ぶんころり先生の商業デビュー10周年を祝して、たくさんの方が駆けつけてくれました! これまでの作品でイラストを担当していらっしゃるイラストレーターさんたち、ぶんころり先生と関係のある作家先生・憧れの作家先生、担当編集者などなど……今の「ぶんころり」があるのはこの方々のおかげと言っても過言ではないメンバーが勢揃い。
対談2本目は、ぶんころり先生がMF文庫Jより初めて刊行し、「このラノ」でもランクインを成し遂げた作品『西野』シリーズのイラストを担当するまたのんき▼先生。
『西野』の振り返りや、またのんき▼先生のイラストについてはもちろんのこと、主人公・西野の誕生秘話も……?
またのんき▼先生が語るキャラクターデザインのこだわり
――最初に一緒に仕事をすると聞いた時の、お互いの印象というのはどういったものでしたか?
ぶんころり:最初にイラストを拝見した時から、ブロンド美少女への圧倒的な情熱をイラストの端々から感じておりました。こちらの先生であれば絶対に大丈夫だという信頼感を抱いておりました。
またのんき▼:恐れ入ります。私は全く小説を読まなくて、Web小説も読んだことがなかったんですけれども、お話をいただいてからカクヨムで連載されていた『テイルズ・オブ・西野』を読ませていただいて、そんな私でもちょっと一線を画す人だなと思いました。地の文の明け透けな物言いや随所に差し込まれるディテールの細かさといった癖になる感じが、ファンを生む魅力なのだと感じました。
ぶんころり:ありがとうございます。
――小説をイラストに落とし込む上で、情報共有をされたり、このキャラはこのようにしてほしいなどの要望はあったのでしょうか。
またのんき▼:私はもう本当に編集の方からいただいた指示を読んで、その通りに描いていった感じです。他の仕事だとそこから直しの指定がバチバチに来るのですが、本作の場合それがほとんどなくて逆に不安になったりもしました。
ぶんころり:そうだったんですね。こちらとしては、またのんき▼先生が出してくださるデザインがとても素晴らしかったので「これを直すなどとんでもない」といった思いでやらせていただきました。
またのんき▼:ありがとうございます。個人的に印象に残っているのは松浦さんのイラストで、中盤以降でだいぶキャラの路線が変わっていくので、自分からデザインを変えることを提案したのを覚えています。
ぶんころり:その節は本当にありがとうございました。彼女は作中でもだいぶ性格が変わったキャラで、最初はやや根暗な感じだったのですが、悪事がバレたのをきっかけにだいぶギャルみたいな形になるんですよ。そのタイミングでまたのんき▼先生が、内容に合わせてビジュアルも変えてくれたんです。読者様からも大変好評でして、なんて素晴らしいんだろうと感動しました。
またのんき▼:ありがとうございます。
――またのんき▼先生がキャラクターをデザインする上で、どういった部分を最も重要視されていますか。
またのんき▼:キャラクターが溢れている現代なので、他とどう差別化するかっていうのを一番に考えます。あとフェチズムは絶対入れたいですね。作品内の一人一人のキャラクターがそれぞれまったく違う人物に見えるようにすることを意識しています。自分が理屈っぽい性格なので、本編の要素をイラストに落とし込んでいくのは楽しいですね。たとえば委員長のヘアピンの色は、イギリスのユニオンジャックの3色から来ています。
ぶんころり:細かいところまでこだわっていただき、ありがとうございます。
フツメンの西野の誕生秘話
またのんき▼:ただそれまではファンタジー系のイラストのお仕事が多かったので、現代劇のデザインは難しいと思うことが多く、制服はまだいまだに慣れていない気がしています。それとイケメンのキャラを描いていると、それまでずっと男性向けのキャラを描いていた自分を俯瞰的に見て、「なんでイケメン描いているんだ、俺……」と、自分で自分への解釈違いが起きて、そこに精神的な厳しさをちょっと感じていました(笑)。
ぶんころり:(笑)。逆に主人公の西野は描いていていかがでしたか?
