【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMFブックスから10月24日に刊行された『さよなら、英雄になった旦那様 ~ただ祈るだけの役立たずな妻のはずでしたが……~1』です。みなさんの感想も聞かせてください!
「無私の祝福」。自分のことよりも他人のために祈ることを、作中ではそう言い表します。主人公のフローラは常に人のことを思い、そして祈れる人でした。
祈りとは目に見えないもの。同じく見えない心を強く押し出す行動、気持ちなんだと思わされました。それは決して大仰なものではなく、例えば私たちが普段行っている「いただきます」もまた同じでしょう。この小さな祈りは、作ってくれた人だけではなく、流通に関わる方、農家の方など……直接伝える機会はあまりない方々にも向けられるものです。
それでも、大勢の人が行う小さな祈りが積み重なることは、大きな意味を持つはずです。今日もどこかで「いただきます」を言う人がいる。その大きな共通概念が出来上がることで、仕事に携わる人の力になってくれているのだと信じたいです。

フローラだけではなく、本作では危地に赴くフローラを案じる子どもたちの声や、客に喜んでほしい行商人の「無私の祝福」が積み重なり、やがて大きな力となっていきます。英雄でも聖女でもない、いわゆる名もなき人々の声や祈りは、小さくまた目に見えることもありません。それでもその一つ一つは、祈りが加護を成す本作だけでなく、現実世界でもまた多くの人の力の源となってくれるはずです。
表題には「祈るだけしか」とあります。ですが、人のために祈ることがどれだけ尊いものか、決して忘れずにいたいもの。もちろん、人生において自分のことで必死になる期間だってあるはず。それでも、少しでも余裕があれば、フローラたちのように人を思って「無私の祝福」を行うことを考えたいものです。ということで、早速、お米に関わるすべての人に祈りを込めて――いただきます!
文:波樹葉音
ざっくり言うとこんな作品
1)離縁を言い渡されたフローラ。不死魔獣(アンデット)の討伐に随伴する中でも、祈りと祝福を胸に大勢の仲間たちと居場所を見出していく。
2)時には人生の先達が、時には小さな子どもが、数多の民の祈りが縒り合わさって小さな奇跡となり、やがては世界を救う力となっていく物語。
3)けがで退役した元騎士団員、伝説の鍛冶屋、離縁した聖騎士。多彩な心理描写が織りなすファンタジー群像劇から目が離せない!
主要キャラ紹介

▼フローラ
不死魔獣(アンデット)の征伐に向かった夫のエリオットの無事を、ひたすら祈り続けていた主人公。離縁後は裏方仕事をこなしつつ、ギルバートたちの無事を願い、祈り続けている。

▼ギルバート
利き手にけがを負ってしまい、退役した元騎士団員。過去の因縁から、再び戦場へと舞い戻る。フローラのことを大切に思い、出される食事をいつも楽しみにしている。

▼エリオット
聖剣を授かったことで、一気に英雄へと上り詰めた聖騎士。聖女と呼ばれるエミリーとの婚姻が進んでいる。どうやら、フローラを金遣いが粗く、品行を乱していると思っているらしく……。

▼ドルフ&バーバラ
招かれた者しか入れない「無私の祝福の村」に住む伝説の鍛冶屋と魔法使いの夫婦。祈りや祝福の大切さを説き、傷ついたフローラの心を癒やす。ギルバートの戦斧もドルフの手製のもの。
1、2巻が2ヶ月連続刊行!
そして本作は、10月24日発売の第1巻に続き、第2巻が11月25日に発売決定!

さよなら、英雄になった旦那様 ~ただ祈るだけの役立たずな妻のはずでしたが……~2
著者:遠雷/イラスト:とき間
定価:1,540円(本体1,400円+税)
発売日:2025年11月25日
2ヶ月連続で物語が紡がれ、フローラたちの旅の終着までが描かれます。
さらに――1巻と2巻のカバーイラストが繋がる特別仕様。

物語を彩るキャラクターたちが勢ぞろいし、二冊並べると世界の広がりをさらに感じられるイラストになっています!
別れから始まり各地を巡った物語は、ふたたび王都の地へ――果たして、祈りが導く“結末”とは。
フローラたちの旅の行方をどうぞお楽しみに!
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さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずな妻のはずでしたが・・・・・・~ 1不死魔獣との苛烈な戦場で、聖剣を手にし、聖騎士として覚醒したエリオット。王国の英雄となって帰還した彼が妻フローラに突きつけたのは――離縁状だった。
「戦場でそばに寄り添い、支え続けてくれた聖女を愛してしまった」
そう告げる夫の言葉に、フローラはただ静かに離縁を受け入れる。安全な王都でただ祈ることしかできなかった自分には、彼の隣に立つ資格などなかったのかもしれないと思って。そうして彼女は王都を去ったのだった。
だが、その日を境にエリオットの聖剣は陰りを見せ始めて――。
一方、すべてを失ったフローラは、旅の中で一風変わった人々と出会い、自分の居場所を見つけ始める。やがて彼女の祈りは、女神の加護をいただく祝福となり、仲間を護る奇跡となってゆく。発売日: 2025/10/24MFブックス
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- 著者
- 遠雷
MFブックス
2025/10/24