【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから10月24日に刊行する『プロポーズ』です。みなさんの感想も聞かせてください!
この曲にはどんな意味があるんだろう? この歌詞はどんな風に書かれたんだろう? 楽曲に対する考えや思い入れはひとそれぞれに存在する。
「プロポーズとは薬指にかけられた結婚の契約の呪いなのではないか」そんな少女の思いから始まるこのノベライスは、歌詞のポイントをひろいつつ“鬱”くしく美しい関係を描き出す。
自分を幸せにするという天使のエイルに結婚生活をしてみたいともちかける。人間の全ての幸せを願うという純粋で無垢な天使を壊してみたいと、サアラは結婚という呪いをかけたのだ。幸せな笑顔だけでなく自分が傷つけた姿まで望んでしまう歪んだ独占欲は楽曲の歌詞とリンクする。美しくも醜い感情サアラの心が胸に迫った。

個人的にはエイルの上司こと大天使ミカエルがツボだった。大天使なのに現代テクノロジーについていけない、引退したいとぼやいたり、見放したはずのエイルを助けにきたり、歌い手eLのことが好きだって告白したり、脇役としていい味をだしていた。もしかしたらeLの現場に来ていたりするのかもしれない、そう考えると笑えてくる。
そしてトリックスターとして活躍するアスモ。地獄が退屈だと人間世界で遊ぶ彼女にも見破れない天使の嘘があったなんて、きっと今まででとびっきりの驚きだっただろう。
二人の関係をメインとしつつも話を彩る非人間たちの活躍があり、悲しさや切なさだけではないより豊かな小説らしい世界を感じる一作だった。
文・仲村友巳
ざっくり言うとこんな作品
1)人気ボカロ曲の可能性に挑戦した美しく切ない物語。 新しい発想と解釈により広がっていく楽曲の世界!
2)薬指の指輪に誓う結婚の契約は世界で最も美しい呪い? あなたを壊すためにかわす偽りの結婚生活だったのに……。
3)笑顔を独り占めしたい、ただ二人だけでいたい……愛するがゆえにみにくく我がままな想いが導く二人の結末とは?
主要キャラ紹介

▼サアラ
白い髪に少年のような姿と希望に欠けた瞳をもつ歌い手eLのファン。幸せと愛情の象徴である左手の薬指を嫌っている。美しいエイルを壊そうと結婚という呪いを持ちかけるが……?

▼エイル
歌い手eLとして活躍する天使。自分のファンであるサアラが悪魔に狙われていることに気づき近づくものの、彼女を救うためには天使のルールを破る必要があった……!

▼アスモ
地雷系ファッションに身を包みSNSを駆使する悪魔。サアラの魂を地獄から救おうとするエイルに「今のあなたのままでは救えない」と余裕の笑みをみせる。

▼ミカエル
国家公務員に身をやつした大天使。歌い手eLの働きぶりに感心しつつも、サアラにだけ心を傾けるエイルに「天使の本当の敵は人間なのだ」と厳しく忠告する。
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関連書籍
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プロポーズエイルは人間社会に溶け込み、人々を幸せに導く天使。
ある日、不幸の道を歩みつつあった儚げな少女・サアラと出会う。
「私と結婚してくれますか?」
唐突なお願い(プロポーズ)。
心が不安定で、支えがないと壊れてしまいそうな危うさを持つサアラを助けるべく、エイルは偽りの結婚生活を受け入れる。ネガティブだったサアラは変わり、楽しげで可愛らしく笑い毎日魅力が増していく。誰にも渡したくないと思うほど、エイルはサアラを愛し始める。
しかし、天使の役割を超えた接触が、やがて二人の関係を歪め──そして、サアラの奥底に眠る"本当の欲望"を目撃する。
これは人間を愛するあまり、堕ちていく天使の物語。発売日: 2025/10/24MF文庫J