またのんき▼:基本的に、自分が文章から受けた印象をそのまま出力しています。あくまで彼はフツメンなので、露骨に醜悪な顔にするのではなく、一般的なラノベ主人公と聞いて皆が連想するような造形からパーツごとに少しずつやぼったくなるように調整しました。
また、二次元のノットイケメンキャラには三白眼、四白眼が多いと感じているので、そこは自分も踏襲し、他のキャラよりも髪型のデフォルメを強くして、地味な印象の中にも主人公の特別感を出そうとしましたね。
ぶんころり:西野のデザインについて担当さんと最初に打ち合わせをした時に、「顔は出さずにモザイクで隠そうか」みたいな案も出ていたんです。それぐらい難しい注文だったと思います。
またのんき▼:実際にイラストを見た読者に「作中では色々と言われるけど、結局別に悪くない顔じゃん」と言われないようにするのは至上命題だと感じていました。そこで決定的に分水嶺になるのは個人的には鼻の形だったと考えています。西野の顔はある意味作品の根幹に関わる部分なので、デザインをすることに緊張感はあったのですが、一方でこれなら問題はないだろうという確信が完成時にあって、これはちょっと自分でも珍しいことだったなと思っています。
ぶんころり:真っ向からフツメンを描いていただけたのが本当に嬉しかったです。本作を15巻まで出すことができたのは、またのんき▼先生の西野の絶妙なデザインのおかげだと今でも強く思っています。
またのんき▼:やはり原作者の意に沿っているかどうかが、イラストレーターとして一番最初に超えるべきものだと思うので、そこを突破できていたようで良かったです。
ぶんころり:こちらこそ本当にありがとうございました。ちなみに西野のデザインの難易度を真ん中にした場合、それよりも難しかったキャラはいらっしゃいますか?
またのんき▼:基本的にそこまで難儀したキャラはいなかったのですが、竹内君や鈴木君といったイケメン男子は、先ほどの理由で少し苦労したかもしれません。
ぶんころり:逆に簡単だったキャラはいますか?
またのんき▼:実はマーキスだったのかもしれません。最初に原稿を読ませて頂いた時から頭の中にはすでにマーキス像があって、本当にそれをそのまま描いた感じがあります。
ぶんころり:マーキスは大変人気があって、またのんき▼先生の描いてくださった迫力のある、大柄な兄貴分みたいな感じのイラストが響いたんじゃないかなと思っています。
またのんき▼:女の子はどれも結構すぐという感じですが、ガブリエラは途中参戦かつ重要キャラだったので、他のキャラよりも試作している時間は多かった気がします。
ぶんころり:彼女は登場した過程もそうですが、背景設定も色々ありますので、またのんき▼先生にもかなりご迷惑をおかけしてしまったんじゃないでしょうか。
またのんき▼:性格的にもかなりぶっ飛んでいるので、そこをうまく丸めこみつつ美少女らしさを出すことを考えて描きました。
ぶんころり:ラブコメのライバル役はメインヒロインに人気でも負けられないポジションだけに、メインのローズと合わせて、ラブコメ作家なら誰もが羨むようなビジュアルのキャラにしていただいて、これは本当に幸せでした。
二人が選ぶ『西野』のベストシーンは?
――またのんき▼先生のイラストを受けて、執筆時に影響された点や物語へ反映された部分はありますか?
ぶんころり:とても多くあります。特に主人公の西野のイラストにつきましては、自分でやたらとフツメンと書いてはいたんですけれど、結構ふんわりしたイメージしかなかったんですよ。なのでイラストをいただいてイメージが固まったことで、より動かし甲斐が出てきてWeb版よりも書籍版になってからの方が西野の活躍が、より激しくなっていきました。
またのんき▼:ありがとうございます。
ぶんころり:あと、委員長のキャラデザが個人的にめちゃくちゃハマりまして、当初はヘイトを集める役割のキャラでもあったんですが、デザインがあまりにも可愛らしかったので、その影響で西野との距離感もだいぶ近づいていきました。
またのんき▼:そんなことがあったんですか。
ぶんころり:はい。それと先ほど名前が出ましたが松浦さんも大好きですね。僕はキャラを崩すのが好きなのですが、またのんき▼先生は僕の頭の中まで読み込んでいるみたいに、こちらの意図を汲み取ったデザインをしてくださっているので、どのキャラクターにも「もう一歩前に踏み出して大丈夫」という安心感を抱きながら物語を転がしていたことを覚えております。
またのんき▼:自分が描いたキャラに対してはどれだけ崩しても問題ないと思っていたので、ぶんころり先生の意に即したキャラが描けて良かったです。
――自分がデザインしたキャラクターが作中で崩れていくというのを見るのはどういった気持ちになるものなんでしょう?
