【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから10月24日に刊行する『迷い猫に懐かれて、いつの間にか飼い主になっていた。』です。みなさんの感想も聞かせてください!
他者との付き合い方は、本当に人それぞれです。ワイワイ騒ぐのが好きでたくさん友人を作る人も、一人の方が気楽だという人もいます。人の数だけ心地よい距離感と関係性があるからこそ、しっくりくる相手を見つけられるのはとても幸せなことではないでしょうか。
作品を読み始めた当初は積極的に人付き合いをしない理玖よりも、ことあるごとに様々な表情を見せてくれる珠宇に対して、興味を惹かれました。「もっと彼女のことを知りたい!」とワクワクするほどに。けれど私の考えがそのまま理玖の気持ちでもあるのではないか、と気づいてからは、楽しさが二倍になりました。他者に興味を持ち、一緒に出かけるなど、らしくないことをする自分に驚きながらも、それを楽しんでいる彼からは、新しい喜びを知った嬉しさが伝わってきました。

理玖と珠宇のやりとりを見ていると、気が合う友人が増えたときの浮き立つような気持ちをはっきりと思い出せました。人間関係を築くときには、確かに煩わしさも出てきます。しかし私自身の交友関係を振り返れば、新しい人に出会って関わり合うことによって、知らなかった自分を発見できるという醍醐味があるんだよなあと思います。
理玖と珠宇には一人の時間が必要という共通点がありますが、これは人によっては理解されづらい感覚かもしれません。そして彼らと同じではないにせよ、何らかのもどかしさを抱えている人はたくさんいることでしょう。同じ感覚を共有できる相手がいることが羨ましく思えますが、それもすべてはほんの小さな一歩を踏み出した結果。私もその時その時の出会いを大事にしていこうと思いました。
文・安芸沙織理
ざっくり言うとこんな作品
1)同じように一人の時間が大切でも、他者との関わり方は違う理玖と珠宇。似ているからこそ理解し合える二人の関係性に惹きつけられる!
2)自由奔放かと思えば、空気を読んで行動することもできる珠宇。掴みどころのない彼女の、次々現れる可愛らしい一面にどんどんハマる!
3)明確な恋愛感情はまだ育っていないけれど、お互いの隣が心地良いと感じる二人の、無自覚なイチャつきぶりがたまらない!
主要キャラ紹介

▼温泉川理玖
雲雀高校の2年生。捨て猫を見つめる珠宇を偶然見かけ、知り合う。人嫌いというわけではないが、一人でいるのが好きで、その時々にハマっている趣味に没頭するタイプ。

▼速水珠宇
慧嶺高校の2年生。理玖に対しては掴みどころのない言動をし、気の抜けた表情も見せるが、他の人の前では人当たりのいい完璧美少女を演じている。どこか猫っぽい雰囲気を持つ。
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関連書籍
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迷い猫に懐かれて、いつの間にか飼い主になっていた。「……あの子には、拾ってくれる人がちゃんといたんだね」
高校二年生の温泉川理玖と、他校の有名な美少女・速水珠宇。
縁もゆかりもなかった二人は、一匹の捨て猫を通じて雨の公園で出会うことに。
空の段ボールの前、ずぶ濡れでしゃがむ彼女の姿は、なんだか二匹目の捨て猫のようで──
見かねて珠宇にシャワーを貸した理玖。普段は猫を被っている彼女は、理玖にだけ懐いたのか、理玖の自室に居座ったり、自分の物を置いていったり。
巻き込むことを恐れる理玖と、頼ることを恐れる珠宇。二人は二人だけの関係を探り始める。
これは一人でも生きていける系男女が、それでも一緒にいる理由を探す日常小説。発売日: 2025/10/24MF文庫J