【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は角川ビーンズ文庫から10月31日に刊行される『不死身の女王は嘘つき魔族の執着から逃げられない ※逃げる気もない』です。みなさんの感想も聞かせてください!
子どもの頃はお姫さまが好きで、物語を読んでは自分もなりたいと憧れていました。ですが大人になるにつれて、高貴な立場ならでは苦労が理解できるようになり、特権階級に生まれるのも楽ではないなと思うようになっていきます。
本作の主人公・アリアナは、父や兄たちの急逝で英雄の血を引く唯一の王位継承者となり、国を救うために女王の座に就いた結果、日々命の危険に晒される羽目に。アリアナを取り巻く状況はあまりにも過酷で、内情がどんどんと明らかになるにつれて、なんでこの国のために尽くさなければならないのかとやるせない気持ちになりました。とりわけ母親の「王族として、国の奴隷になりなさい」という言葉は、彼女を縛りつける強い呪いとなっています。それでも王族としての務めを果たそうと健気に頑張るアリアナがなんとも不憫で、幸せになってほしいと祈りながら読み進めていました。

そんなアリアナの唯一の味方と言えるのが、魔族であるライの存在です。ライは瀕死のアリアナに救いの手を差し伸べ、以後も彼女の命を救い続けます。愛を知らない魔族と、重い責任を抱えた孤独な女王。種族を越えた二人のやり取りは、ときに切なく、ときに笑えて、共依存ともいえる関係性が生まれていて、その歪さにぐっと心を掴まれました。アリアナを追い詰めるライの意地悪で甘い囁きがたまりません。恐ろしい力をもつ異種族との間に生まれた執着愛、とびきり危険で純粋な愛の物語を存分に味わいました。
文: 嵯峨景子
ざっくり言うとこんな作品
1)人間の「愛情」がわからない魔族の少年・ライの行動がことごとくヒロイン・アリアナを助け慈しみ、敵を殲滅する過激な溺愛ムーブになっているのが胸キュンポイント。
2)愛し方を知らないまま、お互いがお互いの唯一の存在になっていく様を見守る新感覚むずきゅんラブストーリー!
3)カクヨム発『その溺愛、過剰です!?』コンテスト書籍化検討作品選出作! 人族と魔族の種族を超えた溺愛模様を楽しめる。
主要キャラ紹介

左)アリアナ・フェンイザード
フェンイザード国の若き女王で、魔族から国を救った英雄の血を引く唯一の存在。戴冠後からたびたび暗殺未遂に遭うがそのたびに生還し、「不死身の女王」と呼ばれている。
右)ライ
人族の脅威として忌み嫌われている魔族の少年。人間だった前世の記憶があり、魔族としては異端な存在。瀕死のアリアナと契約し、彼女の命の余数を増やしている。
フォルス・ラペンテッタ
アリアナ専属の護衛騎士。平民出身だが高い実力を認められ、女王専属という異例の抜擢を受けている。五十年前に魔王を討伐した勇者の再来だと期待されているが、その正体は……?
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