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存在しない住所に隠された真相とは? 実話のようなリアルさに背筋がぞっとする、モキュメンタリーホラー!【カクヨムコン10・発売前に先取り読書レビュー】

2025/11/25

 カクヨムコンテストは、Web小説サイト「カクヨム」で開催される、国内最大級のオールジャンル小説コンテスト! メクリメクルでは、その大賞受賞作7作品を発売前にひと足早く「発売前に先取り読書レビュー」します。気になる作品は、カクヨムで今すぐ読むことも可能。さらに、カクヨム上で作品を「フォロー」しておけば、書籍化の際にお知らせ通知が届きますよ。

【ホラー部門大賞】
『三重県津市西区平山町3-15-7』
(著者:大舟)


 いま世間はホラーブーム。その中でも特に人気が高いのが「モキュメンタリー」と呼ばれるタイプのホラーだ。モキュメンタリーとは、ドキュメンタリー(事実を記録した映像や文章)のようにリアルに作り込まれた創作物のこと。たとえばネットの投稿や雑誌の記事など“本当にありそう”なパーツから構成されるモキュメンタリーホラーは、まるで実際の事件を目撃しているような怖さを味わわせてくれる。

 カクヨム発の『三重県津市西区平山町3-15-7』も、まさにモキュメンタリーホラーの面白さが詰まった作品だ。物語は小林という主人公が、三重県津市西区平山町3-15-7という謎めいた住所にまつわる怪談を、さまざまな手がかりをもとに調査していくというもの。この住所がなぜ謎めいているのかといえば、三重県津市には「西区」はないし、「平山町」という町も存在しないからだ。

 しかし、その住所がスマホやパソコンの検索履歴にひとりでに現れたり、その住所から差出人不明の手紙が届いたり、迷惑電話の向こうで誰かがその住所を口にしたり……という奇妙な出来事が各地で起こっているらしい。ネットの匿名掲示板でも秘かに話題になり、その場所の写真が掲載されていた形跡もある。存在しない場所にまつわる怪談、というメインのアイデアがまず魅力的だし、不穏なエピソードの数々は、リアルとフェイクが混じり合うモキュメンタリーの醍醐味が詰まっている。個人的には存在しない「喫茶店」に関するエピソードが、なんともいえず不気味に感じられた。

 小林の調査が進むにつれ、「三重県津市西区平山町3-15-7」の謎は少しずつ明らかになっていく。小出しにされた情報がジグソーパズルのように繋がり、大きな怪談を形作るというミステリー的な構成も面白い。キャラクターも魅力的で、ホラーをあまり読んだことのない人でも楽しめる、間口の広い作品になっていた。


文:朝宮運河

カクヨムコンテスト10とは

賞金総額1000万円&商業化作品数日本No.1! 記念すべき第10回、過去最多の10部門KADOKAWA主催の国内最大の小説コンテスト。

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