【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は11月10日発売の『悪役天才道術士の憤怒』です。みなさんの感想も聞かせてください!
一般的な悪役領主ものだと、家臣からも嫌われるような悪役キャラでも、前世の記憶が目覚めればたいてい心を入れ替え、まっとうなキャラへと更正しますよね。それがセオリー。ところが本作の主人公梅雪はもう、ある意味格が違いました。
だって前世の記憶のおかげで自身の悲惨な末路を知ってもなお、煽り耐性ゼロで四方にキレ散らかすんですから! しかも梅雪に転生したはずの「中の人」が、アドバイザー的な存在にしかなれないほどの我の強さ。まさに規格外。転生ものの暗黙のお約束をことごとく潰していきます。まあ、絶対に揺るがない強烈な「自己」があるというのは立派なことだと思います。優柔不断な自分としては、うらやましくもありますね。性格の善し悪しはともかく(笑)。とはいえ、この難儀な性分を抱えながら未来を変えていこうなんて、かなりのハードモードでしょう。この先どんな展開が待っているのか楽しみでなりません。
一方でヒロインの面々もなかなかの境遇の持ち主ばかり。そのうえ梅雪がアレなせいで、色恋沙汰に発展する日はまだ遠そうですね…。せっかく元のゲームはR-18だというのに(笑)! 彼女たちもみんな魅力的なので、デレたところも見たいのですが、それは先の楽しみとして取っておくとしましょう。
梅雪にとって何より重要なのは、未来を変えること。煽りに対する怒りが彼の原動力ならば、多少生きることに難儀があっても、それは必要なことなのでしょう。術を磨いて強くなっても、ある程度の処世術を学んでも、根っこは煽り耐性ゼロのまま。そんな彼の怒りがどこまで通じるのか、見届けたくなりました。
文:瀧田伸也
ざっくり言うとこんな作品
1)剣士が優遇されているゲームの世界で、剣の才に恵まれなかった梅雪は、不遇な道術士の才能を磨いて、最悪な未来に立ち向かう!
2)気弱な勘違いエルフに、カタコトの獣人奴隷、グラマラスだけどちょっと危険な剣聖。ヒロインたちはみんな、一筋縄ではいかない!?
3)ごく普通の日常会話ですら、舐められたと感じて激怒! 傲慢な梅雪の煽り耐性のなさは、転生した「中の人」でも制御不能!?
主要キャラ紹介
▼氷邑梅雪(ひむら ばいせつ)
大名家の嫡男。「剣桜鬼譚」というゲームで序盤に倒される悪役であり、わがままな性格で最悪な末路を辿ることになっている。運命の分岐点で「前世の記憶」が目覚めるが…?
▼アシュリー
氷邑家に仕える機工絡繰忍軍の隠密頭で、天狗(エルフ)と呼ばれる亜人の少女。本来はネガティブな性格だが、絡繰に乗っている時は『阿修羅』を名乗り、強気な性格になる
▼ウメ
梅雪に仕える奴隷の少女。狼の獣人で、人の言葉はあまり得意ではない。ゲームでは主人公に奪われてしまうため、所有物の意味をこめ、梅雪から「梅」の一字を名として与えた
▼シンコウ
「愛神光流」という剣術を操る『剣聖』。梅雪に剣の指導をしていたが、彼の傲慢さを咎め、ウメを連れて逃走した。ゲームでは、ウメとともに主人公の仲間になるはずだが…?
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