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明治期の皇室をモチーフにした舞台で異能の少女が大活躍! 契約婚相手とのやり取りにキュンキュンし、終盤の異能バトルにハラハラドキドキが止まらない

富士見L文庫
富士見L文庫
2025/11/18

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は富士見L文庫から11月14日に刊行された 『皇宮軍人の花嫁女官』です。みなさんの感想も聞かせてください!


 「契約結婚」をテーマにした作品が大好きです。「夫婦のフリをしていただけなのに、いつしか惹かれ合う二人」というお約束がありつつも、そこに至るまでの紆余曲折をドキドキしながら味わうのが楽しい! というわけで、不思議な力を持つ少女・撫子と宮家出身の軍人・優雅が契約結婚(しかも格差婚)するという本作はどストライクの小説でした。

 本作の魅力はまず、明治時代の皇室をモチーフにした絢爛豪華な世界観です。皇后や女官たちがまとうドレスや着物の色彩や美しい模様をはじめ、宮廷儀式の様子などが華やかに描かれており、うっとりしてしまいます。

 ただし、美しいものには毒がある!? 女官たちの間には派閥争いや嫉妬といった負の感情が渦まいていて、撫子に何度も試練が訪れます。「女の園の人間関係は大変だ…」と、しみじみ共感した次第です。

 どんなときも撫子に寄り添い、話を聞いてくれる夫の優雅は本当にいい男。優しさの塊です。ときめきポイントはたくさんありますが、嫌な夢を見てうなされる優雅の手にそっと触れ、撫子が癒しを与える場面はとりわけ印象的でした。本来、撫子の力は東宮(皇太子)のためだけに使うべきなのに、優雅を想ってつい彼に触れていた──。そんな撫子の無自覚な愛があふれるシーンに、キュンキュンが止まりませんでした。

 終盤では、東宮を巻き込んだ異能バトルが勃発。意外な人物が異能の持ち主だったことに驚きつつ、ハラハラドキドキのままクライマックスを迎えます。ジェットコースターに乗っているように感情が揺さぶられる楽しい読書体験でした。


文:高倉優子

ざっくり言うとこんな作品

1)舞台モチーフは明治時代の皇室。絢爛豪華な宮廷で巻き起こる女官たちの戦いと、健気に頑張るヒロインの活躍が描かれる。

2)任務のための契約結婚──のはずが、次第に心から惹かれ合う二人の甘酸っぱい関係性にキュンキュンが止まらない!

3)穏やかな冒頭から一変、終盤はヒロインの異能をめぐる戦いが勃発! 手に汗握る最終決戦は必読!

主要キャラ紹介

撫子&朝霧優雅

▼撫子(なでしこ)
触れると相手の心を安らげる力を持つ少女。東宮の養育係になるべく、身分の高い優雅と契約結婚して宮廷に出仕する。幼い頃から天涯孤独で愛されることを知らずに育った。

▼朝霧優雅(あさぎり ゆうが)
東宮御所を守る生真面目な武官の青年。宮家の一員ながら訳あって絶縁状態に。忠誠を誓った東宮のために割り切って撫子と契約婚をするが、次第に彼女に惹かれていく。

  • 読書感想文レビュー
  • ファンタジー
  • 明治
  • 異能バトル
  • 高倉優子

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    触れた相手を安らぎに導く不思議な手を持つ撫子は、どんな子どもも眠らせるという評判から子守りとして男爵家に勤めていた。けれど孤独な身の上で、幼い頃から愛されることを知らなかった。
     ある時、勤め先の主人に迫られていたところを皇宮軍人・朝霧優雅に助けられる。撫子の力を知ることとなった優雅に、「厳しい教育で心を患ってしまった帝の御子――幼い東宮さまの心を癒やしてほしい」と頼まれ、撫子は彼と契約婚を交わして女官として宮廷に上がることに。
     新参者への風当たりは強いものだったが、宮中の文化に戸惑いながらも、ひたむきに仕事に励む撫子。その行動が、閉鎖的だった東宮御所にやがて新風をもたらしていく。
     当初は東宮のための任務と割り切り、「妻としての役割は求めない」と言っていた優雅も、徐々に撫子に惹かれていって――。
     愛を知らない少女と不器用な軍人の、帝都宮廷ロマンス!
    木之咲 若菜 (著者) / 睦月ムンク (イラスト)
    発売日: 2025/11/14
    富士見L文庫
    試し読みする

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