SHARE

【対談】やまだのぼる×柚ノ木ヒヨト|『アルマーク』を今読むべき理由――剣と魔法の本格巨編ファンタジーの魅力を紐解く

MFブックス
MFブックス
2025/09/26
やまだのぼる×柚ノ木ヒヨト対談インタビュー
 『アルマーク』の小説&漫画の最新刊発売を記念して、小説の著者(原作者)であるやまだのぼる先生と、コミカライズの漫画家である柚ノ木ヒヨト先生の独占対談インタビュー!
 作品の生まれた背景、小説のWEB版と書籍版の違い、小説版と漫画版の違い、魅力・見どころなどをたっぷり語っていただきました!


柚ノ木先生は、すごく細部まで小説を読みこんでくださっているんです

――まず最初に、やまだ先生が『アルマーク』という作品を執筆するようになった経緯を教えてください。

やまだのぼる(以下“やまだ”):もともとは学生時代に考えていた物語がきっかけで、平和なファンタジーの世界に、ひとりだけダークファンタジーから来たような少年がいて、活躍したらおもしろいかなと。当時、僕が考えていたのは、主人公が平和ボケした世界で無双していくような、そんな話を想定していたんですけれども、大学生の時分では息子を送り出す父親の気持ちとか、魔法を教えてくれる先生の気持ちとか、大人の気持ちがうまく書けなくて、途中で挫折してしまったんです。
 でも、それから年月が経って人生のステージが変わって、大人の気持ちも分かるようになったので、今なら続きが書けるかもしれないと。それにあわせてアルマークも元の想定から、お互いの環境にリスペクトを持つような少年に変わりました。まさか続きを書くなんて思っていなかったので、書き始めからはもう、20年以上経っていますね。

――書き始めから20年ですか! そうなると、アルマーク以外のキャラクターも当初から変わっているのでしょうか。

やまだ:たとえばトルクなんかも当初は、ただ単に嫌なやつみたいな感じでしたし、ウォリスもキザなイケメンでしたね。それに女の子もいっぱいいて、その子たちが「アルマーク、かっこいい!」みたいになる物語を、当初は想定していたと思います(笑)。

――当初の想定のままだったら、キャラクターも物語そのものも、今とはまったく違った作品になっていたかもしれませんね。それでは次に、柚ノ木先生が小説を読んで感じた、主人公・アルマークの魅力を教えていただきたいのですが。

柚ノ木ヒヨト(以下“柚ノ木”):いっぱいあるんですが……(笑)。南にいるけど北のことを思い出したときのアルマークのかっこよさというか、ギャップが一番の魅力なのかなと、個人的には思いますね。北の一面が出れば出るほど、どんどん切なくなってくるといいますか。
 あとは、ちょっとネタバレになるかもしれませんけど、やまだ先生がWEB版で書かれている、アルマークが南へ行くまでの外伝では、今のアルマークとはだいぶ違うなっていうのが感じられるので、よければそちらも読んでほしいですね。こちらも早く書籍にならないかなと思っています。

――ほかに好きなキャラクターを挙げるとしたら?

柚ノ木:基本的にみんな好きなんですが、書籍で登場している子たちだと、モーゲンとトルクは感情移入できて好きですね。あとは、まだ書籍では登場していないんですが、キリーブという子がいまして。その子は感情移入とはまったく違うベクトルでお気に入りです。キリーブはわたしの解釈でいうと、とてもおしゃべりな子で、ちょっとギャグ寄りな感じがあって扱いもコミカルなんですが、外伝に低学年の子を諭すようなシーンがありまして、そこで彼は芯がある子なんだとわかって。そういう芯があって曲がらないところが推しですね。

やまだ:モーゲンについては、アルマークとは違うベクトルのかっこよさを書きたいと思いました。アルマークが大人と斬り合って全員倒すというのは、超人的なかっこよさなんですが、モーゲンの場合は、誰でもできるといえばできるけど、実際にはなかなかできないというような、「平凡の強さ」みたいなかっこよさがあります。柚ノ木先生の漫画ではモーゲンをすごくかわいく描いていただいていて、すごくありがたいですね。
 トルクはいわゆる、ガキ大将的なキャラクターで、口は悪くて憎まれるけど、不良ではないんですよね。校則を破ったりとかはしなくて、ただ自分のプライドとかもあって、周りへの当たりがとにかく強い、というようなキャラクターです。僕としては決して悪い人間ではなくて、たまに出る優しさが魅力的なんじゃないかなと思っていて、自分でもついつい入れこんで書いてしまうキャラクターでもありますね。
 キリーブに関しては、本当によくしゃべるキャラクターで。彼が出てくる話は確実に文章量が増えてしまうというくらいにはしゃべるキャラクターなんですが、まさか柚ノ木先生から名前が挙がるとは思いませんでした。彼はまだ小説4巻でも登場していないキャラクターですが、この先、ほかにも魅力的なキャラクターはたくさん出てきますよ。

