2025年9月30日に刊行されるやSNSを中心に話題を集めている『めめんともりと奇妙なゲーム ―【めめ村】緊急招集! 変な館に召喚された! 犯人はこの中にいる!?―』は、人気ゆっくり実況者「めめんともり」を題材に描かれた謎解きファンタジー。この記事では、発売から3週間で早くも2回重版が決定し、続刊も期待されている本作について、原作・監修を務めためめんともりさんと執筆を担当した田口仙年堂先生にインタビュー。作り手視点での作品の魅力や、創作の裏側をたっぷり語ってもらった。
どうやって小説になっていくのか、何も知らないところからスタートしたノベライズ企画

――本作はゲーム配信者であるめめんともりさんの活動を元にした小説となりますが、めめんともりさんは、普段小説を読まれたりしますか。
めめんともり:学生時代から、時間ができたら小説を読むことはあったのですが、基本的には純文学を手に取っていたので、実はいわゆるライトノベルはほとんど読んできていないですね。ただ、アニメを観ている中で知らず知らずのうちにライトノベル原作のものに出会っていたかもしれませんが、文章という形で触れたのは本作が初めてですね。
――ということは、今回ノベライズのオファーが来た際は、本当に勝手が何も分からない状態からのスタートだったのですね。
めめんともり:本当にその通りです(笑)。
――一方で田口先生はもともとめめんともりさんのことはご存知だったのでしょうか。
田口仙年堂(以下、“田口”):僕はさまざまな配信者さんのゲーム実況を観ているので、オファーをいただいた時点で既にめめんともりさんのことは知っていました。『Among Us』をはじめ、めめんともりさんがプレイしている人狼ゲームの魅力って、結果が毎回変わることにあると思うんですよ。その攻防の駆け引きが魅力的で、動画を何本か観ていましたね。
めめんともり:そもそも人は、普段の生活であまり嘘を吐くことってないと思うんです。でも、人狼ゲームとなれば役職に応じて嘘を吐きつつ、固定メンバーであっても異なる過程で楽しむことができます。その飽きなさが大きな魅力なんですよね。特に『Among Us』は人狼ゲームにアクションゲームの要素が採り入れられていて、盤面上だけでは解決できない物事が登場することが面白くて。その二点に魅了されながら、実況動画を作り続けてきました。
――実況動画をご覧になっていたとはいえ、今回は実況者というご本人がいらっしゃるテーマが題材の作品ですが、田口先生としてはこれまでに執筆されたノベライズとはやはり勝手の違いを感じられましたか?
田口:ゲームのノベライズとは異なり、生きている人をモデルにするわけですからね。下手に成長したり、性格が変化していったりなんて展開を描けないんです。また、ゲームだと「ツンデレ」とか「清楚」といったテンプレートにハマったキャラクターが登場することもありますけど、生身の人間はそういった一単語で言い表せません。その差異をとても感じましたね。ただ、そもそも今年(2025年)の頭にオファーをいただいたときには、めめんともりさんが登場すること以外何も決まっていなかったんですよ。何をやるのかもそうですし、めめ村の面々を出すのかすら決まっていなくて。
めめんともり:でも、自然と人狼ゲーム的なデスゲームに巻き込まれていく展開になることは決まっていきましたよね。ただ、人狼ゲームは嘘を吐き合うゲームなので、実在の人物たちをモデルにするわけですから、何か嫌な後味が残る展開にはならないようお願いしました。
田口:まぁ、めめんともりさんがモデルですから、人狼ゲーム的なデスゲームを柱にすることは当然ですよね(笑)。そしてデスゲームとなれば、誰か対戦相手が必要になるので、めめ村の方々にも登場いただこうと。全然知らない人と対戦するお話でも良かったのですが、勝手知ったる相手の方がコメディとして構成しやすいというのも、理由の一つでした。ただ、人狼ゲームばかりやりすぎると単調になってしまうので、ゲームマスターがさまざまなゲームを繰り出す、という展開にしています。
「ずば抜けて主人公に相応しいキャラクター」小説でもキャラ映えするめめんともり

