12/28(日)まで開催されていた「ライトノベル展2025」をスペシャルな描き下ろしイラストで飾った15作品を、年末年始の毎日ご紹介する特別連載特集!
「名前は知ってたけど、お話は知らないかも……」「気になってたけど、どんなお話なんだろう?」といった未読の方へ、作品の見どころをお届けします。
第11回目は電撃の新文芸の『神の庭付き楠木邸』。本記事を読んで気になった方は、ぜひこの機会に本編をチェックしてみてください!
『神の庭付き楠木邸』
(著:えんじゅ イラスト:ox /電撃文庫)
自然に囲まれた田舎で、庭付きの広い家に住み、もふもふの生き物とともに美味しいご飯を食べたりして、穏やかな生活を送る――。そんな絵に描いた余生の過ごし方のような平和なスローライフに、神様や霊獣はては陰陽師といった神秘的な世界観が融合した新感覚の物語が本作『神の庭付き楠木邸』です。
物語の舞台となるのは、主人公である楠木湊がある日親戚の死をきっかけに一時的に住まうことになった一軒家、楠木邸。立派な庭がある古風な屋敷ですが、そこはなんと悪霊たちがはびこる“曰くつき”物件だったのです。ところが、本作のジャンルはホラーやオカルトではなくほのぼのスローライフ。なんと湊は生まれつき持っている“穢れを祓う力”によって、悪霊たちを楠木邸に住み始めて早々に一掃してしまうのでした。さらに、清められた楠木邸は神域とも呼ぶべき聖なる場所と化していき、結果としてそこを訪れる様々な神々との不思議な交流が始まっていくのです。
本作の見どころはやはり何といっても、田舎暮らしのまったりとした日常の中に神秘的な出来事が加わることで描かれる独特の世界観でしょう。どこか人間味のある神様たちとのやり取りは、妙にほのぼのとしていて、読んでいてほっこりとした気分になります。そして主人公である湊の性格やキャラクターも魅力的。もともと小さい頃から人ならざるモノが視えていたからかもしれませんが、色んな不思議に出会っても自然と受け入れて共存していくような姿勢がなんだかちょっぴり可笑しく、それでいて読んでいるこちらも大らかな気持ちになっていくのです。相手が神様だろうとなんだろうと、分け隔てなく接する姿勢こそが、きっと本作の優しい雰囲気を作り出しているのではないでしょうか。
また、湊が持つ“祓いの力を文字に宿すことが出来る”という能力も、本作の展開を作り出すのに一役買っています。それは、主人公らしく規格外の力であり、ただの買い物メモが強力な護符になったり、表札に結界の力を付与したりと凄まじい効力を見せつけてくれるのです。だからこそ、湊の周囲に集まってくる神様たちもまた、とてつもない力を持っているわけですが、なんとなく畏れ多い感じになり過ぎず、程よい距離感で一緒にいられるのかもしれません。もちろん、イラストレーターであるOXさんの描く、もふもふで可愛げたっぷりの動物の姿もフレンドリーさの演出に一役買っているのは間違いありません。
仕事や学業、そういったものから解放されて束の間、とにかくハッピーでハートフルな物語の世界にどっぷりと浸かりたい……そんな方にぜひ楽しんで欲しい一冊です。
文:阿月シオ

キャラクター紹介
1. 楠木湊(くすのき・みなと)
親戚から曰くつき空き物件の管理人を任されたことをきっかけに、二十四歳にして初の一人暮らしを始めた青年。幼い頃より人ならざるモノが視えたり、無自覚ながら書いた文字には並の陰陽師を遥かに凌ぐほど強力な「祓いの力」を宿すことが出来る。
2.山神(やまがみ)
楠木邸の隣にある山の神。純白の獣の姿をしており、湊の持つ規格外の力によって悪霊が一掃されたことで過ごしやすくなった楠木邸の庭を気に入る。出会った当初は力が弱まっていたが湊とともに過ごすうち力を取り戻していく。甘味好きな一面も。

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