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真実に辿り着くヒントは書庫の中に眠る! 中華風後宮ミステリー『後宮書堂の転生司書』の主人公は、司書の能力で殺人事件の犯人を見つけ出す安楽椅子探偵!?

2025/10/24

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
 今回は角川文庫から10月24日に刊行される『後宮書堂の転生司書』(著者:朝田小夏、イラスト:雲屋ゆきお)です。みなさんの感想も聞かせてください!



 本探しと謎解きは似ています。というのも、私も実は主人公と同じく司書資格持ち。大学卒業後にすぐライターとなったので実際に図書館で勤務をしたことはないものの、利用者から頼まれた本を探したり、書架の整理をしたりと、司書としての仕事をお手伝いしていた経歴があり、そこで謎解きに似たことをやった記憶があるからです。

 例えば、「江戸幕府の成立について研究をしているので、参考となる書籍を探してほしい」という依頼。単純に図書館の書架システムに「江戸幕府の成立」と打ち込んで検索しても、ヒットするのはタイトルに「江戸幕府の成立」が含まれているごく一部です。
 もっと広く調べるためには、関連がありそうな「徳川家康」であるとか、「大坂夏の陣」あたりまでの単語でも別途本を調べたり、網羅的に調べられている本からピンポイントに「江戸幕府の成立」について言及がないかを漁ったりという工程が必要になります。

 これはさながら謎解きです。

 本書でも、主人公の崔冬梨はひょんなことから殺人事件の犯人を探っていくこととなります。しかし、真実に辿り着くヒントは、すべて書庫の中にあるわけです。いやぁ、司書と探偵は一緒ですね(暴論)! 自分は死体を目にした時点で吐いてしまうと思うので、実際に謎解きは無理だと思いますが……。

 ちなみに、本書の中で書庫の分類をどうするのか、というシーンがありますが、NDC(日本十進分類法)以外ないだろう! と思っていたら、本当にそれをやり始めて驚きました。NDC、とても調べやすいのでおすすめですよ。小説好きであれば、913.6(日本文学)という数字を覚えて図書館に突撃すればいいんですからね……! しかし、中華後宮ものの世界では913.6は使えるのでしょうか。923.6(中国文学)かな……?


文:太田祥暉


ざっくり言うとこんな作品


・ 本と中華ドラマ好き司書が転生して、中華後宮ものの世界へ!? 何も知らない主人公目線で、次々と謎を解き明かしていく!

・要所要所に挟まれる本好きなら常識なあるあるネタが楽しい! さらに、謎を解き明かす伏線の数々にもはっとさせられること間違いなし!

・主人公が織りなす、ラブストーリーに胸キュン確実! 冷酷無慈悲と恐れられる男と出会ったとき、転生にまつわる謎も動き出す……!?



主要キャラ紹介


崔冬梨
 交通事故に遭遇し、中華後宮ものの世界へ転生してしまった司書。本が大好きなために高級の書庫係へ立候補したところ、ある殺人事件に遭遇してしまい……。

李祐
 禁軍の将軍で第二皇子。周囲からは「邪神上将」と呼ばれ、非道な人物として恐れられているのだが……!? そんな彼は、崔冬梨と同じ玉佩を持っていて……?

  • 読書感想文レビュー
  • 太田祥暉
  • 角川文庫 キャラクター文芸

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    図書館司書の瀬名愛は、仕事でもプライベートでも好きな本に囲まれながら、おひとり様生活を満喫している。一人で迎えた26回目の誕生日にほんの少し寂しさを覚えながらも、仕事を終え帰宅しようと歩いていたそのとき、交通事故に巻き込まれ意識を失ってしまう。
    目が覚めた場所は、なんと異国の柩の中だった! どうやら中華風の世界で、流行り病で死んだ冬梨という人物に転生してしまったらしい。自分と容姿がそっくりな冬梨として生き返った愛は、彼女が向かおうとしていた、後宮にいる賢妃のもとに赴くことに。
    愛と同じく大の本好きだった冬梨には書庫の管理の仕事が与えられるが、しかしそのさなか、書庫の中で殺人事件が起こり、冬梨は否応なく巻き込まれてしまう。捜査の中で知り合ったのは第二皇子の李佑。冷酷無慈悲だと怖がられる彼だが、冬梨とは過去に何か関係があったようで……?
    本で得た知識を生かして事件解決を進めながら、書庫係として異世界での新たな生活が始まる!
    朝田小夏 (著者) / 雲屋ゆきお (イラスト)
    発売日: 2025/10/24
    角川文庫 キャラクター文芸
    試し読みする

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