【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は11月14日に刊行された『気まぐれな神の罰当たりな寵愛』です。みなさんの感想も聞かせてください!
種族の垣根を越えたロマンスを描く異種婚姻譚。このジャンルの何よりの魅力は、人間同士の恋愛では味わえない寿命差や種族の違いから生まれるすれ違い、そして障壁を乗り越えた末の尊い関係性にあると思います。二人の属性が異なれば異なるほど、互いの立場や思考に違いが生まれ、葛藤はより大きなものになります。そういう意味でも、1500年の時を生きてきた土地神×不幸な育ちの平凡な村娘の物語は、私のツボを突きまくる設定でした。
何よりも心を掴まれたのが、思いがけないかたちで人間の娘を手元に置くことになり、さまざまな感情の変化に見舞われる神様・暁の姿です。当初は気まぐれで受け入れたものの、だんだんと思いが深まっていき、それでも自分の恋心を素直に認めることができない。その葛藤がなんとも可愛らしく、微笑ましい気持ちになりました。とりわけ印象的だったのが、小夜が人間の男からもらったものを身に着けると不機嫌になり、自分が与えたもので着飾らせようとする、独占欲が爆発した場面です。それまでは超然としていた神様が、一人の人間の娘に振り回されている姿にぐっとときめきました。
暁の気まぐれな行動に翻弄される小夜も、応援したくなる健気なヒロインです。ずっと虐げられて生きてきたからこそ、暁のもとで居場所を見出していく姿に心がじんわりと温かくなりました。甘やかだけれど毒気と色気もほのかに漂う、独特の和風ロマンスの世界がたまりません。異種族の愛の物語や、じれじれの両片思い好きの皆さんにぜひお薦めしたいです。
文:嵯峨景子
ざっくり言うとこんな作品
1)祠を壊したら──神様に気に入られました!? 罰当たりな行動で出会った二人の関係性に要注目!
2)気まぐれな神様に翻弄される同居生活がはじまり──? 人間とは寿命も思考も異なる神様に振り回される健気なヒロインを応援したくなる。
3)孤児の村娘が気まぐれな神様との出会いで本当の愛を知る甘いラブファンタジー。種族の違いを越えた尊い愛の物語。
主要キャラ紹介
▼小夜(さよ)
孤児育ちの少女で、野垂れ死にをしかけていたところを村長に拾われる。だが虐待されたうえに義妹の身代わりとして嫁がされそうになり、家を飛び出したところを暁に匿われることに。

▼暁(あかつき)
小夜に祠を壊されて眠りから目覚めた土地神。1500年以上生きており、気まぐれで小夜を手元に置くことに。やがて小夜に神の生贄になるか、それとも花嫁になるかと迫るが……?

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