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これは、たった一人で竜を倒し街を救った孤独な大剣使いが、一緒に冒険する友達を作る温かいファンタジー物語である

MFブックス
MFブックス
2025/09/25

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMFブックスから9月25日に刊行された『ぼっちの冒険者は、パーティが組みたい。』です。みなさんの感想も聞かせてください!


 「兄さんは基本的に言葉が足りません」。主人公・ダージュが、作中で妹であるミーシャから言われている言葉です。大きな体に、顔も覆う全身鎧を纏い、他に誰も扱えないような大剣を振り回すなどの見た目的な威圧感もさながら、竜をも倒すツワモノである彼を一番ボッチたらしめているのは、この「言葉が足りない」点だと思うんですよね!
 ……原稿を拝読しながらそう思ったと同時に、「自分も同じことをやらかしてきたなぁ……」という奥底にしまっていた記憶がフラッシュバックし、しばらくのたうち回ったあとにこの文章を書いています。うぼぁー。

『ぼっちの冒険者は、パーティが組みたい。1』pinup

 言葉というのは扱いが本当に難しくて、会話であろうとテキストであろうと、意図しない形で相手に伝わってしまうことが往々にしてあります。読者の皆さんにも、似たような経験が何かしらあるのではないでしょうか。そう、これは最強故に発生する悩みとかではなく、誰にでも起こり得る悩みなのです。見た目がいかつい上に最強なダージュが、我々と同じような悩みを抱えてずっと縮こまっている……そう思うと、あんな大柄な彼がどこか可愛く見えてくるような気がしました。

 そんなダージュが願うことといえば、タイトル通り自分と一緒に戦ってくれる仲間が欲しいだけ。前述の理由でかなり誤解されがちですが、会話や行動をゆっくり解きほぐしていくと、彼の非常に優しい一面が見えてきます。その温かさはいつか伝わるはず。「仲間づくり頑張って!」と、ミーシャと一緒にその姿を応援したくなる一作でした。

文:沙藤克広


ざっくり言うとこんな作品

1)大柄で威圧感のあるダージュが言葉選びに失敗し、行動も怖がられて、結果的にボッチなったことにも思わず納得してしまうような、一風変わった主人公像。

2)意図せず手に入れてしまった伝説の剣。その強大すぎる力を使いたくないが故に、己を鍛え上げ、竜をソロで倒せるまでに至ったダージュの信念の強さがかっこいい!

3)自分の想いを正確に伝えようと努力し、少しずつ周囲の人間との交流を深めていくダージュ。それに応えて地道に、一歩ずつ距離を縮めていく新たな仲間たちとのやり取りが温かい。


主要キャラ紹介

『ぼっちの冒険者は、パーティが組みたい。1』ダージュ

▼ダージュ
固定パーティが組みたいと思っているが、見た目や言動から怖がられて意図せずソロ活動をしているギルド最強の冒険者。なんとか自分を変えようと奮闘するが、努力が明後日の方向になりがち。

『ぼっちの冒険者は、パーティが組みたい。1』リーシェ

▼リーシェ
冒険者ギルドの受付を担当する女性で、ダージュがまっとうに話せる数少ない人物のうちの一人。ダージュに仕事をあっせんしつつ、誤解されがちな彼のフォローも行っている。

『ぼっちの冒険者は、パーティが組みたい。1』フィア

▼フィア
モンスターに襲われ、危ういところをダージュに助けられた新米冒険者。最初は周囲と同じくダージュを恐れていたが、ある一件をきっかけに彼を理解すべく奮闘中。

『ぼっちの冒険者は、パーティが組みたい。1』ミーシャ

▼ミーシャ
ダージュと共に暮らしている彼の妹。魔法学園に通いつつ、兄の生活や仲間づくりをサポートしている。ダージュが遠征などで家を空けているときの生活はズボラになりがち。

  • 読書感想文レビュー
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  • 沙藤克広

関連書籍

  • ぼっちの冒険者は、パーティが組みたい。 1
    ぼっちの冒険者は、パーティが組みたい。 1
    腕は立つし実績も十分だが、引っ込み思案な性格ゆえにいつもソロで活動している冒険者が居た。その名はダージュ。かつてたった一人で巨大な竜を倒し、街を救った凄腕の大剣使いである。
    しかし、彼が英雄として称賛される事はなかった。鉄塊のような大剣を軽々と背負い、武骨な鎧を纏って、兜はほとんど外さない。竜の討伐さえ黙々とこなす姿に人々は恐怖し、竜殺しと呼んだ。
    そんな彼の夢は、冒険者に友達を作って固定パーティを組む事。不器用で口下手だが……本当はもっと色んな人と自然にお喋りをしたいのである!
    結局一人で依頼をこなしてしまうぼっちの冒険者に、本日も新たな依頼が舞い込むのだが――
    いつか叶えるその日まで、心優しき冒険者は人との繋がりを紡いでいく。
    くろぬか (著者) / 輝竜司 (イラスト)
    発売日: 2025/09/25
    MFブックス
    試し読みする

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