SHARE

『悪役家族』大黒尚人×『フルメタFamily』賀東招二スペシャル対談! ライトノベルで“家族”を描くということ(中)

ファンタジア文庫
ファンタジア文庫
2025/09/19
サムネイル
 ファンタジア文庫が誇る学園ミリタリーアクションの金字塔といえば、そう『フルメタル・パニック!』シリーズです。そのスピンオフ作品『フルメタル・パニック! アナザー』の著者が手掛ける完全オリジナル新作『悪役家族 ~偽りの最凶親子は平和を愛す~』が発売されるということで、今回メクリメクルでは特別特集をお届けしちゃいます。著者である大黒尚人と、彼に縁があり、もはや師弟のような関係性である『フルメタル・パニック!』著者の賀東招二のスペシャル対談インタビュー! ぜひ最後までチェックしてくださいね。

大黒尚人×賀東招二 スペシャル対談インタビュー(中)


『Family』の宗介とかなめなんて、
イチャつきまくってるんだから。


―――そんな流れで、監修と著者という役割分担で『フルメタル・パニック! アナザー』が始まったということですね。『アナザー』のあとがきにも書かれていましたが、かなりのスパルタ教育があったと聞いています。

大黒:そうでした。

賀東:僕はアニメの脚本とかも書くから。アニメの脚本会議のことをよく「本読み」っていうんですけど、あの形式でやっていただけなんです。大黒くんが初稿(最初の原稿)を上げてきて、僕が修正を入れていく。それで書き直してもらって、二稿~三稿と。最初の頃はけっこう行ったよね?

大黒:たしか最初は十二稿まで行きました。

賀東:そんなもんだよ。スパルタなんていうけど、そこは仕方ない。ここをああしてこうしてとか言ってる間に、もっと直そう、いいものにしようってやっていただけでね。結果的に厳しくなっちゃったけど、そこはやっぱり妥協しちゃいけないんです。

大黒:いや、本当に勉強させてもらいました。

―――プロット作りはどんな感じでしたか。

賀東:プロットも大黒くんが作ったものに修正を入れて、ざっくりこういう話で行こうとか、舞台はここにしようとか。

大黒:最初の頃は、書いている巻の打ち合わせをしながら、次の巻の大まかな内容を決めていきましたね。

―――大黒先生は、賀東先生の教えの中でどういったことが勉強になりましたか?

大黒:たくさんありますが、その中でもこれだというなら、細かい文章作法ですかね。自分ではあまり意識していないところを指摘されました。とにかく心掛けるようにと言われたのが、体言止め(文を名詞で終わらせること)が多いから減らせということです。

賀東:アクションシーンで体言止めを使うとテンポが良くなるんだけどね。アクションがない平時のシーンでは使わないようにお願いしました。

大黒:それは今でも心掛けていて、体言止めはよっぽど印象的なところ以外は使わないようにしています。あと、すごく印象に残っているのが「言った」という表現についてです。

賀東:そのこと、僕はよく言うんだけど、たとえば「宗介は言った」の「言った」ね。何回も「言った」っていう表現を使うと、書いている側としては気分が悪い。だからつい言葉を変えちゃうんです。「言った」じゃなくて「喋った」とか「言葉を紡いだ」とかね。特に新人はその傾向が強い。でも結局「言った」なんですよ、全部(笑)。

大黒:そうですね。

賀東:だから腹をくくって全部「言った」と書けと。読者にとって1ページに「言った」が4~5回出てきたってそんなに気にならないですよね。誰が何をしたのかが分かればいいんだから。つまんない言葉遊びにこだわって、自己満足で終わらないことが大切。

