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何かに熱中した経験は、決して無駄にはならない。オタクだったあの頃があるから、今がある【アンバサダー/梶裕貴】

2025/07/29
40歳を前に見つけた人生の三本柱。100年後にも残る“自分の声”でつくるエンタメの未来に思いを馳せる【梶裕貴】
 WEBマガジン『メクリメクル』の創刊を盛り上げてくれる公式アンバサダーに、人気声優・梶裕貴が就任! 今をときめく声優・梶裕貴も、かつてはしっかりオタクだった……? この記事では、彼のオタクカルチャーとの出会い、学生時代にハマったコンテンツについてたっぷり語ってもらった。

プロデューサー目線でエンタメを摂取。今は、特にボカロ界隈に注目

──このインタビューでは、梶さんの“オタク的な部分”に触れていきたいと思います。最近ハマっているコンテンツはありますか?

梶裕貴(以下、梶):現在、声優業と並行して音声AIプロジェクト「そよぎフラクタル」の企画・プロデュースをしています。「そよぎフラクタル」を盛り上げていくためには、どういったことを学び、どういう形で展開していけばいいのか? 最近は、そういったプロデューサー目線でコンテンツに触れる機会が増えている気がしますね。自分の好みというよりは、世代ごとにどんなコンテンツが注目され、どういうところが刺さっているのかに注目しています。

──そういった情報は、どうやって仕入れているのでしょうか。

:ネットで情報収集したり、お仕事で出会った専門家の方からお話を伺ったりしています。あと注目しているのは、いわゆるボカロ界隈をチェックしていますね。「そよぎフラクタル」のような音声合成ソフトの先駆けと言えば、初音ミクをはじめとするボーカロイド。今ではヒットチャートの上位ランクも、ボカロP出身のクリエイターが手掛けた楽曲が常連となっています。僕自身は、これまでボカロ界隈の盛り上がりに触れる機会がそこまで多いわけではなかったのですが、実際に覗いてみると、本当に無限の広がりを見せているんですよね。ソフトを使えば、誰でも楽曲をつくれて、世界中に作品を届けることができる。そういう時代なんだな、と身をもって感じました。

──ボカロ界隈も、世代によって触れてきた楽曲が違いますよね。

:自分が声優として活動をはじめたのと、ほぼ同じ時期に初音ミクが登場し、ニコニコ動画で大きな盛り上がりを見せていた記憶があります。ただ、当時の僕はパソコンを買うお金もなく、誰もがスマホを持っている時代でもなくて……。なので有名な楽曲は知っていましたが、なかなかマニアックなところまでは触れる機会がありませんでした。

 僕より5~10歳下になるとドンピシャの世代でしょうし、今の10代、20代にとってはもはや常識。物心ついた時から、当たり前のようにボカロに触れてきているわけですから。僕らからすると、自分から探しに行かないと出会えない存在でしたが、今ではすっかり世間に浸透しましたよね。

──確かに、今の10代は生まれた時からボカロの楽曲が存在している世代ですね。

:生まれた時からスマホがあって、当たり前のようにボカロがいる世代。僕にはもうすぐ3歳になる娘がいますが、慣れた様子で毎日スマホをスワイプしていますよ。こないだなんて、テレビ画面をタッチで操作しようとしたくらい(笑)。プロデュース業、声優業をするうえでも、こうした時代の変化にはある程度敏感であるべきだと思うので、メクリメクルを通して僕自身も知識を深められたらと思っています。

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『スレイヤーズ』の呪文を暗唱。オリジナルのボドゲ作りやマンガを描いて過ごした学生時代

――子どもの頃や学生時代にハマったコンテンツはありましたか?

:ボーダーレスに、幅広いコンテンツに触れてきました。僕が子どもの頃は、まだ深夜アニメの放送が少なかった時代。テレビアニメは夕方か朝に放送されていたので、部活を終えて帰宅してから、いろいろなアニメを楽しんでいた思い出があります。

 ライトノベルに関しては、自分が小学校高学年から中学生の頃に、ものすごい勢いで盛り上がっていったコンテンツという印象があります。僕がハマったのは『スレイヤーズ』(著:神坂一 イラスト:あらいずみるい/ファンタジア文庫)。最初はTVアニメから入りましたが、小学校での読書の時間に原作のライトノベルを読んでいました(笑)。小説なので学校で堂々と読めるのが、すごくうれしかったのを覚えています。中学に入ってからも、アニメ、本、ゲームが大好きで、同じような趣味の友達と一緒に盛り上がったり、『スレイヤーズ』のセリフを書き起こして覚えたりしていました。今でも「竜破斬(ドラグ・スレイブ)」の呪文を暗唱できます(笑)。あとは、自分で何かモノづくりをするのも当時から好きで。

――どんなものですか?