またのんき▼:そうですね。やっぱり「やりよったな」みたいな感じですね(笑)。痛快とも言えるかもしれない。多分読者も、そういうのを見たくて、この作品を読んでいると思うので、私も共に作品を楽しみながら描かせていただきました。
ぶんころり:ありがとうございます。またのんき▼先生のデザインに私もとても救われておりました。
――またのんき▼先生が作中で印象に残っている場面、そしてぶんころり先生がいただいたイラストで印象に残っているものを教えてください。
またのんき▼:そうですね。先ほど名前を挙げていただきましたが、松浦さんにスポットが当たる場所は全部名場面だと思っています。もう本当に彼女は折れ線グラフみたいに活躍に幅があるので、その際立ちっぷりがとても見ていて面白かったです。
11巻で当たり前にゲームの達人みたいな顔をしていたのがとても印象に残っています。その場面のイラストを描いたのは自分なんですけど(笑)。他にも登場時から思いもよらない才能を発揮するキャラが多くて、6巻で委員長が拡散された自分の動画を削除しようと奔走するシーンも好きでした。
あとヒロインのローズが体質のせいか色々と不憫な目に遭うシーンが多くて、特に一つ挙げるなら8巻で彼女の額にナイフが突き刺さるところは、彼女は何も悪くなかったにも関わらず唐突な展開すぎて本当に面白かったです。
ぶんころり:ありがとうございます。まさに気にかけていたところを上げていただけて、とても嬉しいです。
僕がまたのんき▼先生のイラストで印象に残っているのは、やはりカバーイラストですね。9巻のメイドカフェでバイトしている感じとかが本当に大好きで、こう溢れんばかりの元気いっぱいさが堪りません。
そして、時には額にナイフが刺さったりするコミカルなシーンも描いていただいているんですが、そういったシーンとは対照的に、たまに儚い表情を見せてくれるイラストがあって、マイベストを一枚選ぶとしたら、ライトノベルEXPO2020記念で複製原画になったイラストですね。こちらは部屋に飾って日々拝んでいます。
またのんき▼:これはいわゆるよそ行きの絵ですね。自分が二次創作をする時は、やっぱり元のキャラが好きなので崩れないような描き方をするんですけど、この作品のイラストは自分も原案なのでつい楽しくなって崩してしまうんです。なので、そのイラストみたいな真面目な感じのイラストはやっぱり珍しくなっちゃうんですね。
ぶんころり:普段のはっちゃけたシーンの数々があるからこそ、よそ行きの絵も映えるんじゃないでしょうか。またのんき▼先生が描く日常の絵と外行きの絵が両方合わさったことで、僕も一ファンとしてぐっと胸を掴まれたのだと思います。
またのんき▼:ありがとうございます。
取材・文●柿崎憲
関連情報
イラストレーター。金髪少女が好き。
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学園カーストの中間層、冴えない顔の高校生・西野五郷は、界隈随一の異能力者だ。
ダンディズムを愛する彼の毎日は、異能力を使ったお仕事一筋。
常日頃から孤独な生き様を良しとしてきた。
シニカルなオレ格好いいと信じてきた。
だが、その日々も永遠ではない。
高校二年の秋、童貞は文化祭を通じて青春の尊さに気付く。
異性交遊の大切さを知る。
これはそんな西野少年が、過去の淡白な人生から心機一転、日々の生活態度を改めると共に、素敵な彼女を作って高校生活を謳歌する為、あの手この手を用いて学園カーストを駆け上がらんと奮闘するも、一向に登れそうにない、なんちゃってハードボイルド物語(異能バトル付き)発売日: 2018/04/25MF文庫J