【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はメディアワークス文庫から10月24日に刊行される『歌詠み姫と晴明の鬼弟子 心をほどく和歌、呪いを断つ剣』です。みなさんの感想も聞かせてください!
好きな音楽を聴くと気分が上がりますよね。悲しいとき、辛いとき、歌はそっと心を慰めてくれます。平安時代の貴族が和歌を好んで詠んだのも、きっと同じ理由だったのではないでしょうか。
そう考えると、ヒロインの沙良は、現代で言えば人気歌手のような存在かもしれません。私には和歌の教養がないので想像するしかありませんが、そう思うと、遠い時代の人々の気持ちが少しわかったような気がします。
笛若や紀の君が、こぞって和歌に打ち込むのも、それが自己表現であり、人間の根源的な欲求だからでしょう。しかし、乱暴者で粗野なイメージのある鬼の暁が、和歌を詠もうとする姿は、とても可愛いんですよ。沙良の助けを借りて、拙いながらも自分の気持ちを和歌にしようとする場面は、やんちゃな不良生徒が優等生の委員長に勉強を教わっているような、微笑ましさがあります。
鬼であっても、季節や自然を愛でる心を持っている。
かと思えば、都を守る検非違使のような立場の人でさえ、人を呪ったりする。
その人の生き方を決めるのは、生まれの貴賤ではなく、結局は"心のあり様"なのでしょう。
和歌は、心の情景を映す鏡。
そんな作品に込められたメッセージが、言葉を扱う仕事をしている自分の胸にも深く突き刺さります。果たして普段の私は、きちんとした言葉を使えているだろうか、メールやSNSでの呟きも、いい加減な気持ちで書いていないだろうか。
仕事でも、メールでも、SNSでも。
どんな場面でも、美しい言葉づかいを心がけようと、改めて思いました。
文: あいさきゆうじ
ざっくり言うとこんな作品
1)平安時代を舞台に、陰陽術と和歌の力がほとばしる幻想的な平安ファンタジー。
2)和歌の女神の加護をうける姫君・沙良と鬼・暁の和歌を通じた交流が雅で、当時の貴族文化に胸をときめかせる。
3)同著者の人気シリーズ『からくさ図書館来客簿』の小野篁、『おとなりの晴明さん』の安倍晴明が登場。(勿論、この作品から読み始めてもOK。別シリーズも読むと、より深く楽しめますよ)
主要キャラ紹介

左)沙良(さら)
小野篁の子孫で、歌詠みの姫と呼ばれている。和歌の神の加護を受けており、和歌を読むことで霊験を与えることができる。
右)暁(あかつき)
安倍晴明の弟子で、銀髪赤目の鬼。鬼でありながら人を殺せない優しい心を持っている。師から沙良の護衛を命じられる。
イラスト/ペキォ
- 読書感想文レビュー
- あいさきゆうじ
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歌詠み姫と晴明の鬼弟子 心をほどく和歌、呪いを断つ剣時は平安。和歌を詠み、人の悩みを解決し癒やす力を持つ貴族の姫君・沙良に、怪しい気配が忍び寄る。沙良を守るためにと送り込まれたのは、陰陽師・安倍晴明の弟子、暁と名乗る鬼の青年だった!?
笛の名手とお調子者の若君、秘伝の香袋を作る姫君など、貴族たちを助けるうちに沙良と暁の絆はしだいに深まっていく。しかし人々に悪しき影響を与える鬼・鬼童丸が沙良の力を狙っていて――。
心優しい姫君と鬼の青年が京の事件とお悩みを解決する、平安ファンタジー!
◇◇主な登場人物◇◇
・沙良(さら)
貴族・小野家の姫君。和歌の女神の加護を受け、歌を詠むことで人を癒やす力を持つ。
・暁(あかつき)
大江山の鬼だが、人を殺めることができずに追い払われた。晴明に出会い、助けられる。
・安倍晴明(あべのせいめい)
京に名を馳せる陰陽師で暁の師匠。式神を操り、沙良と暁に助力してくれる頼もしい味方。
発売日: 2025/10/24メディアワークス文庫