【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は角川ビーンズ文庫から11月29日に刊行される『仮初め家族の溺愛調査 ~元騎士令嬢、初恋の魔術師と魔王の子を子育て中~』です。みなさんの感想も聞かせてください!
品行方正な優等生や王子様キャラは好きですか? 正統派ならではの魅力があるとは頭では分かりつつも、歪み属性のあるキャラが好物な私は、少し物足りなく感じてしまうタイプです。そんな嗜好を持つ私にとって、よい意味でクセつよなキャラのオンパレードの本作は、大変好みの物語でした!
ヒーローのヴァレルドは苦労をしたカナン王国の王子時代を経て、フェデロス王国で魔術師となり、確かなポジションを築いています。途中までは善良な王子系に見えたヴァレルドが、わけあってイザベラとルアンと共同生活を始めた頃からどんどんおかしくなっていき(だいぶ誉めています!)、こちらのテンションも一気に上がりました。意外と研究者気質で異形の調査のためにイザベラの唾液を欲しがってみせたり、彼女への執着が深まった挙句に取る行動などにドキドキさせられました。もっと“闇落ち”したヴァレルドが見たいと、続巻へのエールを送ります。
個人的には、魔術師の一人のレクスも非常に刺さりました。変態でありながら観察眼が鋭く、いろいろな意味で味わい深いキャラクターです。イザベラにヴァレルドの二面性を分析するくだりと、その場面で飛び出した数々のパワーワードに痺れました。
ヒロインのイザベラも武闘派で、クライマックスで見せる立ち回りがなんとも爽快です。凛々しい女性キャラ好きの私としてはたまらないシーンでした。聖女の姉に対する強すぎる思いもご愛敬。魔王とのコミカルな掛け合いも、物語のよいアクセントになっています。
文: 嵯峨景子
ざっくり言うとこんな作品
1.姉至上主義の戦闘系令嬢と、弟のために頑張る苦労系魔術師の最強タッグが登場。互いに秘密を抱えてスタートした共同生活は波乱万丈!
2.クールな世話焼きヒーローと思われたが……ヒロインに惹かれていく中で、執着溺愛の才能が開花!? 思いがけない一面にドキドキする!
3.倒されたはずの魔王と死んだはずの聖女が結婚していて、まさかの子どもまで生まれていた――そこにはこの世界の秘密が隠されていて!?
主要キャラ紹介

イザベラ・ブラッドフォード
聖女である姉・リリアンナ至上主義の元聖騎士。剣術や武術に秀で、『聖女の番犬』と呼ばれていた。魔法が効きにくい体質で姉と魔王の間に生まれたルアンの世話を任せられるが……。
ヴァレルド・サージェス
フェデロス王国宮廷に勤める首席魔術師。その実力から『百人力のサージェス』とも呼ばれる。カナン王国の王子だったが王位継承権を放棄し、身分を隠して第二の人生をおくっている。
ルアン
聖女と魔王の間に生まれた子ども。魔力が不安定でたびたび暴走を起こしている。母の命が危ないためイザベラに預けられ、不安定な魔力の原因を調査することになった。
ローレンツ
魔王。勇者一行により討伐されたと言われるが実は死んでおらず、内密に聖女と結婚し子どもを設けた。姉思いの義妹イザベラを都合よく利用しては怒らせている。
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