【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファンタジア文庫から11月20日に刊行された『無限治癒の狂戦士 〜最狂一族の末息子に転生した俺、冷遇されている回復魔法を極めて世界最強へと至る〜』です。みなさんの感想も聞かせてください!
RPGの戦闘では、往々にして回復手段が重要になってくる。いくらダメージを受けても回復すればまた戦えるというのは、もはや改めて説明するまでもないし、無限に回復が出来るなら大体のゲームは難易度がだいぶイージーだと思う。だけどこれって敵側の視点からすれば、たまったものではないはずだ。だって何度痛めつけてやっても回復によって立ち上がり、襲い掛かってくるわけで。これほど恐ろしいことって無いのでは?
そんなモンスターが涙目になってしまうような戦法を体現するのが、本作の主人公「不死身の狂戦士」アルドだ。彼は大怪我を負おうが、腕が飛ぼうが、即座に回復して戦闘を続行してくる。その鬼気迫る姿は狂気じみており、思わず背筋が寒くなるほどだった。ただの無双モノとは、どことなく違った異色の気配すら感じさせる。作中で何度もアルドの狂気は強調されるのだが、私はそこに別の側面を見出した。

アルドは、諦めないのである。いくらやられても倒れない闘争本能もそうなのだが、「回復魔法なんて」と揶揄されてもその道を究めようとする姿勢は、狂気からは程遠く、むしろ理性的で至極前向きな意思の表れだと感じた。彼は諦めないことの大切さを言外に語っているようにも思う。とかく諦めるという選択肢を頭の中の片隅に置いてしまう私にとって、このアルドというキャラクターのひたむきさが妙に刺さったのだ。それゆえに、我が道を真っすぐと進む彼の姿には憧憬を感じずにはいられない。もちろん能力を活用したバトルは見応えがあって、手に汗握る内容だったりもあるのだが、どこまでも一貫したキャラの魅力というのが本作では一番ぐっときたポイントかもしれない。
なにより、夢を諦めず突き進む人というのは純粋にカッコイイものだ。だからこそ私は、本作品を華々しい未来に見切りをつけ、現実を必死に生きている人たちに薦めたい。ただ真っ直ぐに、傷ついても傷ついても立ち上がる……そんな主人公にきっと背中を押してもらえるはずだ。
文:明日香 譲
ざっくり言うとこんな作品
1)ポーションがあれば回復魔法は必要なし? 軽んじられる回復魔法を努力と執念で最強の能力にまで高めあげる! 最弱が最強に変わる大逆転のストーリーは爽快感抜群。
2)アルドに宿る狂気と理性。理性的なままで闘いを求めてしまう狂気を飼いならす、新しい狂戦士の姿に痺れること請け合い!? 傷や痛みを乗り越えるアルドの壮絶な戦い方にも注目!
3)一族全員バトルジャンキー!? 闘争を尊ぶクレイヴンハート家の人々は誰も彼もが濃ゆい存在ばかり。そんな家族に認められていくアルドのサクセスストーリーも見逃せない!
主要キャラ紹介

アルド・クレイヴンハート
クレイヴンハート辺境伯の末子。「狂戦士」の職業を持ち、無限に闘い続けられる可能性のある回復魔法に目をつける。前世の記憶を持ちながらも、闘争に生きがいを求める転生者。

イリス・ルクセリア
ルクセリア王国第三王女。「剣聖」の称号を持つが、それゆえに常にプレッシャーを感じている。自分の思うがままに闘争を欲するアルドには、無意識の中で憧れを抱いている。

ナイミラ
「悠久の賢者」の異名を持つ謎の美女。古代魔術などにも通じており、回復魔法を闘い続けるための手段として考えるアルドに興味を惹かれ、彼の師匠として魔術を教える。

フィリア・クレイヴンハート
クレイヴンハート家の次女。アルドに対してはかなりのブラコン気味だが、学園では最強の名をほしいままとしている絶対王者。彼女の言葉がアルドの人生を変えることも。
- 読書感想文レビュー
- ファンタジー
- バトル
- 異世界
- 明日香 譲
関連書籍
-
無限治癒の狂戦士 ~最狂一族の末息子に転生した俺、冷遇されている回復魔法を極めて世界最強へと至る~退屈な人生を終え、俺は最狂と名高い戦闘一族の末息子・アルドという少年に転生した。前世のような孤独と退屈はもう二度とごめんだ。俺という存在を世界に刻むため、誰よりも強く、誰よりも鮮烈に生きようと鍛錬を続ける中。俺はふと考えた。
「誰もが回復ポーション以下と蔑む回復魔法を、極限まで極めれば、死なない狂戦士になれるのではないか?」
その日から俺は回復魔法を鍛え続けた。馬鹿にされ見下される中、ようやく俺はたどり着いた……。誰も到達できなかった、あらゆる攻撃からも即座に回復し、戦い続ける不死身の狂戦士に。この力で学園の、いや世界の頂点にだって立ってやる……!発売日: 2025/11/20ファンタジア文庫