大黒:賀東さんにはとても丁寧に分かりやすく教えていただけたと思います。

賀東:そうしないと使いものにならなかったんだよ(笑)。

大黒:あははは(笑)。

賀東:でも、アクションシーンはそんなに修正を入れなかった。やっぱり上手かったんですよ。

―――大黒先生はもともとアクションシーンを書くのが得意だったということで、何か影響を受けたものがあったのでしょうか。

大黒:時代小説が好きだったので、その影響があるかもしれません。昔から、歴史については興味があったので、そういう本を読むのも好きでしたし。

賀東:そうだったよね。そのあたりの知識とかは『アナザー』にも活かされてたと思う。

―――それで結果的に『アナザー』は、2011年から2016年までの5年間、全13巻の大人気シリーズになりました。

賀東:あれよあれよという間に(笑)。僕たちだけじゃなくて、メカデザインの海老川兼武さんと渭原敏明さんもフル回転でした。

大黒:『アナザー』のASが「ROBOT魂」でも出てましたもんね。それも、けっこうな数。

賀東:本当によく「ROBOT魂」で出してくれたよね(笑)。

大黒:それだけファンに支持されたということだと思ってます。

alt
©️賀東招二・大黒尚人・四季童子・海老川兼武・渭原敏明

―――今回、大黒先生の新作『悪役家族』がめでたく刊行されることになりました。この作品を執筆するに至った経緯を教えてください。

大黒:『アナザー』のあと、色々と新作のプロットを編集部に出してはボツになるというのを繰り返していたんです。それで、しばらくふて寝状態だったときに読んだのが『フルメタル・パニック! Family』でした。『Family』では、宗介とかなめという、かつてのヒーローとヒロインが親世代になってるじゃないですか。そのあたりがすごく参考になりました。ボツになったネタの中に特撮ヒーローものの構想があって、このネタをもうちょっと上手く使えるんじゃないかなと。つまり、特撮ヒーローが活躍したあとの物語を書いたらどうだろうと考えたんです。

賀東:なるほど。そういうことだったんだ。

大黒:ヒーロー物の後日談みたいな形式でやったらどうかと提案したら、けっこう編集部の反応がよかったんですよ。

―――『フルメタFamily』が人気を博していたので、家族ものがライトノベル読者に受け入れられる空気があったということでしょうか。確かに、かつての『フルメタ』の読者は親世代になっています。

賀東:『Family』を書き始めたときは、そんなに意識していなかったと思う。そもそも短編を書いてそれでおしまい、くらいの話だったからね。

大黒:『アナザー』の始まりのときと同じだったんですね(笑)。

賀東:『フルメタ』がシリーズ25周年ということで、何かやってくださいって言われたんだよね。じゃあ子供を作ったことにしちゃえ、と(笑)。それで四季童子さんと急遽打ち合わせすることになって、そこからあっという間というか。結局スピード感が大事だということかな。でも、家族ものを書くのは難しい。独身の読者もけっこういるからね。宗介の友だちで風間くんっていたじゃない。彼を『Family』に出すとき、独身って設定にしたんです。そしたら、すごくホッとしたという感想をもらったりして。

大黒:ああ。なるほど。

賀東:独身の読者にとっても自分の居場所があるっていう感覚というか。そのあたりも考えて、家族ものは書かないといけないかもしれないね。

―――『悪役家族』が現在の設定になるまでには、どのような経緯がありましたか?

大黒:当初は、パパのユウマを元・怪人に、奥さんのレナを元・ヒーローにしていたんです。

賀東:あ、そうだったの? 僕はユウマが元・ヒーローで、レナが元・怪人の方が座りがいいなとか思いながら読んでた。

大黒:賀東先生とは発想が逆だったんですね。結局、編集部との打ち合わせを重ねて「両方とも元・怪人でいきましょう」ということになりました。

賀東:まあ両方ともキャラクターが立ってるからいいんじゃないかな。でもさ、ユウマとレナが6年間も一緒に暮らしてて何もしてないって、さすがにおかしくない?(笑)

―――たしかにユウマとレナはプラトニックですよね。

賀東:だよね。いいじゃん、もっとやっちゃって(笑)。『Family』の宗介とかなめなんて、イチャつきまくってるんだから。

大黒:なるほどです。

賀東:だからさ、アルフに言わせるんだよ。「弟がほしい」って(笑)。まあ弟でも妹でもいいけど、わがままで言ってる感じじゃなくて、本当に深刻に悩んでるぐらいのテンションで。そしたら「じゃあ作るか」ってなるから(笑)。

大黒:あははは(笑)。

賀東:でさ、まわりの大人たちも「弟を作るためにはこういうことを頑張らないといけないんだよ」ってアルフをたきつけて、たとえばニンニクエキスを二人に渡すとか(笑)。

大黒:なんと偏った知識を(笑)。二人が困るような発言をさせるんですね。

賀東:それで家族旅行とかに行ったときに、アルフはどっかに行っちゃうんだよ。「パパとママ、どうぞごゆっくり」って感じで(笑)。

大黒:空気を読むアルフ(笑)。それはすごく読みたくなりますね。

賀東:とにかく奥さんのレナをその気にさせないとね。ちなみに二人は同じベッドで寝てる設定なの?

