TS転生モノ入門にオススメ!?　硬派な物語と爽快感ある無双展開がダブルで楽しめる、乙女ゲー舞台の王道転生ファンタジー！

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はドラゴンノベルスから10月3日に刊行された『乙女ゲー戦記 乙女ゲームを1ミリも知らない男がTS転生した結果』です。みなさんの感想も聞かせてください！

　TSというジャンルは好きな人にはたまらないものがあるが、一方で受け止め方がよくわからない人もいるのではないだろうか。自らが男性から女性に変わったことに戸惑う主人公に対して感情移入するべきなのか、それとも愛らしいヒロインとして愛でるべきなのか？

　しかし、そんな悩みは本作の主人公エレウノーラに対しては無用！　だって彼女は190cm以上の長身に、鍛え抜かれた鋼の筋肉の持ち主。この恵まれた肉体から繰り出される暴力で略奪者たちを次々に返り討ちする姿を見れば、男女の差なんて些細なこと。彼女を一言で評するならば〝豪傑〟である。
　この豪傑が貴族の倣いとして王都の学園に通うことになるのだが、この世界の原作である乙女ゲーのような甘ったるい恋愛イベントは皆無！　学園で起きるトラブルを次々解決して周囲からリスペクトを集めていく中で、自身が結婚すれば後継者問題が面倒になるという理由から、色恋沙汰の話には決して持って行かず、男女問わずに周囲とカラッと明るい関係性を築いていくのが読んでいて気持ちいい。性別問わず好きになれる人柄というのがあるとすれば、正に彼女のことを指すのだろう。決して聖人君子というわけでもなく、ほどよく打算的で人間味のある部分もあるからこそ、人としての魅力に説得力がある。

　そして、彼女とは別の魅力を持つ人物が悪役令嬢のヴィットーリア。実は彼女も転生者であり、原作に存在しなかったエレウノーラの行動に便乗して、自身の破滅を回避する計画を立てている。彼女の存在を通じて、「特別な力はないけれど原作知識を活かして上手く立ち回る」という一般的な乙女ゲー転生要素もしっかり摂取できるのが嬉しい。作品の主人公は間違いなくエレウノーラなのだが、物語のキーパーソンとしてヴィットーリアの存在があるおかげでストーリーに“続きが気になる”軸が生まれているのが見事な構成だと思う。
　というわけで、乙女ゲー世界が舞台で女性主人公でありながら、とんでもなく男前なエレウノーラの快女児っぷりが楽しめる異色の一作。TSはちょっと苦手という人も楽しめること請け合いである。

文：柿崎憲

ざっくり言うとこんな作品

１）乙女ゲー世界に原作知識ゼロの男が女騎士として転生！　男勝りを通り越して益荒男レベルの肉体と精神で無自覚なままに原作イベントを次々粉砕！　原作の物語の流れを大きく変えていく！

２）男女の壁などものともしないエレウノーラのマッシブな肉体美！　圧倒的フィジカルから繰り出される暴力で敵対する騎士や賊を薙ぎ倒すアクションシーンもたっぷり！

３）転生者は一人だけじゃない！　原作知識持ちのヴィットーリアは、エレウノーラに力を貸して自身の破滅を避けようとするが、このサポートが二人の運命を想像もできない展開に導く！

主要キャラ紹介

エレウノーラ
日本人男性の記憶を持つ女騎士。弟が成人するまでの代理として領地を治めていたが、貴族の義務として学園に通うことに。過酷な環境で育ったため人間を斬り殺すことに躊躇がない。

ヴィットーリア
大公家の令嬢。前世でこの世界の原作ゲームをプレイしており、自身の破滅の運命を変えようと奮闘中。エレウノーラのことは自分の死後にDLCで追加されたキャラだと勘違いしている。

ロベルタ
エレウノーラの王都での学園生活をサポートするためについてきた侍女。主人と異なり常識人。街で偶然出会った男性と恋に落ちるが、実は彼は原作ゲームの攻略対象の一人で……。

グスターヴォ
エレウノーラの同級生。女性の身で騎士科に入学したエレウノーラが気に食わず、突っかかるも返り討ちに。その後幾度も喧嘩をすることで奇妙な友情が生まれる。恋愛フラグは立たない。