹が必要だと聞いて、毎日、ちょっとしたトレーニングをするようになりました(笑)。貴重なチャンスをいただいたからには絶対に100%、いや120%のパフォーマンスをしてみせるぞという気持ちです。
――では、東京公演よりもっと先、家長さんが最終的に目指しているものを教えてください。進路の話に限らず、最終的にどのような「家長むぎ」をリスナーに見せたいと思っているのか、そのビジョンを伺えたらと思っています。
家長:すごく難しい質問ですね(笑)。大学を卒業後、どうするのかというところにも重なるのですが、最終的な目標に辿り着くまでの過程として、今は学芸員の資格をとって研究者、教育者のひとりとして認められることを目指しています。学芸員という国家資格を取ることで『適当なことを言ってるな』と思われないようにした上で、学生の子にもっと寄り添えるような活動をしたいんです。
――学芸員とは、どのような資格なのですか?
家長:学芸員は、美術館などにいて展示品の説明をしてくれる人で、つまりは研究者。美術作品やアーティストについて研究したり、芸術文化の教育・普及を行う人のことです。ただ、日本では資格を取れたとしても、美術館などで働ける枠は、あまりありません。
――家長さんもその狭き門に挑むのですか?
家長:いえ、私の専門は美術の教育普及なんですけど、学芸員の資格を取ったら、それを配信活動の中で活かしたいと思っています。なぜならこれからの時代は、デジタルの世界でそういった教育普及を行う存在が絶対に必要だと思っているからです。先日発売された『Nintendo Switch 2 のひみつ展』というソフトがあるのですが。このゲームが本当に素晴らしくて! 実際のミュージアムや、コロナ禍の時期に数多くできた実際の展示内容を内装まで含めてVRに起こしたバーチャルミュージアムともまた違う、ものすごく新しいデジタル世界でのミュージアムが体験できるんですよ! この任天堂の新しいチャレンジだけで、卒論が書けそうなくらいの作品(笑)。『ひみつ展』は、デジタルで展開する美術教育の普及が絶対に必要だという気持ちをより強めてくれました。
――では、学芸員の資格を取ったとしても、活動スタイルが大きく変わることはない?
家長:配信での活動内容としては、たぶん、今とあまり変わらないと思っていて。みんなと一緒に黙って勉強する『Study with me』が中心だと思います。(配信で)勉強することに関しては、これ以上、削る要素もないので。じゃあ活動全体としては何を増やしていくのかと考えた時、ぜひやりたいのは、どこかの教育機関とのコラボです。例えば今やってみたいなと思っているのは、『世界遺産検定』のホームページで連載されている『著名人・芸能人インタビュー』に出ることです! そういった場所にも出て、『勉強って面白いぞ』ということをもっともっと広く伝えていきたい。勉強することの楽しさの裾野を広げ続けたいんです。今は、世の中があまりにも『運ゲー』だと思われてしまっているから、私のチャレンジを通して、そうじゃないことを伝えられたらと思っています。自分がもっと成長して「ここまで大きくなったよ」と見せられたら、勉強することや努力をすることは無駄じゃないという主張の信憑性が増しますよね。「結局、運じゃね?」って思われる可能性を減らしたいんです。
――家長さん自身が勉強や努力を重ねて成長する姿を見せることで、「世の中は運ゲー」という考え方を打ち消したいのですね。
家長:はい。そのゴールに一歩ずつ近付いていくための日々のチャレンジの一環、説得力を持つための方法の一つとして、まずは学芸員などの資格を取っていきたいし、その過程もみんなに見てもらいたいって考えてます。それをきっかけに、『努力や勉強って、無駄じゃないかも』と思ってくれる人が一人でも増えてほしいという気持ちで活動しています。

家長むぎ(いえなが・むぎ)/にじさんじ
2018年3月、中学3年生の時に「にじさんじ2期生(当時)」としてデビュー。美術館巡りや読書が趣味で、文章を書くのも大好き。英検二級、日本漢字能力検定準1級、美術検定2級、世界遺産検定3級など数多くの資格を有している。
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東京公演
会 場:TOYOTA ARENA TOKYO
出 演:月ノ美兎、家長むぎ、剣持刀也、伏見ガク、夕陽リリ、笹木咲、椎名唯華
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