――柚ノ木先生は、漫画だけでなく、小説3巻からのイラストも担当されていますが、WEB小説の外伝まで熟読されているようで、本作への愛が感じられますね。

柚ノ木:もともとは本作の漫画化企画が立ち上がったのをきっかけに作品を読み始めたんですが、もうすっかり好きになってしまって。それで、実際に漫画を描く前に、編集部からふたつのシーンを指定されてお試しで描くことになったんですが、指定された範囲外まで描いてしまったんですよね。この作品に関わることができて、本当に光栄です。

やまだ:柚ノ木先生は、すごく細部まで小説を読みこんでくださっているんですよね。僕は文章を書いていても、具体的な映像はあまり浮かばないほうなので、柚ノ木先生の作品を見て、逆になるほどと感じるくらいで、とてもありがたく思っています。

これからがおもしろさの本番

――小説3巻や新刊となる4巻は、WEB版から大幅にエピソードが加筆されているということですが、どういう思いから加筆されたのでしょうか。

やまだ:WEB版の時点では、ストーリーを展開させることを優先していたので、正直、自分でも固まっていなくて、触れずに放置していた部分もあったんです。キャラクターの背景とか、世界設定とか、書籍版として出す頃にはそのあたりも自分のなかでだいぶ固まってきていたので、それを踏まえたうえで書籍化したいと思ったのがひとつですね。
 あとはやっぱり、WEB版を読んできてくださったみなさんのおかげで書籍化できたというのがあるので、その方たちが、先のストーリーを知っているとしても、読んでよかったなと思えるものを、という思いで加筆に至りました。

柚ノ木:WEB版と書籍版の両方を読んでいる身としては、「闇」のこととか、『アルマーク』の世界観には謎が多いなというのが、あらためて感じられました。3巻、4巻の加筆部分を読んで、物語はどうなっていくんだろうって、先がもっと楽しみになりましたね。

――そんな小説4巻のメインエピソードとなる「武術大会編」の見どころを、ぜひ語っていただきたいです。

やまだ:3巻まではアルマーク個人や、3年2組がフォーカスされていたんですが、この「武術大会編」からは学年全体、学院全体に焦点が移って、物語自体の広がりを感じてもらえると思います。

柚ノ木:武術大会ではひとクラス10人ずつという、すごく多い人数の戦いになるんですが、どの戦いも全部かっこいいんですよ。ネタバレになるのであまり言えませんがこれ、いずれ漫画でわたしが描くんですか……?って、絶望しました(笑)。

――クラスメイト10人それぞれの戦いを書くのは、かなり苦労されたと思いますが……?

やまだ:武術大会は5人1組での戦いなので、序盤の展開で、じゃあこの先は誰が勝って、誰が負けるんでしょと予想されてしまうので、キャラクターのストーリーや成長に重点を置きました。仮に勝敗の予想がついたとしても、おもしろいと思っていただけるように。

――小説でも漫画でも、それぞれのメディアならではの楽しさがあると思いますが、おふたりはどのようにお考えでしょうか?

やまだ:小説のおもしろさというのは、文章から自由に読者の方が想像していただけるという、イメージの豊かさだと思います。僕は読者のみなさんの想像力を信じているので、アルマークも、ほかのキャラクターも、外見に関する描写をあまり書いていないんですよね。読者の想像力の邪魔にならないよう、端的にわかりやすい文章を心がけています。

柚ノ木:漫画は、小説に比べると読むハードルが低いと思っているので、小説を読む前の入口みたいな感じで読めるものなのかなと思っています。わたしは漫画は最初、流し読みをしちゃうタイプなんですが、それでもなんとなくはストーリーがわかりますし、そのあとで読み直すと新たな発見もあったりして、そういうところも個人的には好きですね。

――それでは最後に、今後も小説や漫画で『アルマーク』を楽しんでくださるファンへ向けて、おふたりからメッセージをお願いします。

やまだ:『アルマーク』はいろいろな年代の方にそれぞれの視点で楽しんでいただける作品だと思っています。これからがおもしろさの本番かなと思っておりますので、ぜひともアルマークと一緒に、学院生活を楽しんでいただけたらと思います。

柚ノ木:『アルマーク』は個人的に、高校時代に読みたかったなと思うくらい、友人関係が素敵な作品なので、できれば中学生や高校生の方に読んでいただきたいと思っています。それと、わたしとしては、みなさんのファンアートも見てみたいですね。イラストに関しては自給自足で楽しんでいるような感覚なので、ほかの方が描いたイラストも楽しみたいです。

――本日はありがとうございました!

