【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファミ通文庫・9月30日刊行の『転生して霊媒師になった俺、やたらと退魔師や妖にビビられる』です。みなさんの感想も聞かせてください!
幽霊の恐ろしさとはコミュニケーションが不可能な点にある。何を言っているかわからない、何を言っても通じない。それはつまり「何をされるかわからない」という、根源的な恐怖に直結する。
裏を返せば、話がわかる相手ならばその恐怖もぐっと和らぐ。恐ろしい霊魂たちを恐れることなく、安心して読むことができたのは、霊との対話を可能とするサトルのおかげだろう。それどころか、個性豊かな霊魂たちが可愛く見えてくるくらいだ。獰猛な四足獣の妖鬼であっても、対話し、存分に撫でてわしゃわしゃしてやれば、「くぅ~ん」と愛らしく鳴くモフ毛玉だ。私もモフりたい。どんなに邪悪な霊魂であったとしても、サトルは生前の人と同じように扱い、根気よく対話を続ける。そんななんとも優しい物語に、私の心も癒やされる。
そして作品の根底には、徹底して対話の大切さがある。言いたいことがあるはずなのに、言葉が伝わらない。相手にまるで通じない。そんな経験をしたことのある人は多いのではないだろうか? 私にも思い当たる節がある。いわば、言葉が通じない霊魂たちは、私たち自身の姿を映す鏡なのかもしれない。そこに根気強く耳を傾け、的確にアドバイスしてくれる存在が現れるのだ。どれほどの心の救いになるだろう。作中で救われた子を見殺しにした母、生誕を祝福されなかった赤子のエピソードは、その象徴のように感じられた。
本作は人と魔、あるいは神との対話を描きながら、人と人との関係性をも読み取れる優しい物語であるように感じた。読み終えた後には自然と、身近な人ともっと語り合い、親交を深めたいという思いが芽生えた。
文:明日香 譲(あすか ゆずる)

ざっくり言うとこんな作品
1)ただ転生してしまっただけの、何も持たない主人公。「一度死んだんだから霊も怖くない」というポジティブさだけで特別な存在に!?
2)様々な個性を持つ霊魂たち、その除霊方法はまさかの対話!? さながら霊媒カウンセリングという斬新すぎる手法は驚きの連続!
3)日常の裏で描かれる、人と神の関係性を巡る物語。その衝撃の結末に、心が震える! これは人(サトル)と神(リツ)の愛の物語!

主要キャラ紹介

鞍掛サトル
現代世界から現代世界に転生してきた珍しい境遇の持ち主。一度死んだことから何事をも畏れぬ心を持ち、その姿勢が退魔師や魔に恐れられている。

リツ
世間では零号霊魂として畏れ崇められている神。天気のように性格が変わる多面性の持ち主だが、サトルへの愛は本物。駄菓子が大好き。

御鏡ミクモ
退魔組織「退魔寮」が誇る天才退魔師だが、破天荒な除霊を行うサトルを畏れると共に尊敬している。電子機器にも詳しい新世代。
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