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【鼎談】ぶんころり先生×GCノベルズ担当編集×MF文庫J担当編集|ぶんころり先生商業デビュー10周年記念大特集

MF文庫J
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2025/11/25

 ぶんころり先生の商業デビュー10周年を祝して、たくさんの方が駆けつけてくれました!  これまでの作品でイラストを担当していらっしゃるイラストレーターさんたち、ぶんころり先生と関係のある作家先生・憧れの作家先生、担当編集者などなど……今の「ぶんころり」があるのはこの方々のおかげと言っても過言ではないメンバーが勢揃い。

 最後の7本目は、ぶんころり先生とこの10年間をともに歩んできた、GCノベルズ・MF文庫Jの担当編集との鼎談です。これまでの思い出や、今後の展望などを思い思いにお話しくださいました。



担当編集が語るぶんころり作品を見出した決め手!

――まず最初に、担当者の方々の自己紹介からお願いいたします。

GCノベルズ担当編集I(以下“編集I”):GCノベルズで、『田中』を担当しております編集Iと申します。よろしくお願いします。

MF文庫J担当編集O(以下“担当O”):MF文庫Jで『西野』を、MF文庫Jが贈る単行本として『佐々木とピーちゃん』を担当している編集Oです。よろしくお願いします。

――よろしくお願いします。編集Iさんは、ぶんころり先生のデビュー作『田中のアトリエ』を第3回ネット小説大賞で受賞させ、GCノベルズから刊行することになりましたが、その際はどのような点に注目して受賞を決めたのでしょうか?

編集I:何が決め手だったかというと、やっぱりぶんころり先生特有のワードセンスですね。別に何気ないところでも地の文でもくすっと笑わせられるようなところが決め手になったと思います。
 最初に読み始めた時は、主人公田中のキャラが濃すぎることもあって「ちょっと、とっつきにくいかな、今回はやめとこうかな」とも思ったんですけど、読み進めていくうちにめちゃくちゃ面白くなっていって、いつの間にか自分がすごいニヤニヤしているのに気づいたんですよね。それで「あ、これはやるべきだな」と思いました。

――ありがとうございます。一方で『西野』はもともとカクヨムで連載されていた作品ですが、どういった経緯で書籍化をオファーされたんでしょうか?

編集O:僕は元々Web小説の書籍化はあまりやっておらず、主に企画発や受賞作の作品を担当していたので、実は当時はぶんころり先生のことを知らなかったんです。でもある日同僚からぶんころりさんがカクヨムで書いてるよって教えられて読んでみたら「誰や……? 面白い……そして凄まじい作品だな」って衝撃を受けました。
 それで当時単行本が出ていた『田中』も読んでみたら、1ページ目から「なんだこれもすごい」ってなりました。さっきから語彙力がない人みたいになっているんですけど、一目で凄まじい才能を感じてそこからお声かけさせていただいたみたいな感じでしたね。

――『佐々木とピーちゃん』は文庫ではなく、MF文庫Jから単行本として出るという珍しい形式でしたね。

編集O:『西野』刊行中だったのですが、ぶんころり先生がカクヨムで『ささピー(『佐々木とピーちゃん』の略称。連載時タイトル:異世界でスローライフを楽しもうとしたら、現代で異能バトルに巻き込まれた件 ~魔法少女がアップを始めたようです~)』の連載を始められて、さらにコンテストにも応募されていて、読んでみたらこちらも凄く面白かったのでお声がけさせていただきました。
 でも、主人公がおっさんで内容的に普段のMF文庫Jとは毛色が違うとも感じ、作品にとって一番良い形を探っていくうちに、単行本で刊行してみよう、と。また、物語の切りどころを考えると通常の一段組だととてもページ数が多くなってしまうこともあり、先に刊行されていた『田中』に倣って二段組にしてみました。

編集I:当時はレーベルを立ち上げたばかりで、ページ数が多くなることを気にしていたんです。そこで、作品を300ページ前後に収めるための方法をデザイナーと検討した結果、「二段組」を採用してみようというアイデアが出ました。

編集O:二段組はいっぱい詰め込めるからいいんですけど、これってぶんころり先生には負担を強いてますよね。

ぶんころり:いやいや、全然大丈夫です。

編集I:文字量と印税の割合で考えると、ぶんころり先生にはだいぶサービスしていただいてますね。

ぶんころり:今の時代、コスパも大切ですから。頑張ります(笑)。


担当編集から見たぶんころりってどんな人?

――次に作品が出来上がるまでについてお聞きしたいのですが、ぶんころり先生との打ち合わせなどはどのように行われるのでしょうか?

