【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はメディアワークス文庫から11月25日に刊行される『囮姫の契約婚 ―影斬り少尉と視る目の令嬢―』です。みなさんの感想も聞かせてください!
影を恐れている青葉と、影を斬るために平然と彼女を闘いの場へ同行させる千晃。当初の二人の関係は、決して良いものとは言えませんでした。影に追いかけられ、あまつさえ体の中に入ってこられそうになる……。青葉のそんな恐怖がはっきりわかるだけに、千晃に振り回される彼女には同情してしまいました。しかし、私のそんな認識が徐々に変わっていったのは、強引な千晃と行動を共にするうちに、青葉が明らかに前向きになっていったからです。
私たちは日々様々な人と出会い、関わり合いながら生きています。その中には、警戒心や苦手意識を持ってしまう相手もいるでしょう。そういう人と時間を共有することは、時に苦痛を伴うかもしれません。しかしそれは新しい刺激でもあり、冷静に自分を見つめ直して、思いもよらない自分の長所や短所に気づくきっかけにもなり得ます。影から逃げるばかりでなく、自分の力を人のために役立てようと考える青葉を見て、それを強く実感しました。
一目見ただけで相手のことを完全に理解できる人は、おそらくいないでしょう。人には直接関わってみなければわからない一面が必ずあります。そして、関わり合うことで相手をより深く知れば、対応は自然と変わるものです。お互いに変化を与え合い、成長していく二人には、第一印象に囚われずに人に接することの大切さを教えられました。
なりゆきで婚約までしてしまった二人ですが、きっと良い夫婦になることでしょう。だって共に時間を過ごせば過ごすほど新しい発見があり、そのたびお互いをかけがえのない存在だと再確認できるのですから。私も人との出会いを、もっと大切にしたいと思いました。
文: 安芸 沙織理
ざっくり言うとこんな作品
1.人の欲望に反応する異形の影を見ることができる青葉と、見えないけれど切れる千晃。二人で協力しつつ影を倒す戦闘のかっこよさ!
2.家族に疎まれ自分に自信の持てなかった青葉が、千晃との出会いから困難に立ち向かいつつ前向きになっていく様子に引きこまれる!
3.人の心の機微に鈍感で、自分の命さえぞんざいに扱う千晃も、青葉によって変わっていく。二人に徐々に芽生える恋心が微笑ましい!
主要キャラ紹介

真野青葉
影を見る目と彼らを引き寄せる体質を持ち、家族に疎まれている少女。
藤波千晃
影を斬る力を持つ、金髪碧眼の貴公子。影を見ることができない。
藤波夕紀子
千晃の妹。完璧な深窓の令嬢だが、青葉にも気さくに接する。
イラスト/白谷ゆう
- 読書感想文レビュー
- 安芸 沙織理
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囮姫の契約婚 影斬り少尉と視る目の令嬢「君を狙うすべてを祓うよ、僕の囮姫」――忌み嫌われる私を見初めた金髪碧眼の貴公子は、異形の影を討伐する『影斬り少尉』だった。
皇都の夜を騒がす異形の影を視認し誘き寄せてしまう体質で疎まれてきた真野青葉は、夜会で偶然出会った藤波家次男・千晃からその能力を買われ求婚される――影を釣る囮として。
仮初めの夫婦生活、千晃の軽薄な言葉、夜ごと任務に帯同する日々。でも、時折見せる彼の優しげな視線と一途な態度。千晃の言動のギャップに翻弄されながらも、青葉は忌み嫌われてきた自分の力が求められることで徐々に自信を取り戻していく。そして、欠けたものが満たされていくのは千晃も同じで……。発売日: 2025/11/25メディアワークス文庫