カクヨムコンテストは、Web小説サイト「カクヨム」で開催される、国内最大級のオールジャンル小説コンテスト! メクリメクルでは、その大賞受賞作7作品を発売前にひと足早く「発売前に先取り読書レビュー」します。気になる作品は、カクヨムで今すぐ読むことも可能。さらに、カクヨム上で作品を「フォロー」しておけば、書籍化の際にお知らせ通知が届きますよ。
【ライト文芸部門大賞】
『異能の姫は後宮の妖を祓う ~平安陰陽奇譚~』
(著者:藤夜)
陰陽師が活躍する小説が大好きです。陰陽師とは、陰陽道という学問や技術を司った官職のこと。彼らは天文観測、気象観測、暦の作成、時刻の測定、方位や時間の吉凶に関する占い、まじない、祈祷など多岐にわたる業務を担っていました。わかりやすく言うと、特殊な能力を駆使して働く「エリート国家公務員」というわけです。
そんな陰陽師が主役となり「都や内裏にはびこる悪を退治する!」というのが、平安小説のひとつの型として存在するわけですが、その職業の特殊性からファンタジーやミステリといったジャンルとの親和性が高く、胸踊る作品が多いのが特徴です。
本作もまさに陰陽師が主人公の平安ファンタジーです。しかも、妖が見える異能の持ち主である楓子(かえこ)が男装して、陰陽師見習いとして暗躍するゲキアツな物語!
楓子は帝に嫁いだ妹(女御)が呪いのせいで病に倒れたと知り、彼女を救いたい一心で、すぐさま行動を起こします。髪を切り、男装して陰陽師・賀茂利憲(かもの・としのり)の弟子になるのです。その行動力たるや、惚れ惚れするほどかっこいい! 男に媚びず、自ら運命を切り拓いていく雄姿は令和を生きる私たちにも勇気を与えてくれます。
彼女が師匠である利憲のもと、陰陽師としての才能をメキメキ開花させていく様はまさに爽快! 陰陽生・楓(かえで)として、後宮で起こる怪異の謎に迫り、解き明かしていくのです。
なかでも印象的だったのは、男装した楓が女御の身代わりとして女装することになるくだり。女性→男装→女装というユニークな展開に、「女性ということがバレないかしら」とハラハラドキドキしながら読みました。
楓子をめぐる「三角関係」も心躍るポイントです。ひとりは楓子の師匠であり、超絶クールな陰陽頭(おんみょうのかみ)の利憲です。最初は厳しかった彼が、楓子の才能や純粋さに触れるうちに、彼女を特別な存在として意識していく様子はたまりません。
もうひとりは、帝の側近という超エリートであり、美系の公達、斉彬(なりあきら)です。彼は女たらしの遊び人ですが、楓子の魅力にどハマリし、だんだん本気になっていく。ちなみに、彼は女御の身代わりとなって女装した楓子に惚れたのですが、「人が恋に落ちる瞬間」の描写が秀逸だったので、ぜひその部分を堪能してほしいです。
クールな師匠と内裏の人気者。ふたりのイケメンに想われつつも鈍感な楓子にヤキモキしたり、「自分だったらどちらを選ぶだろう?」と妄想したりと、最後までドキドキが止まらなかった! 陰陽師が活躍する重厚なファンタジー作品でありながら、甘酸っぱい恋愛小説としても満足度の高い本作。1冊で2度おいしい読書体験となりました。
文:高倉優子
カクヨムコンテスト10とは
賞金総額1000万円&商業化作品数日本No.1! 記念すべき第10回、過去最多の10部門KADOKAWA主催の国内最大の小説コンテスト。
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2025/10/30