【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は角川ビーンズ文庫から11月29日に刊行される『最強魔術師は死んだ妻しか愛せない 転生したら可愛い年下夫が過保護な溺愛夫になりました』です。みなさんの感想も聞かせてください!
“初恋”という響きは多くの人にとって、どこか恥ずかしくも甘酸っぱい記憶をくすぐられる言葉だと思います。けれども8歳のアルセニオの初恋、12歳年上の妻・ルビアへの思いには、世の中の初恋のイメージとはかけ離れた激重感情が詰まっています。
生まれた直後に母親に殺されかけ、結果的に彼女の命を奪ってしまい心に傷を負ったアルセニオは、以後も周囲の人々に疎まれて育ちました。そこに突如現れたルビアは太陽のように明るく朗らかな人柄で、アルセニオを優しく包み込み、彼の心の傷と孤独を癒していきます。ルビアとの出会いによって世界のすべてが変わり、少しずつ心を開いていくアルセニオの姿は可愛らしくて微笑ましくて、だからこそその後に訪れる悲劇的な別れに胸が潰れる思いがしました。
アルセニオに救いと絶望をもたらした重すぎる初恋と、以後16年もの間亡き妻だけを思い続ける純愛は、涙を誘わずにはいられません。こうした辛い時間があるからこそ、彼が後妻のルビィの正体に気づく瞬間は途方もなくドラマチックだし、大人になった今だからこそ可能な甘々の溺愛モードには熱い気持ちがこみ上げました。
弟のように思っていた子どもが成長した姿に戸惑いつつも、彼の思いを受け入れていくルビィの心情が丁寧に描かれているのも、個人的なお気に入りポイントです。年上妻×幼い夫という関係性だけでなく、年上夫×年下妻と立場が逆転した姿も堪能できるのが本作の大きな魅力です。一粒で二度おいしい年の差カップルの姿をぜひお楽しみください!
文: 嵯峨景子
ざっくり言うとこんな作品
1.前世の夫と今世の私が再婚! ルビア(年上妻)=ルビィ(年下妻)のギャップ。つい姉目線になってしまい、アルセニオに恋人がいると誤解しても「大切な人ができてよかった」と喜んでしまうほど。
2.一方の夫も幼い頃に叶えられなかった思いが爆発。妻を思いきり甘やかし、熱烈に口説いてくる! &軽々とお姫様抱っこまで!
3.ツンツンだったアルセニオが、16年たったらヤンデレに!? すべての善行も努力も妻のため! 一途すぎる愛に涙が止まらない。
主要キャラ紹介

ルビィ・タルク
タルク辺境伯家の令嬢でアルセニオの後妻。16歳でアルセニオに嫁ぐが、その直前に前世・ルビアとしての記憶を取り戻した。ルビア同様、貴重な精霊魔法の使い手で音痴。
ルビア・タルク
タルク辺境伯家の令嬢でルビィの前世。アルセニオの年上妻として彼の孤独な心を溶かすも、不審な男に襲われて結婚後わずか三ヶ月で命を落とした。貴重な精霊魔法の使い手で音痴。
アルセニオ・シルヴァ
シルヴァ公爵で次席宮廷魔術師。帝国始まって以来最強と言われる強大な魔力の持ち主だが、両親からは疎まれて育つ。8歳の時に12歳年上のルビアと政略結婚した。
- 読書感想文レビュー
- 溺愛
- 異世界
- 嵯峨景子