編集I:最初の頃は、コンプライアンス的なラインをどこに持って来るかという話をよくしていましたね。そこからさらに書籍版にどのような追加要素を入れていくかという話もしました。

ぶんころり:『田中』のお打ち合わせは「専門用語」が飛び出す機会が多くて、当時は家の近くの喫茶店で打ち合わせすることが多かったのですが、隣の席にカップルがいる横で、MだSたろう先生の美麗なイラストを並べながら打ち合わせをすることがあって、それが忘れられない思い出になっています。

編集I:その後、その喫茶店が使えなくなったっておっしゃってましたね(笑)。

ぶんころり:だいぶ行きづらくなりました(笑)。途中からマイクロマガジン社さんの地下に自社カフェができましたので、かなり安心してお話をさせていただけるようになりました。

編集O:『西野』も『ささピー』もぶんころり先生に自由に書いてもらっていて、実はプロットもいただいてないんですよね。締め切り通り(素晴らしい!)にあがってきた原稿を読んで「今回も面白い!」となってちょっとした調整をご相談したり、イラストを決めていくというやり方をしています。なので、打ち合わせの記憶があまりないんです。ただ『ささピー』を書籍化する際には追加キャラを入れようという話はしました。

ぶんころり:はい、書籍版では原作にいなかった「お隣さん」が追加されました。

編集O:これは書籍版でアルベドが追加された『オーバーロード』を意識しています。

ぶんころり:編集Oさんからアドバイスをいただいて新たに追加したヒロインですが、ピシャリとはまったキャラになりましたね。

――お二人は様々な作家の方とお仕事のお付き合いがあると思うんですけど、他の方と比べた場合、ぶんころり先生というのはどのような作家なのでしょうか?

編集I:どう表現するか難しいところがあるんですが、ぶんころり先生は本当に、本心が見えない人だなと感じるときがあります(笑)。いつも喋っているときに、本心を大きなベールで隠しながらお話されてないかなっていう不安がありますね。

ぶんころり:いやいやいや、いつも素直に思ったことをお伝えしています(笑)。

編集I:なのでちょっと探り探りな会話をしているなってたまに思います。それと作品の作風からするとすごい真面目な方なので、初対面のときは作風とのギャップで一瞬ちょっと戸惑うかもしれませんね。
 でも、話してるとやっぱり『田中』の作者さんなんだというのがわかってきます。

編集O:編集Iさんが仰っているぶんころり先生のパーソナリティに完全に同意しつつ、仕事相手としては、僕がこれまでお仕事をしたクリエイターさんの中で最高の一人だと思っています。

ぶんころり:恐縮です。

編集O:まず書くものが面白いし、様々な仕事も早いのに丁寧で、人格的にも素晴らしいしで、褒め殺しみたいになっちゃうんですけど、一緒に仕事をするうえで非の打ち所がないです。

ぶんころり:お二方とも、私に好き勝手やらせてくださるんですが、好きなように書かせていただくのは、作家としてはとてもありがたくて嬉しいことで、そこが本当にどれだけ感謝しても足りない部分です。
 お二方に担当していただけたからこそ書けたのが、『田中』であったり、『西野』であったり、あるいは『ささピー』であったりするんじゃないかなと、思ってます。


ぶんころりが編集者にどうしても伝えたかった真実とは……?

――お二人にはぶんころり先生にこの先どのような挑戦を行ってほしいですか?

編集I:基本的にはずっと作品を書いててほしいなっていうのはまずありつつなんですが、それ以外だと、ぶんころり先生のエッセイを読んでみたいと思っているんです。

編集O:確かに、それは読んでみたいですね!

編集I:多分、日常の何気ないことを書いても面白くなりそうだなと思っていて、なのでエッセイは是非読んでみたいと思ってます。

編集O:それはとてもいいですね。僕はあまりこっちから何かをしてほしいというのはなくて、これまでもぶんころり先生ご自身が書きたいと思ったものが世に出て、それがどれもめちゃくちゃ面白かったので、またそうやって書いた原稿を預けていただけるのであれば、全力で広めていきたいと考えています。

ぶんころり:他の作家さんからお話を聞くと、編集の方から「こんな話を書いてほしい」という様々な提案を受けることが多いと伺っているんですが、そこの部分をこう、すっ飛ばして書かせていただいているのは、とても恵まれた環境だなと、私自身も常々感じております。今回もこうして仰っていただけたのは、本当に作家冥利に尽きると思います。ありがとうございます。

――何かいい話ばかりになってしまったので、せっかくですからぶんころり先生が担当編集氏に対して密かに抱える闇などがあれば、お聞かせ願いたいです!(笑)

ぶんころり:闇というわけではないのですが……今思い返すと編集Iさんに性癖を勘違いされているんじゃないかっていう疑いがあるんですよ。

編集I:なんですか、それは(笑)。

ぶんころり:『田中』の一巻冒頭で、女騎士のメルセデスと牢獄に入れられた田中が、メルセデスと一緒に脱獄するシーンがあるじゃないですか。

編集I:はいはい。

ぶんころり:あそこは改稿する前、田中が牢屋に残された女騎士の汚物を 武器にして看守に抵抗するシーンがあったんですよ。おそらく編集Iさんはそれを読んで、僕に××××(※掲載自粛)趣味があるんじゃないかと考えているんじゃないかなって。

編集I:いやいや(笑)。

ぶんころり:「ぶんころりさん、××××だけはダメですよ。これは汚いですからね」って、すごく入念に説得を受けた覚えがございまして。それで「趣味じゃないんだけどなぁ……」と内心思いつつも、めちゃくちゃ真剣な顔で「すいませんでした。××××はやめておきます」って応じて該当シーンを修正したんです。もしかしてあれからずっと僕がそういう趣味だと思われているのならば、この場で弁解しておきたいですね。

編集I:(笑)。性癖はセンシティブな問題だし、作家を傷つけたらいけないなと思いつつも、編集者として譲れない部分はあるので「ちょっと汚いものだけはやめましょう」っていう話をした記憶が確かにありますね(笑)。

ぶんころり:僕は綺麗好きですよというのを、この場を借りてお伝えいたします(笑)。


取材・文●柿崎憲


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