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『皇帝陛下の禍祓士 堕ちた後宮』は愛憎渦巻く後宮で、人々の心残りを解きほぐしていく物語。爽やかな二人の関係にも注目!

2025/11/25

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
 今回は角川文庫から11月25日に刊行される『皇帝陛下の禍祓士 堕ちた後宮』(著者:柊、イラスト:syo5)です。みなさんの感想も聞かせてください!



 中華風後宮ものは、私がライトノベルを読み始めた頃から人気のジャンルでした。豪華絢爛な女性中心の世界で繰り広げられる、愛と権力をめぐる陰謀劇。そうした濃密な人間ドラマが女性読者には刺さるんでしょうか。自分としては後宮に閉じ込められている女性たちを可哀想に思ってしまうのですけれども。

 さて、この物語の後宮でも例に漏れず、若き皇帝・舜の寵愛をめぐって五人の后たちが織りなす愛憎劇が渦巻いています。さらに後宮そのものが呪われ、皇帝の不調も呪いのせいだという噂が立つ。そこで呼ばれたのが、穢れを祓う呪い師――我らがヒロインの流麗です。穢れを祓うだけでなく、その裏に潜む元凶を探り始める。恋愛小説というより、後宮を舞台にした推理小説のような展開で、複雑に絡み合う人間関係に引き込まれてしまいました。

 興味深いのは流麗と舜の関係ですね。表向きは皇帝と臣下ですが、流麗にとって舜はずっと仕えることを夢見てきた相手であり、舜にとっても幼い頃に出会った運命の少女です。流麗が"禍祓士"という特殊な役職であるため、后たちに遠慮なく傍に置ける。互いに男女を意識しすぎず、けれど確かな絆で結ばれている。ドライでありながらもどこか温もりを感じさせるんですよ。ドロドロとした愛憎渦巻く後宮にあって、そんな爽やかな二人の関係がいい箸休めになっているんですよね。

 流麗と舜が解き明かしていくのは、大切な人々の"心残り"。亡き親兄弟の未練や、恋人への伝えられなかった思い。そんな心残りを解きほぐして、後宮を覆う闇を祓っていく姿が清々しくて心が洗われました。

 華やかな後宮で繰り広げられる愛と謎、そして魂の救済。過酷な境遇の中で、そっと静かに寄り添う二人の物語にいつの間にか癒やされていました。



文:愛咲優詩


ざっくり言うとこんな作品


・第10回角川文庫キャラクター小説大賞〈カクヨムテーマ賞〉受賞作

・禍祓士の流麗と孤高の皇帝・瞬のプラトニックな絆で結ばれた主従関係が尊い

・華やかな後宮に潜む呪いの真相を探し出す謎解き要素アリの中華退魔ファンタジー



主要キャラ紹介


流麗
 古の皇帝に仕えていたとされる禍祓士の末裔。普段は穢れを祓う仮面をつけている。常に冷静で知的な女性。


 皇国を治める聡明な皇帝。見鬼の才があり、穢れを見ることができる。数年前から謎の不調に悩まされている。

  • 読書感想文レビュー
  • 愛咲優詩
  • 角川文庫 キャラクター文芸

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    術で舜の不調を一時的に鎮めた流麗だが、原因究明のため最も穢れが濃い後宮を探ることに――。

    孤高の皇帝を救うために後宮の秘密を暴く、中華退魔謎解きファンタジー!
    柊 (著者) / syo5 (イラスト)
    発売日: 2025/11/25
    角川文庫 キャラクター文芸
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