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『崑崙花街のまじない屋』の舞台は花街。不審死を調べ始めた主人公と、対立する一族なのに手を貸すヒーローとの絶妙な関係性を堪能できる小説!

2025/10/24

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
 今回は角川文庫から10月24日に刊行される、翁まひろ先生の『崑崙花街のまじない屋』(イラスト:ペキォ)です。みなさんの感想も聞かせてください!



 おまじないが好きですか? あるいは、やったことはありますか? 私は昔、雑誌に書いてあった「消しゴムに好きな人の名前を書いて、誰にも触られずに使い切れば両思いになれる」というおまじないを必死でやりました。残念ながら恋は叶いませんでしたが、清々しい達成感が得られたことを覚えています。

 イベントの前日に、てるてる坊主をぶら下げて晴天になることを祈るのも一種のおまじないですよね? そう考えると、おまじないは私たちの身近にあり、生活に根付いているものなのかもしれません。

 本作は、ヒロインの雨華が「まじない屋」を開くお話です。舞台は古代中国ですが、おまじないが効果的に使われていること、さらに、おまじないの使い手である雨華や兄弟姉妹(神獣)たちが、すこぶる魅力的に描かれていることからスッと物語に入りこみ、夢中になって読みました。

 雨華は「人を助けたい」という純粋な気持ちで動く人。人を職業や出自で判断することなく、常に公平で高潔です。読みながら「こんなにキレイな心でいられたらいいな」と何度も思いました。一緒に育った兄弟姉妹たちはもちろん、敵対する一族である秀鳴が彼女を支え、事件解決に尽力したくなるというのも納得です。

 反目しあっていた雨華と秀鳴が、互いのことを知るうちに心の距離が近づき、認め合っていく様には心が躍ります。ここぞという時に颯爽と現れる秀鳴のかっこよさったら! 人を見る目の確かさにも感心しました。

 さまざまな神獣が登場しますが、個人的には食いしん坊の鉄心(てつしん)の挙動が愛らしくて大好きです。ぜひ神獣たちの活躍にも注目して読んでほしいです。


文:高倉優子


ざっくり言うとこんな作品


・花街でまじない屋を開いたヒロンの雨華。街を牛耳る雲家に妨害されつつも、妓楼で起こる妓女の不審死について調べ始める。

・世間知らずだけど一生懸命な雨華と、彼女と対立する一族でありながらも事件解決に手を貸してくれる秀鳴との関係性が絶妙。

・サブキャラクターが魅力的。かっこいい、かわいい、美しい……。そんな中国神話の神獣たちが多数登場し、物語を盛り上げる。



主要キャラ紹介


雨華(うか)
 3歳頃に崑崙山で神龍に拾われ、育てられた人間の娘。人を助けるために山を下りて「まじない屋」を開く。一生懸命な性格で誰に対しても公平。兄弟姉妹に愛されている。

雲秀鳴(うん・しゅうめい)
 崑崙街で呪術を扱う者たちを統括する方士、雲家の一員。兄である雲崔と跡目争いをしている。呪術にも長け、眉目秀麗。雨華がピンチの時にはいつでも駆けつけてくれる。

神獣たち
 兄・九尾狐の黄狐(こうこ)、姉・白蛇の白娘子(はくじょうし)、弟・饕餮(とうてつ)の鉄心(てつしん)、長い耳を持つ精怪の耳鼠(じそ)たちは、雨華の従者的存在。

  • 読書感想文レビュー
  • 角川文庫 キャラクター文芸
  • 高倉優子

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    幼い頃崑崙山に捨てられ神龍を父とし神獣を家族として育った雨華。
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    そうして辿り着いた花街では、落籍が決まった妓女が落下死する事件が起きていた。
    妓女たちの話を聞く雨華の前にまたも雲家、
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    雨華は彼より先の解決を目指し妓楼の調査を行うが――。

    もふもふ神獣×中華呪術×人情話

    花街に渦巻く人々の欲や悲しみが生んだ恐ろしい呪詛の謎を
    世間知らずな「神龍の娘」×クールな最強方士が解き明かす!
    翁 まひろ (著者) / ペキォ (イラスト)
    発売日: 2025/10/24
    角川文庫 キャラクター文芸
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