2025年12月19日からSHIBUYA TSUTAYAにて開催される「ライトノベル展2025」。当該イベントにおいて、ライトノベル×音楽の新たなコラボレーションとして製作された企画展示「ラノオト」。本企画内の【ラノオト 2010年代ライトノベル×『High Free Spirits』/TrySail】では新しいコラボレーションが実現しました。
「High Free Spirits」がリリースされたのは2016年5月11日。コラボMVでは楽曲と同時期……2011年~2020年に発売された人気ライトノベルと合わせた展示となっているので、ぜひチェックしてください。
加えて今回は「メクリメクル」おなじみの(?)本棚拝見企画も実施。三者三様の本棚をご覧ください!
この曲をライブで歌うと、お客さんの反応がすごいんですよ。
――今回コラボ楽曲に選ばせていただいた『High Free Spirits』は、みなさんにとって、どういった意味のある楽曲ですか?
夏川椎菜(以下:夏川):この曲は初めての正統派ロック。カッコよくて力強くライブで映える歌声を求められたんです。当時の私には、それはかなりの挑戦。だから、とにかくそのときの全力を出す!という気持ちで挑みました。
麻倉もも(以下:麻倉):私も、この楽曲の制作時は、熱さを求められるのって結構苦手分野だったんですね。だから、かなり悩んだ記憶があります。でも、この曲をライブで歌うと、お客さんの反応がすごいんですよ。TrySailと言えばこの曲!というくらい認知していただいた。TrySailというものをちゃんと形作ってくれた曲だと言えると思います。
雨宮天(以下:雨宮):私自身は、もともとかっこいいロックな曲が好き。新人の若い女の子のユニットだと、どうしてもかわいい路線になりがちなので、この曲をいただけたことは私の中での希望になりました。それだけに、ここで見せつけてやる!という気持ちで臨みましたし、かわいい路線だけのユニットではなくなったのもこの曲のおかげだと思っています。

――この楽曲が使われる映像部分は、2010年代のライトノベルを振り返る内容。2011年~2016年あたりって、どんな時間でしたか?
麻倉:私は2012年がデビューなので、今やっている全てを知った時期ですね。2015年にTrySailを結成し、2016年にはソロデビューもしたので、本当に激動。2010年には想像もしていなかった未来でしたけど、今考えると私の基礎を作った時期だったと思います。
雨宮:私の、この5年間のテーマは“舐められたくない!”だったので(笑)、日々戦うように生きていたと思います。でも、そのおかげで多くを学びましたし、本当に強くなった。周りと以上に自分と戦っていて妥協しませんでしたから。だから、今、辛いことにぶち当たっても、あのとき乗り越えたんだから大丈夫! そう思える自信にも繋がっています。
夏川:私もその5年間は勉強しようと思っていた時期だったので、
ラノベもめちゃめちゃ読みました。今回のラノベ展で流れる映像も楽曲に合っているのはもちろん、印象的なシーンを使った豪華なものになっている。とても見応えある作品に仕上がっていて嬉しいです。
――そして、現在TrySailは10周年イヤー中ですよね。
夏川:はい。それだけに2015年は、とにかく過去を振り返ることが多かったです。だから、昔の自分はこうだったけど、今の自分はこうなれたから成長したなとか、逆に、今は忘れかけている思いを思い出したりしました。でも、そういう機会でもないと過去を振り返ったりはしないと思うので、このタイミングで思い出せてよかったですね。それに振り返ったことで、この先10年、どうしていこうかな? ということも改めて考えた。この10年でも、いろんなトピックスがあったということは、次の10年もきっといろんなトピックスが発生しうるわけじゃないですか? だとしたら、そのときそのときで自分にとっていい選択をしよう。そう改めて思えた1年になりました。
――やっぱり濃い10年でしたか?
夏川:濃かったです。たぶん人生の中で、これ以上濃い10年はないんじゃないですかね? 自分が一番成長できた10年だと思いますし、自分が一番変われた10年でもあると思いますから。だから、それを振り返れたことに意義があると思っています。
麻倉:私、今年携帯を壊してしまって、10年間の思い出が全て消えてしまったんですよ!
――ええ~っ! それは悲しいですね。
麻倉:そうなんです。この3人の一番古いものだと、TrySailを組む前にラジオをやっていたんですけど、そのラジオイベントで撮った写真もありましたから。私、3人の中で、結構カメラ係だったんですよ。
夏川:そうだよね。記録係だった。
麻倉:そう。だから、2人の寝顔とか面白い写真もいっぱいあったんです(笑)。それを自分の不注意でなくしてしまったので、今思い出してもすごく苦しい気持ちになりますね。でも、だからこそ、ここからはさらにいっぱいカメラロールを増やしていきたい。携帯を壊してしまったのが、今年の4月くらいなので、その後に行われた10周年ツアーのときは、楽屋や日本武道館公演の打ち上げでもいっぱい回していました(笑)。来年も10周年を締めくくるライブがあるので、そこでもしっかり回します!
雨宮:私もTrySailの10周年で過去を振り返る中で、自分がすごく変化しているんだなということを改めて感じました。私は基本的に自分を変えたい、成長させたいと思うタイプなんですけど、今年やったTrySailのライブが、本当に楽しかったんですよ。そのとき、こんなに楽しめるようになったんだなって思いました。
――10年前とは違う感覚になったんですね。
雨宮:そうです。10年前は、それこそ舐められたくなかったですし、本当につらいことが多かったんですよ。でも、この10年間で自分を変えてきた結果、こうやって苦手だったライブも苦手だったユニット活動やダンスもちゃんと楽しめるようになった。それを強く感じました。そして、それはどうしたら自分が楽しめるのか? っていうように、自分がやっていることをしっかり見つめて研究してきたから。そういう意味では、2025年は、とても達成感のある年になりましたね。
――10年取り組んできたことが実を結んだんですね。
雨宮:そうですね。それに声優業に関しても、自分ってめちゃくちゃお芝居が好きなんだな! って気づいたんですよ。それも自分の中で大きな発見というか。たぶん、それって“好きだ”と思えるだけの余裕ができたということだと思います。やっぱり必死だと“好き”って言える感じでもないじゃないですか? でも、今は“好きなんだな”って思えているので、それも今の充実感に繋がっていますね。

