【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は電撃文庫・10月10日刊行の『フロスト・クラック ~連続狙撃犯人の推理~』です。みなさんの感想も聞かせてください!
テンポの良い推理ものと思って読み進めていたものの、どうにも違和感が拭えない。電話口の男は何故こんなにも謎に包まれているのか? 提示された情報に大きな欠落があったり、更なる事件が起こるのでは? そんな想像を働かせていたところ、話の転がっていった先が――本当は言いたいんですが、ぜひ自分の目で確かめてほしいです! 本当の本当にびっくりしました。あまりにも予想外な展開で、それはもう胸を躍らせて一気に読み終えました。双方に実行力があり、頭脳に長けていることを示したうえでの“あの展開”は流石に熱かったです! 決着から過程を振り返るような形であっても、手に汗握りました。
そして一旦の結末を迎える第四部、その印象が反転する第五部も見事なものでした。最後の一文、挿絵がこれ以上なくバチッと決まっていて読後感もすこぶる良いです。アレをどう捉えるかは、人によって大分異なりそうですが……。自分は伏線が綺麗に収まった爽快さと、ぞくりとした感じがない交ぜになって、大興奮でした! キャラクターの全容を知れるのが最終盤なので、通しで読み直すのも楽しいですね。
途中にはユーモラスなやり取りもあり、会話だけでここまで緩急がつけられるのかと驚きを禁じ得ない作品でした。喋りに終始している分、小難しい話をしているわりには読みやすくもあり、非常に優れた構成に引き込まれてしまいました。そんな中で、銃器周りの解説が異様に濃密なところが時雨沢先生らしくて良かったです。これだよ、これ!
文:中谷公彦
ざっくり言うとこんな作品
1)デビュー25周年を迎えた時雨沢恵一先生&黒星紅白先生コンビによる完全書き下ろし・趣味全開の最新作!
2)ほとんど全てが電話越しの会話だけで構成されているのに、圧倒的な臨場感を体験できる。
3)現場に赴かない「安楽椅子探偵もの」として精巧に練り込まれた第一部。まさかの展開で一気に読ませる第二部! そして気になる真相は――?
- 読書感想文レビュー
- バトル
- 現代
- サスペンス
- 中谷公彦
- 推理