:マンガを描いてみたこともありますし、友達と一緒にゲームの企画書を作ってみたことも。「こういうバトルシステムにしたら面白いよね」「基本的には3DCGで、盛り上がるシーンではアニメーションを入れよう」と、友達同士で話していました(笑)。アナログのボードゲームもよくつくっていましたね。当時、ペットボトルのおまけでついてくるフィギュアがあったんですよ。特に記憶に残っているのは、『ファイナルファンタジーIX』シリーズ。自分たちの好きなカードゲームやボードゲームの設定を融合してオリジナルのルールをつくり、ダンボールにマス目を書いて、サイコロで出た目の数だけそのフィギュアをコマのように動かして遊ぶんです。我ながら「これ、商品化したら絶対ヒットする!」という自信作でした(笑)。当時、小学生の僕らには、新作ゲームを買うお金なんて当然なくて。だから、必然的につくるしかなかったわけですが、でも、その行為自体も楽しかったんですよね。そういう意味では、クリエイティブな一面というのも当時からあったように思います。

――梶さんが小中学生の頃は、オタク的な趣味を持つ人は少数派だったのでは?

:どうなんでしょう? 今思い返せば、僕自身いわゆるオタクだったと思いますが、当時はあまり自覚していませんでした。他人からの見え方は気にしていなかったんでしょうね。今ほど店舗が多くなかったアニメイトにも、田舎から頑張って通っていました(笑)。小中学生だった自分にとっては、アニメイトがある街まで行くこと自体、ワクワクする小旅行でしたから。

――ご出身は、埼玉県坂戸市ですよね。どこのアニメイトに通っていたのでしょうか。

:埼玉県川越市まで行っていました。僕にとっては、夢のような都会のテーマパーク(笑)。本やグッズが所狭しと並んでいて、キラキラしてて。「世の中には、こんなにいろんな作品があって、いろんなキャラクターがいて、これだけの数のグッズが存在するんだ!」と衝撃を受けた場所でした。初めて行った時は、すごく感動しましたね。近所のCDショップには売っていないようなキャラソンをはじめ、フィギュアからキーホルダーまで、もう何でもある。そこに、数ヶ月に1回行けるのが本当に楽しみで。学校に持っていけるグッズは限られていましたが、下敷きやファイルは喜んで使っていました。

――特に思い出深いグッズはありますか?

:今もあるのかな……? 当時は、アニメのワンカットをラミネート加工したカードが売られていたんです。そのグッズに出合ったのが、カルチャーショックでしたね。他のグッズで使われているのは描き下ろしのイラストでしたが、アニメのシーンがそのままカードになっていることに感動しました。逆に(笑)。

 ただ、お小遣いが限られていたので、あまり買えませんでしたけれどね。中学時代のお小遣いは、月に1000円くらい。アニメ雑誌や声優雑誌を買うと、それだけで終わってしまいます。グッズも欲しいけれど、それよりは自分の夢に関わる情報収集を優先していた気がします。


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“オタク経験”は武器になる?何かに夢中になった経験は必ず役に立つ


――子どもの頃に憧れていた職業は?

:小学生の頃には、アニメ『シュート!』を観てサッカーを始め、『SLAM DUNK』の影響でバスケも始めました。『NARUTO -ナルト-』(著:岸本斉史/集英社)を読めば忍者になりたいと思い、『ONE PIECE』(著:尾田栄一郎/集英社)を読めば海賊に憧れ、『名探偵コナン』(著:青山剛昌/小学館)を読んだら探偵に、『るろうに剣心』(著:和月伸宏/集英社)を読んだら侍になりたいと思うような子どもでした(笑)。