取材・文●瀧田伸也




『アルマーク』書籍一覧

原作小説(MFブックス)一覧

アルマーク1 魔法学院入学編
アルマーク1 魔法学院入学編
著者:やまだのぼる イラスト:出水ぽすか
北の傭兵の息子は、南の魔法学院を変えていく――。

戦乱の絶えない北の地で、傭兵の息子として生まれたアルマーク。彼は南から来た老人に魔法の才能を見出されるが、傭兵として成長し、幼くして一人前の戦士となる。しかしアルマークの父は、彼に平和な南の地で魔術師となることを望む。父との約束に従い、アルマークは旅に出る。ノルク魔法学院に入学するために。

二年の旅を経てたどり着いた南の学院での暮らしは、北の戦場とはすべてが違っていた。平和な南の国々では魔法が発達し、北の傭兵は蛮族と見なされていた。傭兵の出自を隠さざるを得なかったアルマークは、同級生の少女・ウェンディたちの助けを借りながら、魔術師としての一歩を踏み出す。しかしクラスでは、貴族と平民の間に見えない溝が横たわっていた。アルマークは北の傭兵としての力をもって、クラスメイトたちを、そして学院を変えていく――。

彼は、自分が既に闇を巡る長き戦いの渦に巻き込まれていることをまだ知らなかった……。
試し読みする
書誌情報&購入はこちら
アルマーク2 北からの暗殺者編
アルマーク2 北からの暗殺者編
著者:やまだのぼる イラスト:出水ぽすか
夏の休暇、少女に迫る魔の手。アルマークは彼女を救えるのか!?

ノルク魔法学院に入学し、初めての夏を迎えるアルマーク。夏の休暇は多くの生徒たちが実家に帰るが、遠い北の出身であるアルマーク、そして両親が忙しいモーゲンは、休暇中も寮に留まる。そんな二人を、王都の自分の家に遊びに来ないかとウェンディが誘う。

休暇前の試験をなんとか突破し、ウェンディを訪ねるのを楽しみにする二人だったが、そんな中、彼女から手紙が届く。家に脅迫文が送りつけられる事件が起き、ウェンディは王都よりさらに北の領地へ逃れることになったため、二人を招待できなくなったという。手紙の中で落ち込むウェンディ、そして残念がるモーゲンを見て、アルマークはたとえ遠くであっても、モーゲンと共にウェンディを訪ねることを決める。しかし道中、王都で二人が耳にしたのは、ウェンディの命を狙う北の傭兵たちの話だった。

アルマークとモーゲンは、ウェンディを救うことができるのか……!?
試し読みする
書誌情報&購入はこちら
アルマーク3 闇の遺跡編
アルマーク3 闇の遺跡編
著者:やまだのぼる イラスト:柚ノ木ヒヨト キャラクター原案:出水ぽすか
アルマーク、ついに闇に触れる!

夏の休暇中、ウェンディの屋敷から学院に戻ってきたアルマークとモーゲン。まだ学院に生徒が少ない中、寮の管理人・マイアは、二人にしばらく寮の仕事をこなすよう言いつける。雑用で寮の地下室を訪れたアルマークは、そこにいるはずのない闇の眷属、魔獣デリュガンに襲われてしまう。なんとか戦いを切り抜けたアルマーク。しかし彼はまだ、その出来事の意味に気づくはずもなかった。
休暇が終わり、クラスは来たる武術大会に向けた準備一色に染まる。アルマークは練習を重ねる中で、苦手な武術に苦戦するモーゲンに、秘密の特訓を提案する。ウェンディも加え、練習場所を探す三人。折しも日食のその日、庭園の先で彼らが出くわしたのは、学院の地下に広がる怪しげな遺跡だった……。
試し読みする
書誌情報&購入はこちら
アルマーク4 武術大会編
アルマーク4 武術大会編
著者:やまだのぼる イラスト:柚ノ木ヒヨト キャラクター原案:出水ぽすか
それぞれが、クラスのために力を尽くす。さらに、大きな謎を呼ぶ試練…大幅書き下ろし!