大黒:まあそうです。

賀東:それで6年間、何もない? それは何か理由をつけないとおかしいよね。

大黒:一応、レナは最高幹部で、ユウマは彼女の護衛という立場だったので。それこそ、ユウマは『フルメタ』本編の宗介みたいな感じですね。

賀東:確かに。一緒に暮らし始めて最初の1~2年はそれどころじゃない感じはあるかもね。でも4~5年あたりになっても手を出さないなんて。そうだ。実は二人にはもう既に色々なことがあったんだけど、レナはそのときお酒を飲んでて、酒癖が悪いから憶えてないとか(笑)。

大黒:なるほど(笑)。

賀東:酒のせいで記憶がないんだよ。もう次から次へとアイデアが出てくるよ(笑)。あと、1巻の中でユウマがレナにプロポーズするシーン、ちょっとボカした描き方になってたけど、二人はキスしたの?

大黒:はい。してます。

賀東:本当? 全然描写が足りないよ! もっとエロくしないと(笑)。

大黒:すいません。ちょっと照れがあって(笑)。

賀東:せっかくおいしいところなんだから。読者はそこが見たいはず(笑)。もっとイチャイチャさせてほしいなあ。ぜひ次の巻に期待したい!

大黒:2巻が出たときは、二人のイチャイチャから始めましょうか(笑)。



記事トップページへ

関連書籍

大黒尚人 (著者) / 東西 (イラスト)
ファンタジア文庫
試し読みする
この家族、全員悪役、でも幸せ。
=================
「フルメタ」スピンオフ
『フルメタル・パニック! アナザー』
著者 大黒尚人

TVアニメ化
『陰の実力者になりたくて!』
イラストレーター 東西

大注目のタッグが放つ新シリーズ!
=================

世界の暗部に潜み、その頂点に君臨してきた闇の組織――
秘密結社〈ノア〉は、その身から出た錆によって呆気なく壊滅した。

組織の最高幹部だった天才美女・隅洲レナ、
彼女の護衛を務めていた孤高の戦闘士・上村ユウマ、
そして、結社が最後まで秘匿し続けた最終兵器【α】
……だった少女・アルフ(究極の生体兵器)。

闇の組織から放り出された三人に下された『新たな指令』は……
“普通の家族”として平和に暮らすこと!?

最凶とも叫ばれる規格外な特殊能力を身体に宿しながらも、
それを(できるだけ)隠して、平穏な日常を送ろうと奮闘する、
《偽りの親子》が贈る、悪役×アクションストーリー!
大黒尚人 (著者) / 四季童子 (イラスト) / 賀東招二 (原案・監修) / 海老川兼武 (メカデザイン) / 渭原敏明 (メカデザイン)
ファンタジア文庫
試し読みする
『フルメタル・パニック!』の新プロジェクトが2011年夏始動!!
900万人が愛したライトノベルの最高峰『フルメタル・パニック!』の本編が終了して1年。ついにあれから十数年後の世界を描いたスピンアウト作品がファンタジア文庫でミッションスタート!
賀東招二 (著者) / 四季童子 (イラスト)
ファンタジア文庫
試し読みする
新たな任務は……家族との平和な日常!?
「フルメタ」が帰ってくる! 衝撃の新シリーズ、開幕!!

「やはり武器が必要だ。クローゼットにあるから取ってこい」
世界の存亡を懸けた最終決戦から約20年後――相良宗介は千鳥かなめと結婚し、平穏な日々を送っている……ハズだった。
「お父さん、いつものカービンとグレネードでいいのね?」
「また隠し持ってたのね!? 毎回毎回、『武器などいらない』って言っといて!」
「母さん、敵が来るから。文句はあとあと」
女子高生ながら父親譲りの戦闘力を誇る愛娘・夏美、小学生ながら凄腕ハッカーの顔を持つ息子・安斗――規格外な子どもたちまで加わった相良家の辞書に“平和”の文字は無く……!?
宗介ファミリーの刺激的な日常を描く、衝撃の新シリーズ!
賀東招二 (著者) / 四季童子 (イラスト)
ファンタジア文庫
試し読みする
誰もが夢に描いた最上級のエンターテイメントがここにある!
楽しい学園生活、美少女を守る最強の男の子、巨大ロボット、次々襲い掛かってくる危機!年代を問わず誰もがワクワクする物語が読みたいならフルメタにお任せ!第1巻を読み終えた時、きっとあなたはフルメタファン!

みんなにシェアしよう

  • コメディ・ギャグ
  • バトル
  • アクション