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【あの作品ってどんな話?】「偽りの聖杯」を巡る、歪んだ戦いと駆け引き。群像劇の名手が描く、もうひとつの『Fate』シリーズ『Fate/strange Fake』をご紹介!

電撃文庫
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2026/01/04

 12/28(日)まで開催されていた「ライトノベル展2025」をスペシャルな描き下ろしイラストで飾った15作品を、年末年始の毎日ご紹介する特別連載特集!
 「名前は知ってたけど、お話は知らないかも……」「気になってたけど、どんなお話なんだろう?」といった未読の方へ、作品の見どころをお届けします。

 第15回目は電撃文庫の『Fate/strange Fake』。本記事を読んで気になった方は、ぜひこの機会に本編をチェックしてみてください!


『Fate/strange Fake』
(著:成田良悟  イラスト:森井しづき 原作:TYPE-MOON /電撃文庫)

 選ばれし魔術師たち。英雄の召喚。あらゆる願いを叶える願望機「聖杯」――。ファンタジー好きならば思わず胸が高鳴るような魅力的なキーワードがずらり並ぶ本作。しかし、描かれるのは決して、勧善懲悪で語れる英雄譚ではありません。そこにあるのは、欺瞞や食い違う正義、国家規模の陰謀が複雑に絡み合った、奇妙に歪んだ戦いの舞台です。

 まずは少しだけ、本作の核となるシリーズ作品『Fate』について解説をば。『Fate』とは、2004年発売のPCゲーム『Fate/stay night』から始まるシリーズ作品の総称。魔術師たちの織りなすバトルロワイヤル「聖杯戦争」を多彩なキャラクターの視点から多角的に描いた群像劇です。なお、『Fate』シリーズを語るうえで欠かせないのが、パラレルワールドの概念。本作の原点である『Fate/stay night』では、聖杯戦争の結末が3つの世界線に分けて描かれており、これは「選択の数だけ世界が分岐していく」という平行世界の構造そのものといえます。

 今回ご紹介する『Fate/strange Fake』の見どころは何といっても、本シリーズの根底にあるこの多世界解釈を限界スレスレまで突き詰めて可視化しているところでしょう。上述したとおり、作中では「正史」がひとつに定まっておらず、そしてどの結末も否定されることなく並列に存在しています。その懐の深さこそが本作の大きな魅力でもあるわけですが、しかしここは声を大にして言いたい。「いやいやいや、限度ってものがあるだろう!!」と。

 何しろ本作で描かれる聖杯戦争は、最初から最後まで曲者揃いのイレギュラーだらけ!  まず、本来ならば日本の冬木市で行われるはずの聖杯戦争が、何を間違ったのかアメリカ西部の都市・スノーフィールドで発生します。そして、争いに参加する魔術師「マスター」も、彼らに召喚される伝説の英雄「サーヴァント」も選ばれるはずのない異能者だらけ、というかそもそも聖杯そのものの真偽も怪しいという、あらゆる面において歪みきった争いが開幕。

 もはやこの世界における常識や従来のルールは形骸化し、物語は意図的な逸脱の上にかろうじて成り立っています。ある意味では、当シリーズの根底にある多世界解釈を最も過激な形で提示する作品といえるかもしれません。それでも本作が多くの読者を引きつけるのは、限界を超えてなお成立してしまう、本シリーズならではの世界観の強度ゆえなのでしょう。

 そしてもちろん、多彩なキャラクターが織りなす会話劇や緊張感溢れる駆け引きの数々も、本作の見どころのひとつです。何といっても、成田良悟先生といえば『BACCANO!』や『デュラララ!!』に代表される群像劇の名手。一見すると脇役に見える人物がいつのまにか物語の核心に迫っていたり、思いもよらぬ形で立場を反転させたりと、さまざまな思惑をもって物語をかき回していく様はまさに圧巻! 『Fate』ファンはもちろん、群像劇が好きな人や先の読めない物語を求める人にもぜひおすすめしたい一作です。

文:糸野旬

 『Fate/strange Fake』2巻書影
『Fate/strange Fake』2巻書影

キャラクター紹介

1. アヤカ・サジョウ
アメリカ・スノーフィールドで聖杯戦争に巻き込まれる少女。年齢は10代後半ほどで、髪を金色に染め、眼鏡をかけている。聖杯戦争1日目にセイバーのサーヴァントと邂逅するが、自分がマスターであることを頑なに否定し、戦いへの関与を拒む。

2.セイバー
スノーフィールドのオペラハウスでアヤカの前に現れたサーヴァント。赤毛混じりの金色の髪と獣のように爛々と輝く瞳が印象的な騎士風の男。古い西洋の王侯貴族を思わせる威厳ある雰囲気をまとい、赤と銀を基調とした荘厳な甲冑装束に身を包んでいる。

『Fate/strange Fake』
『Fate/strange Fake』 ©成田良悟/TYPE-MOON 2025 イラスト/森井しづき

  • ファンタジー
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  • 糸野旬

関連書籍

  • Fate/strange Fake 1
    Fate/strange Fake 1
    あらゆる願いを叶える願望機「聖杯」を求め、魔術師たちが英霊を召喚して競い合う争奪戦──聖杯戦争。
     日本の地で行われた第五次聖杯戦争の終結から数年、米国西部スノーフィールドの地において次なる戦いが顕現する。

     ──それは偽りだらけの聖杯戦争。

     偽りの台座に集まった魔術師と英霊達。
     これが偽りの聖杯戦争であると知りながら──彼らはそれでも、台座の上で踊り続ける。
     真偽などは彼岸の彼方。
     聖杯ではなく──他でもない、彼ら自身の信念を通すために。
     そしてその時、器に満ちるのは偽りか、真実か、それとも──。

     成田良悟と奈須きのこがタッグを組み、イラスト・森井しづきが彩る『Fate』の新プロジェクトが遂に本格始動!!
    成田良悟 (著者) / 森井しづき (イラスト) / TYPE-MOON (原作)
    発売日: 2015/01/10
    • ファンタジー
    • バトル
    • 現代
    • 異能/能力
    • 魔法/魔術
    • アニメ化
    • ノベライズ
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