――では、2026年は、どんな1年にしたいですか?
夏川:TrySailとしては、まだ10周年ライブ(2026年5月10日・グランキューブ大阪、5月17日・パシフィコ横浜)があるんですが、それで10周年イヤーが一区切りするんですね。だから、まずは最後まで10年分の感謝をお客さんと共有して、いい締めくくりができたらなと思っています。でも、そこで終わらないぞ! という気持ちも強くて。10年かけて培ってきて、私も今のTrySailのやり方や持っているものが、すごく楽しいんですね。それだけにもっとやりたいと思っているんです。だから、今後は、いい形でそれを伝えていけたらいいなと思っています。
――個人的には、いかがでしょう?
夏川:デビューしてからの10年で、自分にできることはちょっとずつ増やせてきていると思うんですよ。でも、私は自分でものを作ったり、想像したりするのが好きなんですね。だから、そういう自分でコントロールできる範囲を広げられるような勉強をしていけたらいいなと思っています。
――それは制作ということですか?
夏川:そうですね。例えばグッズを自分でデザインしてみたりとか、アニメーションMVとかを自分で作れるようになれたらいいなって。動画の制作とかは、一時期ハマってやっていたので、多少できるんですね。だから、そういう今できることと、今はできないけど頑張ればできそうなこと。それを掛け合わせていろいろ新しいことをしていきたいです。
――素晴らしい向上心ですね。麻倉さんは、まずはカメラロールを増やすことですよね(笑)。
麻倉:はい(笑)。たくさんの思い出を私の携帯に収めたいです。それに2025年の10周年イヤーのライブでは、いい意味で適当になれた気がするんですよ。私は、わりと考えすぎちゃうところがあって、こうじゃないとダメだ! っていう固定概念みたいなものを取り払うのが今までは難しかったんですけど、今回のツアーでは、新しい自分を見た気持ちになれたんです。
だから、それも含めて2026年5月の10周年イヤーを締めくくるライブが、とても楽しみ。2025年に感じた自分の変化を確かめたいという欲がありますね。でも、それを考えすぎちゃうと逆によくない気がするので、本当にお客さんと一緒に“打ち上げ!”っていう気持ちで楽しむライブにしたいです!
雨宮:2025年の10周年のツアーの最後の日(10月12日)に、もう何十回も歌ってきた曲を、まだ見たことのない感じでお届けできたんですよ。二次会のカラオケみたいなテンションで(笑)、本当に3人で肩を組んで横揺れしながら歌うことができた。それはこれまで全然知らなかった楽曲の一面だったので、自分たちの成長次第で、まだまだ曲の引き出しっていっぱいあけられるんだということに気づいたんです。だからこそ、2026年のライブは私も打ち上げみたいに楽しくやりたいですし、そうすることで、また新たな引き出しを開けたい。そう思っていますね。10年やった今だからこそ、何かにとらわれなくていい。自由に遊んでみた結果、何が出るのか? そのくらいの気持ちで大きく構えてライブに向かいたいです。
――素敵な10周年の締めくくりを迎えてください!
TrySailの本棚を拝見!
夏川:私はわりとミステリーやサスペンスが多いです。昔から図書室にあったアガサ・クリスティーや江戸川乱歩をひたすら読んでいた子供だったので。大人になってからは、綾辻行人さんや我孫子武丸さん、有栖川有栖さんといった作家さんが好きで、よく読んでいますね。でも、それとは別に映画化もされた『近畿地方のある場所について』のような、現実にありそうだけど、ちょっとホラーが入っているようなものも好きです。それに最近は、本自体で遊ぶことができるんですよ。QRコードが本の中に入っていて、それを読み込むと動画に繋がったり、グーグルのドライブに繋がって、ファイルが読み込めたりするんです。そうやってスマホを使いながら本を読むみたいな体験も好きなので、そうできる本を選んじゃいがちですね。紙で読む派だったんですけど、本が多くなってきたのもあって、最近やっと電子書籍を買いました。だから、ちょっとずつそっちでも読むようにしていますね。ただ、ここぞ! という小説は、やっぱり紙で選びがち。これは絶対に紙で読みたいというものはあるので、根本は紙派です。