ノルク魔法学院の武術大会は、多くの観客が、さらには王族までが訪れる、学院の二大行事の一つ。アルマークたち初等部の三年生は、クラス対抗の試合を行う。
一組と戦うのは、トルクチーム。トルクやウェンディたちは、一組のクラス委員・アインの作戦の前に苦戦を強いられながら、懸命に自分の力を発揮する。
一方アルマークは、学院に侵入した闇の魔術師たちとの戦いに巻き込まれ、深い傷を負う。彼はそのまま、昔ノリシュをいじめていた貴族たちのいる三組との試合に臨むことになる。ネルソン、モーゲン、レイラ……アルマークは仲間とともに全力で勝利を目指す。
さらに、アルマークとウェンディは、武術大会のあと、学院の遺跡で再び試練に見舞われる。その試練は、闇に、そして「門」に、大きな謎を呼ぶ……。
試し読みする
書誌情報&購入はこちら


コミックス(MFC)一覧

アルマーク1
アルマーク1
著者:柚ノ木ヒヨト 原作:やまだのぼる キャラクター原案:出水ぽすか
剣と魔法の本格ファンタジー、ついに開幕!

戦乱の絶えない北の地で傭兵の息子として生まれたアルマークは、『魔術師になる』という父との約束を果たすため、南の地にあるノルク魔法学院へ向け、長い旅に出る。
傭兵の息子という誇りを胸に、アルマークは魔術師への第一歩を踏み出す――。
試し読みする
書誌情報&購入はこちら
アルマーク2
アルマーク2
著者:柚ノ木ヒヨト 原作:やまだのぼる キャラクター原案:出水ぽすか
剣と魔法の本格ファンタジー、ついに開幕!

「魔術師になる」という父との約束を果たすため、ノルク魔法学院に入学したアルマーク。
隣の席のウェンディをはじめ、初めての学院生活や魔法の授業に慣れないアルマークをサポートしてくれる先生やクラスメイトたちだったが、友好的な態度をとる者ばかりではなく……。
試し読みする
書誌情報&購入はこちら
アルマーク3
アルマーク3
著者:柚ノ木ヒヨト 原作:やまだのぼる キャラクター原案:出水ぽすか
剣と魔法の本格ファンタジー、ついに開幕!

『魔術師になる』という父との約束を果たすため、ノルク魔法学院に入学したアルマーク。

トルクとの決闘を経て、クラスメイトとの仲を深めていくアルマークだったがある日、下級生のエルドが魔物・ジャラノンに攫われてしまったことを知る。

偶然居合わせたトルクは決意を固め、森の中へ駆け出したアルマークを必死に追いかける。

トルクは魔法で、アルマークは傭兵の息子としてそれぞれの力でジャラノンに立ち向かっていく――。
試し読みする
書誌情報&購入はこちら
アルマーク4
アルマーク4
著者:柚ノ木ヒヨト 原作:やまだのぼる キャラクター原案:出水ぽすか
剣と魔法の本格ファンタジー、ついに開幕!

『魔術師になる』という父との約束を果たすため、ノルク魔法学院に入学したアルマーク。

試験を終え、夏季休暇を迎えたアルマークはモーゲンとともにウェンディの屋敷に遊びに行くことに。

しかし、休暇に入って数日後、ふたりに届いたのは「ごめんなさい」という手紙だった。

父親の政敵に狙われるウェンディを救うため、アルマークとモーゲンは立ち上がる――。
試し読みする
書誌情報&購入はこちら
アルマーク5
アルマーク5
著者:柚ノ木ヒヨト 原作:やまだのぼる キャラクター原案:出水ぽすか
剣と魔法の本格ファンタジー、ついに開幕!

『魔術師になる』という父との約束を果たすため、ノルク魔法学院に入学したアルマーク。

夏季休暇にウェンディの屋敷へやってきたアルマークとモーゲンは、屋敷の人々と一丸となって傭兵の襲撃からウェンディを守りきることに成功する。

戦いの跡を目の当たりにした使用人のウォードとモーゲンに自身が北の傭兵の息子であることを認めたアルマークだったが、ウェンディの傭兵に対する強い憎しみの感情に動揺してしまう。

ウェンディが傭兵を憎むようになった過去とは――。
試し読みする
書誌情報&購入はこちら
アルマーク6
アルマーク6
著者:柚ノ木ヒヨト 原作:やまだのぼる キャラクター原案:出水ぽすか
剣と魔法の本格ファンタジー、ついに開幕!

WEBで1億PV超!剣と魔法の本格ファンタジー、第6巻!
試し読みする
書誌情報&購入はこちら

みんなにシェアしよう

  • インタビュー
  • 作家
  • イラストレーター