【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は富士見L文庫から11月14日に刊行された 『レディ・バレットは恋の設計図を知らない』です。みなさんの感想も聞かせてください!
ある朝、メカニックのハリエットを訪ねてきた美貌の青年セブンス。彼は自律状態にある機械人形であり、暴走している自分を解体してほしいという。折しも訪ねてきた警察官のイライザから立て続けに起こる機械暴走の事件捜査を持ちかけられ、ハリエットはセブンスとともに捜査にのりだす。
機械と人間が共に生活する場所として描き出された多層構造の街・ノーサンギア。街の存在を支える機械たちに接する人間たちの優しさが印象深い。ハリエットをはじめ暴走機械を止めたメカニック・ギルドの職人など、機械が進化し望みを得たことによって陥るもどかしさを第一に問題視する。機械が暴走した! 止めなくちゃ! じゃあ壊そう! 普通ならそんな結論に行きがちなのに、彼らは機械を理解しようとする。
心をもった機械が人間を理解しようとする…というストーリーも含みつつ、人間側が機械の心をくみとり歩み寄ろうとするところがおもしろい。機械は機械ができるようにしか人間を理解できないように、人間もまた機械のようには機械を理解できない。その溝をちゃんと直視し、セブンスを生み出した主の楽観的先見の明にも唸らされた。
そして何より気に入ったのは、坑道の跡地に建てられたノーサンギアの街そのものの存在。何層にもわかれた街を行き交う人と機械の喧噪が目に浮かぶようだった。機械時代の黎明期からある展望台、そこから一望できる街の姿は変わらず希望に満ち続けているのだろう。
文:仲村友巳
ざっくり言うとこんな作品
1)機械と人間が行き交うスチームパンク風の世界が舞台! 生活を支える機械たちの暴走は機械と人間の関係を変えてしまう…!?
2)健気に生きてきた少女と自由に戸惑う機械人形の運命の出会い! 手探りのなか目覚めていく感情をわかちあう二人の姿が甘酸っぱい!
3)キャラの衣装や装飾具にもこだわりあり! 世界観にそって細部まで描き出された深遊さんの美しいイラストにも注目!
主要キャラ紹介
▼ハリエット
機械を愛する才能豊かな「メカニック」の女の子。明るく優しい性格の裏には、童話作家の母との間にある葛藤を抱えていて…?

▼セブンス
美貌の青年機械人形。自分自身を主とすることを学ぶためハリエットの助手として行動し、徐々に感情らしきものに目覚めていく。

▼イライザ
ノーサンギア警察隊で機械がらみの事件を担当。過去の事件で知り合ったハリエットの身を心配し、傍で見守り続けてきた。

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