――意外にも影響されやすいんですね(笑)。

:そうなんです。アニメやマンガの影響でいろいろなことを夢見たり、挑戦もしましたが、実際にその職業になるのは難しい。海賊にはなれませんからね(笑)。今思えば、そんな理由もあって、役を通して疑似体験できる声優という職業に惹かれていたのかもしれません。

――14歳の頃に「声優になりたい」と思い、そこからは現在に至るまで声優ひと筋だったそうですね。

:声優という夢が見つかるまでは、いろいろな職業を本気で目指していました。でも、声優という職業にはすべてが集約されていると気づいて。先ほどの話じゃないですが、つまりは海賊にも探偵にも、侍にだってなれちゃうわけですから(笑)。なので声優になろうと思ってからは、夢がブレることはなくなりましたね。

 それから、「声優という仕事は、頑張ったことがすべて自分の力になる」と知ったのも大きかったです。繰り返しになりますが、僕にはいろいろな夢があり、そのすべてに対して本気で頑張ってきました。たとえ、ひとつひとつの夢は叶えられなかったとしても、やってきたことは決して無駄にならない。自分の頑張りが120%反映されるのが声優という職業なんだと、これまでの努力を肯定してもらえたような気がしたんです。


――メクリメクルの読者にも、何かにのめり込んでいるオタク気質の方が少なくないと思います。そういう皆さんにとっても、「頑張ったことは無駄にならない」というメッセージは心に響きそうです。

:声優という仕事に限らず、何かに夢中になった経験は、人生において絶対に無駄にならないと思います。自分の好きなものや興味あることにのめり込む、その探求心や集中力、愛情、熱意は生きるうえで必ず役に立ちますから。

 それに、好きなものに救われたり、背中を押されたりすることもありますよね。最近は“推し”という言葉も一般的になりましたが、要は、自分が好きなものごとに夢中になっている時間は、エネルギーにも癒やしにもなるんだろうな、と。何でも平均的に、万能型でこなせるのも素敵なことですが、これからの時代は何かひとつ飛び抜けて優れていること、他には負けない強い思いというのが、とても重要になってくると考えています。そういう意味で、“オタク”という属性はきっと武器になるはず。愛情と情熱を注ぐ対象があることを、誇りに思ってほしいですね。


――梶さんは、ご自身を推してくれるファンに対してどんな感情をお持ちですか?

:実は僕自身は、誰か個人を推した経験がないので、少し不思議な感覚ではあります。ただ、皆さんが貴重な時間を割いて応援してくださっていることへの感謝の気持ちを忘れたことはありません。手紙を書くことひとつとっても、一生懸命に文章を考えて、何度も推敲して、便箋や封筒を選んで、丁寧に清書して…と、たくさんの時間と労力をかけてくださっているわけですから。そのぶん気持ちが伝わってきますし、本当にありがたいことだなと日々感じています。だからこそ、そんな僕を推してくださっている方々に恥じない人間であらねば、という責任も同時に感じていますね。

 でもなにより、そんなファンの皆さんこそ僕の推し。これからも、お互いに推し合える関係でいられたらと思います。

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※特別インタビュー第1弾 : 「40歳を前に見つけた人生の三本柱。100年後にも残る“自分の声”でつくるエンタメの未来」

取材・文●野本由起
撮影●渡部伸
ヘア&メイク●中山芽美(エミュー)
スタイリング●帆苅球


梶裕貴

梶裕貴(かじ・ゆうき)
1985年9月3日生まれ。2004年、声優デビュー。『進撃の巨人』エレン・イェーガー役、『僕のヒーローアカデミア』轟焦凍役、『ハイキュー!!』孤爪研磨役ほか、出演作多数。2018年、著書『いつかすべてが君の力になる』(河出書房新社)を刊行。2024年、声優20周年を記念してAI音声合成プロジェクト「そよぎフラクタル」を立ち上げる。2026年3月8日(日)には東京ガーデンシアターにてAIキャラクターLIVEイベント『そよぎEXPO』を開催予定。2025年8月31日(日)までクラウドファンディングも実施中。

公式Xアカウント
そよぎフラクタル  

<関連情報>
『CeVIO AI 梵そよぎ ソングスターター』19800円(税込)
『CeVIO AI 梵そよぎ トークスターター』16980円(税込)

対応言語:日本語
企画・制作・販売:そよぎフラクタル
対応OS:Windows 11 / 10 (64bit 日本語版または英語版)

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