【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は10月31日刊行のスニーカー文庫『捨てられ傭兵は自由気ままに生きたい』です。みなさんの感想も聞かせてくださいね。
ダークヒーロー、っていうキャラ分類があるじゃないですか。倫理的にアウトなことをしながらも人類を守るみたいなキャラ。それはある種、「悪の力を振るうことにためらいながらも、悪いことに手を染めてでも、守りたいものを守る」みたいなところがポイントだと思うんですよね。なんでこんな話をし始めたのかと言うと、本作の主人公・ヤマギシは、そういったダークヒーローと対極みたいな存在だな……というのを読みながら思ったからです。

ヤマギシは滅茶苦茶な強さを誇っており、敵国から『狂乱のバーサーカー』という二つ名をつけられるほど。そしてこの名は、わりと本人の本質を突いています。あっけからんとしたテンションのまま戦いにノリノリで突っ込んで、何の悪気もなく人体を破壊していく様が何度も見られます。申し訳なさとか本当に皆無でいっそ清々しいんですが、それらは彼の所業では正直まだマシ。特に「首を跳ね飛ばした多数のゴブリンの耳を繋げてネックレスにし、ボスゴブリンの戦意を削いで降伏させる」というシーンは、あまりに主人公らしくない所業を素でやっていて思わず笑ってしまいました。豊臣秀吉よりムゴイことしてないか?

そしてそんな倫理観がない事をするたびに、ドン引きのフェルンから怒られるのが本作のお決まりのパターンです。「感性がまともなフェルンがいてくれて良かった」と何度思ったことか。ある意味この旅路は、フェルンが頑張ってヤマギシを真人間に教育していくのを見守るものなのかもしれません……先は長そうですね。頑張れ、フェルン!!
文:沙藤克広
ざっくり言うとこんな作品
1)敵の最強部隊も超強いモンスターも魔族も問答無用! 圧倒的な攻撃力を用いて一瞬でどんな敵をも殲滅するヤマギシの強さが爽快!
2)その強さに本人は自覚ナシ? 二つ名の通り戦闘大好きなヤマギシにドン引きしつつツッコミを忘れないフェルンとの、あべこべコンビのやりとりが面白い!
3)フェルンとの出会いで、感情を共有する楽しさを知って変わり始めるヤマギシ。孤独だった彼はどう変わる?
主要キャラ紹介
ヤマギシ
とある戦線を一人で支えていたほどの猛者。謂れのない罪に問われたことを不服に思い、国を抜け出して自由気ままに生きることを決意する。感性が一般人とはかなりズレている。

フェルン
ヤマギシが国を脱出する際に偶然助けたハーフエルフの少女。助けてもらったことをきっかけにヤマギシと行動を共にするが、彼女にもなにやら旅をしている目的があるらしく……?

エリーナ
ヤマギシたちに依頼を斡旋した受付嬢だが、その正体は騎士団の副団長で戦闘力も高い。美貌でなんとか隠れているものの、フェルンに性的に興味を持って近づこうとする変態。
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