麻倉:私は基本的には少女漫画が大好きなんですけど、その中の本当に好きなひと作品以外は全部電子です。そうしないと本当に場所がないので、泣く泣く電子にしているっていう感じですね。私、結構前から休日は、朝散歩して、図書館に行って、そこで本を読んだり、図書館に併設されたフリースペースみたいなところで、自分がやりたいことをやったりしているんですよ。そして帰りにパン屋さんに寄って帰る(笑)。そういう1日を過ごすのがルーティンになっています。やっぱり図書館に行くと、紙っていいなって思ったりしますしね。この間は、図書館にさかなクンのエッセイが置いてあったんですよ。そういえば、私が小学生のとき、初めて会った芸能人がさかなクンだったなって思い出して、ふと手に取って読んでみたんです。そしたら、めちゃくちゃ面白くて。人の人生が垣間見れるエッセイって面白いなって思ったので、また身近な方のエッセイが読んでみたいですね。大好きな少女漫画というのは『ときめきトゥナイト』です。紙も電子も持っています。いとこから借りて初めて読んだ少女漫画が『ときめきトゥナイト』だったんです。そこで衝撃を受けて大好きになり、何回も何回も読み込みました。今ではスマホの待ち受けも『ときめきトゥナイト』です(笑)。

雨宮:私は、友だち2人と集まって、3人で定期的に読書会みたいなことをしているんですよ。3人で次のときまでに同じ本を読んできて、ごはんを食べてお酒を飲みながら、自由に感想を言い合う会なんですけど(笑)。その関係で(電子書籍サービスの)青空文庫で読める、著作権が切れた作品をたくさん読んでいます。読書会を始めて、太宰治がすごく好きになりました。とても読みやすいですし、私も人が好きなんですけど、太宰作品をいろいろ読むうちに、この人もめっちゃ人が好きなんだろうなって思えるようになったので。そう思ったのは、太宰の作品の登場人物が人間臭いから。だから、小説なんですけど、本当にいそうな感じがしてくるんです。例えば、その物語の中に素敵な奥さんみたいな人物が出て来たとしても、素敵なだけじゃなく、弱い部分や偏った部分、おかしな部分があったりする。そういう人間らしい愛おしさみたいなのが各登場人物から感じられるので、それは結局太宰が人が好きなんだろうなって思って、さらに好きになりました。

取材・文●高橋栄理子
TrySail
麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜 。2014年結成、翌2015年年5月13日、シングル「Youthful Dreamer」をリリース、活動を開始した。2025年はデビュー10周年に当たり、8月27日にベストアルバム『BestSail』をリリース、2026年5月には10th Anniversary Live 2026 ”Cheers!!!”を開催。
関連情報
会期:2025年12月19日(金)~12月28日(日)
【1F】10:00~21:00/【7F】11:00~21:00
※12/19(金)は13時開場予定
場所:SHIBUYA TSUTAYA 1階・7階
入場料:無料(7Fコラボレーションカフェは別途ご飲食代が必要です)
主催:KADOKAWA
協力:SHIBUYA TSUTAYA
ライトノベル展2025公式サイト
■ラノオトとは
KADOKAWAとソニーミュージックのコラボレーションで実現した、ラノベと楽曲の世界観が融合した「ラノベ×ミュージック」ビデオです。様々なヒット曲と人気ラノベを組み合わせ、視覚と聴覚で新しい体験を誘います。
「ラノベ展2025」では、
本イベント用に新規ビジュアルが描き下ろされた作品とコラボした「ラノオト ライトノベル展2025×『ミチシルベ ~a road home~』/ORANGE RANGE」と、
同年代に発表されたラノベと楽曲のコラボ「ラノオト 2000年代ライトノベル×『空色デイズ』/中川翔子」「ラノオト 2010年代ライトノベル×『High Free Spirits』/TrySail」を発表します。