――そんなアイデアを元にした初稿をご覧になった際、めめんともりさんはどのように感じられましたか?
めめんともり:人狼ゲームをプレイしたことはあっても、読むことは初めてだったので、新鮮な感覚がありましたね。そして、自分が登場することにはむず痒さも感じました(笑)。あと、いつも制作している動画は自分の一人称視点ですけど、三人称視点で描かれるとこう見えるのか! という驚きもありましたね。
――素朴な質問ですが、普段の動画を制作される際には自らの声が入った録画データをもとに文字起こしをされて、ゆっくり音声を作成されていますよね。その際のむず痒さとはまた異なるものだったのでしょうか?
めめんともり:流石に500本程度動画を制作していると、自分の声を聞いてもむず痒く無くなってきていて……。でも、三人称で自分の言葉が描かれると、どうしてもムズムズしてしまいました(笑)。
田口:執筆時にはめめんともりさんの「マイクラ人狼」をよく観ていたんですよ。そこから喋り方やキャラクターを参考にして、執筆していきました。動画を観ていて感じたことの一つに、めめんともりさんのキャラが立っていることがあって。めめ村の方々も書かせていただいてなんですが、めめんともりさんはずば抜けて主人公の立ち位置に相応しいキャラクターだと感じたんです。
めめんともり:どうしても動画のときには、頭が回るキャラクターを演じている節もありますからね(笑)。少しずる賢い展開を自ら作りに行くこともありますし、視聴者が分かりやすいように状況説明を織り交ぜながらしゃべるようにしたり。下手なプレイングばかりをしていたら視聴者の方々に飽きられてしまいますから、その点は意識しながらゲームに参加しています。その点がキャラクター性として受け入れられるとは!
――本作はあるゲームマスター主導のもと、めめんともりさんをはじめとしためめ村の面々がデスゲームに巻き込まれていくお話となっています。この設定についてはどのように詰められたのでしょうか。
田口:先ほども触れましたが、実在の人物に悪役などの設定を振ることは避けたかったんです。そこでオリジナルキャラクターにゲームマスターをさせることにしました。あと、めめんともりさんが題材ですから『Among Us』風のゲームをプレイさせたかったのですが、そのままやってしまうとグロテスクになりかねません。そこで考えたのが、ケーキの身体にすることでした。
めめんともり:そのままやるとカニバリズムのようになってしまいますから、すごいいいアイデアだと思いました。結果として、明日あしたさんのイラストも相まってとても可愛らしい表現になって安心したのを覚えています(笑)。オリジナルキャラクターについても、最初は不安だったんですよ。おそらくこの本を手に取ってくださる方の多くは、動画準拠の掛け合いやめめ村の面々がどう動くのかを楽しみにされているはず。そこにオリジナルキャラクターはいるのだろうか……と。でも、実際に初稿を読んだ際にこういう形なのか! と納得できて。
田口:こちらも安心しました……! 実況動画だと音や画があるので成立していることでも、小説となると難しい場合もあり、そこは逐次調整していたので、その点も問題なかったようで一安心です。
めめんともり:私からはキャラクターの喋り方について修正のお願いを出すくらいでしたよね。本当に内容は面白かったです!
キャラクター同士の掛け合いが楽しい“読むめめんともり動画”。続刊にも期待高まる

――さて、そんな『めめんともりと奇妙なゲーム』は、読者からも非常に好評で第2巻の刊行も期待されています。これから読まれる方もどんどん増えるかと思いますが、お二人が推したいポイントはどこですか?
めめんともり:発売3日で重版がかかったと報告を受けて、読者の皆さんから受け入れてもらえたようで、とてもホッとしています。普段のゲーム実況に近しい要素もいっぱいありますが、中でもキャラクター同士の掛け合いがとても面白い作品になっていると思います。普段、実況動画で掛け合いを楽しみにされている方にはとてもご満足いただける一冊になっているかと! また、ライトノベル読者の方で私のことを知らずに本作を手に取ってくださった方は、ぜひここから人狼ゲーム系の実況動画もご視聴いただきたいですね。
田口:本当にめめんともりさんの人気ぶりにびっくりしています! 本作は“読むめめんともり動画”を目指して執筆していたので、もともとの視聴者の方にも楽しんでいただけているようで、ととても嬉しいです。めめんともりさんやめめ村の方々の掛け合いを通して、楽しい気持ちになってもらえたら幸いです!
取材・執筆●太田祥暉
プロフィール

■めめんともり/原作・監修
「Among Us」などのゲーム実況動画を配信する人気ゆっくり実況者。固定プレイヤーの集まり「めめ村」の村長も務める。2025年10月現在、Youtubeのチャンネル登録者数は33万人を超え、約500本ものゲーム実況動画を投稿している。

■田口 仙年堂(たぐち・せんねんどう)/著者
ライトノベル作家。デビュー作『吉永さん家のガーゴイル』(イラスト 日向悠二/ファミ通文庫)で第5回エンターブレインえんため大賞受賞。ライトノベルのほか、漫画原作やゲームシナリオの執筆も手掛ける。
関連情報
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めめんともりと奇妙なゲーム 【めめ村】緊急招集!変な館に召喚された!犯人はこの中にいる!?いつものようにゲームで遊んでいた直後、突如変な館に召喚されたゆっくり実況者のめめんともり。自身がケーキの身体を持つ謎の生命体となり戸惑う中、どうやら館には同じように召喚されたゲーム仲間の「めめ村」のメンバーたちも集まっていた。
そこで様々な状況下での殺しもアリの「人狼ゲーム」をさせられるハメになっためめんともり、みぞれ、iemon、Latte、茶子、ウパパロン、Sレイマリ、ひなにいの8名。だが、その中にはゲームマスターが扮する「9人目」が紛れ込んでいて、めめんともりはその正体を暴こうとハチャメチャに動き始めた――!?発売日: 2025/09/29ファミ通文庫
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ファミ通文庫
2025/09/30